更新日: 2023.07.28 その他年金

「年金受給前」に58歳で死亡した夫。夫の年金収入を頼りにするつもりだった妻は、生活費をどう工面すればよい?

「年金受給前」に58歳で死亡した夫。夫の年金収入を頼りにするつもりだった妻は、生活費をどう工面すればよい?
年金受給前に夫が亡くなってしまったとき、残された妻は今後の生活費について考えなければなりません。もし、夫の年金収入を頼りに老後の生活を考えていた場合、残された妻はどのように老後を過ごしていけばよいのでしょうか。55歳の専業主婦で子どもが独立しているAさんの事例をもとに考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

夫が亡くなった場合、妻には遺族年金が支給される

夫が亡くなってしまったとき、その夫に生計を維持されていた妻は、一定の要件を満たす場合、遺族年金を受け取ることができます。そのため、生活費の工面のためにまずは遺族年金の受給を視野に入れます。
 
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金とがあります。基本的に夫が自営業者などで国民年金に加入していれば、遺族基礎年金を受給することになるでしょう。対して夫が会社員などで、厚生年金に加入していれば、遺族基礎年金に上乗せして遺族厚生年金を受給することになります。
 
遺族基礎年金は残された子や、子のある配偶者に対して支給されるものです。
 
子が成人して独立しており、夫が厚生年金に加入していたなど遺族厚生年金の受給要件を満たしているAさんは遺族厚生年金を受給することになります。遺族厚生年金の額は、おおむね本人が受け取るべきであった厚生年金の額の4分の3です。
 
Aさんの夫は、将来およそ8万円の老齢厚生年金(老齢基礎年金部分を除く)を受け取る予定でした。この場合およそ6万円の遺族厚生年金がAさんに支給されるということです。年換算では72万円ほどとなるでしょう。
 
なお、Aさんは40歳以上65歳未満ですので、65歳までの間、年間59万6300円の中高齢寡婦加算も支給されます。つまり、65歳までは夫の遺族年金によって、年間で130万円ほどの収入が得られる計算になります。
 

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65歳からは自身の年金も支給される

中高齢寡婦加算は65歳までの支給となります。しかし、65歳からは自身の老齢基礎年金も支給されます。老齢基礎年金は満額の場合、年間で80万円弱となります。
 
そして、遺族厚生年金と65歳以降に受け取る老齢基礎年金は、支給事由が異なる年金として併給が可能とされているため、夫の遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金とを同時に受けることができます。すなわち、老後となる65歳以降は年間で152万円程度の収入が得られるわけです。
 
なお、Aさんに会社員だった時期があり、自身も厚生年金を受け取れるという場合、受給する老齢厚生年金に相当する額については、夫の遺族厚生年金の額が減額されることになります。
 
図表1

図表1

出典:日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 

生活費の不足分は就労で賄う

高齢単身無職世帯における平均支出額は、年間で187万円程度です。65歳までの間は年間130万円ほど、65歳以降は152万円ほどの収入を得ることができるものの、それだけで生活するのは難しいでしょう。Aさんの場合、子どもはすでに独立しているため学費などの工面は必要ありませんが、自身の生活費が問題となります。
 
この場合は、基本的には就労によって、不足する生活費を工面していくことが現実的です。パートやアルバイト、シルバー人材紹介センターなど、現在は働き方の選択肢が豊富にあります。正社員として高齢者を積極的に採用する企業も出てきており、本人次第の部分もありますが、50代や60代から正社員として働きはじめることも不可能ではないでしょう。
 
就労して65歳までは毎月4万円から5万円を、65歳からは毎月3万円弱をパートやアルバイトなどで稼ぐことができれば、老後も平均的な高齢単身無職世帯とほぼ同額の生活費を用意していくことができます。可能であれば正社員で、もしくはパートやアルバイトにてフルタイムで働き、より多く収入を得て、突発的な支出に備えた貯蓄も並行して行えるとなおよいでしょう。
 

夫が亡くなってしまっても、遺族年金と就労によって生活費は工面できる

個別の事情によっても異なりますが、夫が早期に亡くなってしまっても、残された妻は遺族年金と就労によって生活費を工面していくことができます。しかし、状況次第では遺族年金が受け取れないなどと、思うように就労ができないこともあります。
 
夫が亡くなるなど予想外のことが起こり、今後の生活に不安があれば、各自治体の役場に設置されている相談窓口などで早めに相談し、適切な対応をとるようにしてください。
 

出典

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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