更新日: 2023.10.13 国民年金

年金保険料が払えない…「免除」された人が受け取れる額は?

年金保険料が払えない…「免除」された人が受け取れる額は?
年金保険料を支払うことが難しい方には、年金保険料の免除や納付猶予の措置があります。これにより、保険料の負担を軽減することが可能です。
 
今回は、年金保険料の免除と納付猶予の違いや特徴について解説します。また、免除を受けた場合の年金額のシミュレーションや、年金額を増やす方法も紹介しています。
FINANCIAL FIELD編集部

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年金保険料の「免除」と「納付猶予」とは

国民年金保険料において、所得基準など一定の要件を満たす場合、申請して承認を得ると、保険料の免除や納付猶予が適用されます。免除と納付猶予では、条件や将来の年金額への影響が異なるため、これらの違いを理解することが重要です。
 
本項では、年金保険料の免除と納付猶予に関する条件や特徴について詳しく説明していきます。
 

免除制度

年金保険料の免除制度とは、本人や世帯主、配偶者の前年度(*)の所得が一定額以下であるか、失業などによって保険料の納付が難しい状況にある場合に申請し承認を受けることで、保険料が免除される制度を指します。
 
*申請が1月から6月の間の場合は前々年所得が対象
 
この免除制度は、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類に分かれ、保険料免除が適用された期間は、受給資格期間や将来の年金額に反映されます。詳細は以下のとおりです。
 
【表1】

免除内容 受給資格期間への算入 年金額への反映 所得基準
全額免除 あり 全額納付した場合の
年金額の2分の1
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除 あり 全額納付した場合の
年金額の8分の5
88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 あり 全額納付した場合の
年金額の8分の6
128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除 あり 全額納付した場合の
年金額の8分の7
168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
未納 なし なし

※所得基準は令和3年度以降の場合
※日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」を参考に筆者が作成
 
さらに、免除制度には、配偶者からの暴力(DV)を受けている方で、一定の要件を満たす場合に適用される特例免除制度や、産前産後期間の年金保険料が免除される制度も存在します。
 

納付猶予制度

年金保険料の納付猶予制度とは、以下の要件を満たす方が申請し承認された場合に、年金保険料の納付が猶予される制度です。

・20歳から50歳未満
・本人または配偶者の前年(*)の所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」以下

*申請が1月から6月の間の場合は前々年所得が対象

※所得基準は令和3年度以降の場合
 
また、学生には在学中の保険料納付が猶予される学生納付特例制度も存在します。年金保険料の納付猶予が適用された場合、将来の年金受給資格期間や受給額にどのように影響するかについての詳細は、以下に示すとおりです。
 
【表2】

受給資格期間への算入 年金額への反映
納付猶予
学生納付特例
あり なし

※日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」を参考に筆者が作成
 
年金保険料の納付猶予期間は、免除期間とは異なり、年金額に反映されないことを理解しておく必要があります。
 

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年金保険料の免除を受けた場合の年金額シミュレーション

ここでは、年金保険料の免除を10年間受けた場合の年金額をシミュレーションします。

■シミュレーションの前提条件
・20歳から60歳までの40年間において、免除期間を除き全額の保険料を納付するものとする
・将来の国民年金額は、令和5年4月からの年金額(月額6万6250円、年間79万5000円)が継続すると仮定する

【全額免除した場合の年金額】
年金額:69万5625円
計算式:79万5000円×(360ヶ月+120ヶ月×1/2)÷480
 
【4分の3免除した場合の年金額】
年金額:72万468円
計算式:79万5000円×(360ヶ月+120ヶ月×5/8)÷480
 
【半額免除した場合の年金額】
年金額:74万5312円
計算式:79万5000円×(360ヶ月+120ヶ月×6/8)÷480
 
【4分の1免除した場合の年金額】
年金額:77万156円
計算式:79万5000円×(360ヶ月+120ヶ月×7/8)÷480

このように免除期間が適用されると、全額納付した場合と比べて年金額は減少します。
 

年金保険料の免除や猶予を受けた場合の年金額を増やす方法

年金保険料の免除や納付猶予が適用された場合、全額納付した場合と比較して、将来の年金額は減少します。免除の場合、年金額への反映は全額納付の2分の1から8分の7に限られ、納付猶予の場合は一切反映されないためです。
 
年金保険料の免除や納付猶予が適用された場合、期間終了後に保険料を追納することで、将来の年金額を増やせます。追納の対象となるのは、10年以内の免除や納付猶予期間です。追納分も社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税を軽減しながら、将来受け取る年金額を満額に近づけられます。
 
また、年金保険料とは別に、月400円の付加保険料を支払うことで、将来の年金額が増加(200円×付加保険料納付月数)する付加年金制度もあります。さらに、年金の受給開始年齢を66歳から75歳までの間に延ばす繰下げ受給を選択すると、1ヶ月延ばすごとに年金額が0.7%増加します(最大84%)。
 
年金保険料の免除や納付猶予を受けた場合は、追納などを検討して年金額を増やしましょう。
 

年金保険料の免除や納付猶予を受ける際には、年金額を増やすための計画も立てておくことが重要

年金保険料の支払いが難しい場合、一定の条件を満たす場合には、保険料の免除や納付猶予が適用されることがあります。これにより、年金保険料の負担を軽減することが可能です。
 
ただし、免除や納付猶予を受けると、将来の年金額が減少することになります。そのため、年金保険料の免除や納付猶予を検討する際には、将来の年金額を増やすための計画や対策を考えておくことが重要です。
 

出典

日本年金機構
 「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」

 「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」
 「配偶者からの暴力を受けた方の国民年金保険料の特例免除について」
 「国民年金保険料の追納制度」
 「付加年金」
 「年金の繰下げ受給」
 「令和5年4月分からの年金額等について」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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