更新日: 2023.09.04 その他年金
死亡した夫の「遺族年金」が出ない!? 保険料を支払っていても「妻」が受け取れない場合について解説
本記事では、夫が死亡したときに遺族年金が出ないケースについて解説します。配偶者死亡後の生活設計を考えるときに役立ててください。
執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)
社会保険労務士・FP2級
遺族厚生年金が支給されるケース
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。配偶者に遺族基礎年金が支給されるのは、要件を満たす子ども(※)がいる場合に限られます。
※18歳になった年度の3月31日までの子ども、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある子どものことです。
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた(または加入中の)人が亡くなったときに支給(保険料納付要件あり)されます。子どもが上記要件を満たさなくなった後(または子どもがいない場合)厚生年金に加入していた配偶者が死亡した場合、遺族基礎年金は出ませんが遺族厚生年金は支給されます。
なお、老齢基礎年金受給開始前に夫が亡くなった場合、第1号被保険者として国民年金を納付した月数に応じて「死亡一時金」が支給(納付月数36月以上の場合)されます。
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対象になる子がいない場合は遺族基礎年金が出ない
夫が自営業などで国民年金に加入していた場合、夫が20歳から60歳までの40年間保険料を納付していても、対象となる子どもがいなければ、その妻には遺族年金は出ません。
老後に支給されるのは遺族厚生年金だけですが、遺族厚生年金は厚生年金に加入していた(または加入中の)人が亡くなったときに遺族に支払われるものだからです。
夫婦で保険料を納めていたので、夫の死亡後は遺族年金が出ると思い込み安心していると、遺族年金が出なくて老後生活が厳しくなるケースもあります。また、夫の厚生年金加入期間が短い場合、遺族年金は支給されても年金額がごくわずか、ということもあります。
遺族年金が支給されない主なケース
老齢夫婦の配偶者が死亡した場合、配偶者が厚生年金に加入していても遺族年金が支給されない場合があります。支給されない主なケースを紹介します。
夫の保険料納付が300月未満
現役引退後に死亡した場合、遺族厚生年金が支給されるのは、原則死亡した人が保険料を納付した月数が300月以上の場合です。保険料の未納などがあり納付月数が300月未満の場合、遺族厚生年金は出ません。
2017年8月に老齢年金の保険料納付要件は25年(300月)から10年(120月)に変更されましたが、遺族年金の要件は25年のままなので注意しましょう。
妻の年収が850万円以上ある
遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した人に生計を維持されていた遺族です。生計維持要件は、同居しているかどうか、受給権者の年収がいくらか、などで判断されます。受給権者の年収が850万円以上(または所得が655万5000円以上)の場合、生計維持要件を満たさないため遺族年金は出ません。
一定の年収があるため、自身で生計を維持していると判断されます。
妻の老齢厚生年金額が多い
遺族年金の受給権者が老齢厚生年金を受給している場合、遺族厚生年金の支給額のうち老齢厚生年金の支給額分が支給停止になります。
遺族厚生年金額が120万円、受給権者の老齢年金額が40万円の場合、40万円が支給停止となるため実際に受け取れる年金額は80万円になります。受給権者が120万円以上の老齢厚生年金をもらっていると、遺族厚生年金は全額支給停止となるため遺族年金は受け取れません。
遺族年金が受け取れない人は配偶者死亡後の生活設計が重要
老後生活を考えるとき、配偶者死亡後の生活設計も重要です。配偶者が亡くなると年金収入が減少するからです。一定金額の遺族年金を受給できれば収入の減少をカバーできますが、遺族年金がもらえない場合もあるため事前に確認しましょう。
特に、夫婦とも厚生年金期間がない(または短い)と、老後は遺族年金がもらえない(または金額がわずか)ため、老後資金を手厚く準備するなどの対策が必要です。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級