更新日: 2023.09.22 その他年金
年金は70歳で受け取ると、受給額が「月6万円」増える !? 繰り下げ受給を検討するべき3つの理由を解説
本記事では、年金の繰下げ受給を検討したほうがよい理由を3つの点から解説します。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
目次
70歳から受給すれば、一生涯42%増額して受給できる
年金(老齢基礎年金・厚生年金)は、通常65歳から受給開始できますが、60歳から繰上げ受給をしたり、75歳まで受給開始タイミングを繰り下げたりすることができます。
繰下げ受給した場合、「0.7%×繰り下げた月数」だけ毎月の受給額が増額されます。つまり、70歳から受給する場合、5年間(60ヶ月)繰り下げることになるため、0.7%×60=42%増額された金額を一生涯受け取れることになります。
老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金の受給は、繰上げ受給する場合、同時に繰上げ請求する必要がありますが、繰下げ受給の場合はどちらか一方のみを繰り下げることも可能です。
繰上げ受給と繰下げ受給の増減率の割合は図表1のようになります。
図表1
日本年金機構のHPから筆者作成
厚生労働省が公表している、令和3年度版「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、一般的な会社員などが該当する「厚生年金保険(第1号)受給者」の平均年金月額は14万5665円となっています。年平均すると、およそ175万円です(この金額は老齢基礎年金を含んだ金額です)。
この金額をベースに70歳からの繰下げ受給を選択した場合、受給額は年間73万5000円(毎月約6万円)の増額になります。受給総額に関しても80代半ばで繰下げ受給が逆転しますが、仮に早く寿命を迎えた場合は、受給総額は少なくなります。
図表2
厚生労働省 令和3年度版「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
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60歳以降も働く環境が整ってきている
年金の繰下げ受給が始まるまでの収入を確保するためには、できるだけ長く働くことが必要です。内閣府が公表している「高齢者白書(令和5年版)」によれば、男性の場合、60~64歳で83.9%、65~69歳で61.0%と、全体の半数以上の人が高齢期にも働いていることが分かります。
近年、高齢者の雇用に関する制度が改正され、65歳までの雇用の確保と70歳までの雇用の確保の努力が義務付けられています。高齢者でも働き口が見つけやすい環境が整いつつあるのです。
60歳以降の給与は下がる可能性は高い
高齢者になっても働き続けることができる環境が整ってきている一方で、給与が下がることは覚悟しておかなくてはなりません。現役世代と同じような感覚でお金を使い続けると、あっという間に支出が収入を上回ってしまう危険もあります。
そのため、今までと同じ働きなのに給料が減るのは納得いかないと考えるよりも、徐々に働き方もお金の使い方も変えていき、収入と支出のバランスを調整する期間と考えるほうがよいかもしれません。
年金の繰下げ受給をしたい場合は、年金事務所へ相談してみましょう
60歳以降になっても働き続け、生活スタイルを徐々に変化させながら支出を抑えつつ、年金の繰下げ受給によってもらえる年金を増やすプランは非常に合理的です。
年金の繰下げ受給をする場合、年金事務所または年金相談センターへ繰下げ受給の請求書を提出する必要があります。年金の繰下げ受給をしたい人は、お近くの年金事務所に相談してみましょう。
出典
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級