年金は60歳でもらったほうが「得」なのでしょうか? 見込み額は「14万円」です
配信日: 2023.09.01
今回は、65歳からの年金受給の見込み額が14万円の人を想定し、60歳で受け取り始めたほうが得か否かを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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受給開始は原則65歳だが前倒しが可能
65歳から生涯にわたって支給される年金は、正しくは老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)といいます。例えば、国民年金(老齢基礎年金)の場合、20歳になると保険料を納める義務が発生し、納付期間や免除期間の合計が10年以上だと受給資格を得ることができます。
年金受給が65歳からというのは、あくまでも原則で繰上げ受給を選択すれば、もっと早い時期から受け取ることも可能です。繰上げ受給を利用すれば、60歳から年金をもらうこともできるため、最大5年も前倒しで支給されます。ただし、本来の年金が5年分増えるわけではありません。
なぜなら、早くもらえる条件として受給できる年金が減額されるルールとなっているからです。「老齢基礎年金・老齢厚生年金 支給繰上げ請求書」を年金事務所などに提出して手続きをすると、その時点で繰上げする期間に応じて減額率が決まり、生涯にわたって減額された年金を受給することになります。
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繰上げ受給を選択した場合の金額は?
60歳からの受給が得なのか知りたい場合は、受け取れる金額を計算する必要があります。繰上げ受給の1ヶ月あたりの減額率は、昭和37年4月2日以降に生まれた人は0.4%、昭和37年4月1日以前に生まれた人は0.5%です。
ここでは1ヶ月の年金受給額が14万円と仮定し、前者に該当する男性が申請したケースについてシミュレーションしてみます。60歳に受給をスタートする場合、65歳から60ヶ月の前倒しになるため、減額率は0.4%の60倍にあたる24%です。つまり、支給される年金は76%まで下がります。つまり、新しい受給額は10万6400円(14万円×76%)です。
厚生労働省が公表している2022年の簡易生命表によると、男性の平均余命は約81歳となっています。仮に、81歳の誕生日前まで生きるとすると受給期間は60歳の開始月からカウントして252ヶ月(21年)となります。「10万6400円×252ヶ月」で求められるトータルの受給額は、2681万2800円です。
65歳から受給する場合と比較! どちらが得なのか?
65歳から受給して81歳の誕生日前まで生きた場合、65歳の開始月から数えた受給期間は192ヶ月(16年)です。トータルの年金受給額は2688万円(14万円×192ヶ月)となります。これは、60歳で受給を始めた場合の2681万2800円を上回る金額です。
つまり、男性が平均余命程度まで生きるなら、原則どおりに受給したほうが有利になります。女性の場合は、平均余命が約87歳となるため、上回る金額は男性よりもさらに大きいです。そのため、平均余命を寿命とするなら、どちらの性別でも65歳からの受給が得といえます。
なお、80歳10ヶ月まで生きる場合、60歳からの受給期間は250ヶ月で、65歳からの受給期間は190ヶ月です。60歳からの受給額10万6400円と65歳からの受給額14万円に、それぞれの受給期間をかけると両者ともに2660万円になります。トータルの受給額が一致するため、80歳10ヶ月という寿命を損益分岐点と見なすことができるでしょう。
リスクを踏まえて最適な受給の仕方を選択しよう!
年金を早く受け取りたい人にとって、繰上げ受給はとても魅力的な制度です。しかし、もらえる期間が長くなっても、必ずしも金額面で得をするとは限りません。
長生きしそうな人は損をするリスクもあるため、やみくもに制度を利用することは避けたほうがいいでしょう。平均余命や健康状態などをもとに自身の寿命を予想し、どのような受給方法が最適なのかを十分に検討してから選択しましょう。
出典
日本年金機構 老齢年金
日本年金機構 繰上げ受給
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー