更新日: 2023.07.06 その他年金

30%減っても構わない! 「60歳から年金を受給したい」どんな注意点がある?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

30%減っても構わない! 「60歳から年金を受給したい」どんな注意点がある?
収入や貯蓄が十分でない、健康面に不安があり年金を前倒しで受け取っておきたい、などさまざまな理由から「減額されるとしても老齢年金を繰上げ受給したい」と考える人も多いでしょう。しかし、繰上げ受給には年金が減額されること以外にも注意点があることはご存じでしょうか。
 
本記事では、老齢年金の繰上げ受給を選択する際に注意したいことを、分かりやすくまとめました。繰上げ受給を請求する前に、自分に該当しそうなものはないかチェックしてみましょう。
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繰上げ受給で決まった減額率は一生涯そのまま

老齢年金の繰上げ受給を選択すると、年金額が繰上げた期間1月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)、最大24%(同30%)減額されます。一度決まった減額率は、生涯にわたって変わりません。また、付加保険料を納めていた人の場合、付加年金額にも同じ減額率が適用されます。
 
なお、繰下げ受給の場合は老齢基礎年金と老齢厚生年金を別の時期に請求できますが、繰上げ受給を選択するときは両者を同時に請求しなければならず、両方が同じ率減額されることにも注意しましょう。繰上げ受給を選択すると取り消しができないため、事前に十分検討する必要があります。
 

繰上げ受給を選択するとき、減額以外の注意点とは?

繰上げ受給を選択すると、年金額の減額に加えて、年金関連のさまざまな制約を受けます。想定外の不利益を被って後悔しないよう、どのようなルールがあるのかを把握して、自身のケースに当てはめてシミュレーションしてみることをおすすめします。
 
特に注意が必要なのは、次の3点です。
 

●老齢年金以外の年金の受給が制限される
●国民年金の任意加入・保険料の追納ができなくなる
●厚生年金保険の長期加入者・障害者の特例措置が受けられない

 
それぞれ詳しく見てみましょう。
 

老齢年金以外の年金の受給が制限される

繰上げ受給を開始すると、老齢年金以外の年金の受給が次のように制限されます。
 

●65歳まで遺族厚生年金や遺族共済年金を併給できない
●障害状態になっても、原則として障害基礎年金・障害厚生年金を受け取れない
●寡婦年金の受給権がなくなる

 
繰上げ受給選択後は、遺族年金や障害年金を65歳まで併給できません。いずれかを選択して受給することとなります。また、繰上げ受給選択後に障害状態になった場合、原則として障害年金を受け取れません。持病がある場合などには、注意が必要です。
 
寡婦年金の受給権は、繰上げ受給を選択するとなくなります。寡婦年金をすでに受給している場合は、寡婦年金の支給が停止されます。
 

国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなる

国民年金の任意加入とは、老齢基礎年金の受給資格を得たり受給額を満額に近づけたりするために、60歳以降も任意で国民年金保険に加入して保険料を納められる制度です。追納とは、国民年金保険料の免除や猶予を受けた期間がある場合に、さかのぼって保険料を納めることをいいます。
 
老齢年金の繰上げ受給を選択すると、任意加入や保険料の追納ができなくなります。国民年金保険料の納付済期間が少なく年金額が低い場合も、後から保険料を納めて年金額を増やせなくなるため注意しましょう。
 

厚生年金保険の特例措置が受けられなくなる

厚生年金保険には、一定の条件を満たす人が特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給している場合に、通常の報酬比例部分に加えて、定額部分も受け取れる特例措置があります。老齢年金の繰上げ受給を選択すると、対象者であっても特例措置を受けられなくなることに注意が必要です。
 
特例措置の対象となるのは、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)受給者のうち以下に該当する人です。
 

●厚生年金保険の加入期間が44年以上あり、特別支給の老齢厚生年金の定額部分受給開始年齢になる前に被保険者でなくなった
●特別支給の老齢厚生年金の定額部分受給開始年齢になる前に障害の状態になった

      

繰上げ受給をするか迷ったときは年金事務所などに相談しよう

老齢年金の繰上げ受給を選択すると、年金を早く受け取れる代わりに、年金額の減額やほかの年金の受給制限をはじめ、さまざまな制約が課されます。自身の状況で繰上げ受給を選択しても不利益がないか、慎重に検討する必要があるでしょう。
 
ほかの年金や関連する制度との兼ね合いもあるため、自分で判断するのが不安な場合は、年金事務所などの専門機関に、事前に相談することをおすすめします。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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