更新日: 2023.10.27 その他年金

働きながら年金をもらうと、年金額が減る? 年金を減らされない働き方も紹介

執筆者 : 水上克朗

働きながら年金をもらうと、年金額が減る? 年金を減らされない働き方も紹介
60歳以降、厚生年金に加入して働きながら受け取る年金を「在職老齢年金」といいます。
 
在職老齢年金で受け取れる金額は、受給している老齢厚生年金の基本月額(老齢基礎年金を含まない老齢厚生年金の報酬比例部分、以下「月の年金額」とする)と総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割ったものを足したもの)の合計によって、一部または全額が支給停止されます(なお、老齢基礎年金(国民年金)は、在職老齢年金の対象ではありません)。
 
この記事を読んで理解を深めつつ、年金を減らされない働き方も検討しましょう。
水上克朗

執筆者:水上克朗(みずかみ かつろう)

ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

在職老齢年金の具体例

在職老齢年金においては、60歳以降、月の年金額と総報酬月額相当額の合計が48万円超になると、年金の一部または全額が支給停止されます。
 
例えば、65歳で年金額が月10万円、総報酬月額相当額が月42万円のときに減額される年金はいくらでしょうか。下図記載の在職老齢年金の計算式にあてはめてみましょう。
 
図表


日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」より筆者作成
 

年金の支給停止月額:(10万円+42万円-48万円)÷2=2万円
年金の支給停止年額:2万円×12=24万円

 
よって、毎月の収入は、年金額8万円(=10万円-支給停止月額2万円)と総報酬月額相当額42万円で、合計50万円となります。このケースでは年金が月2万円、年24万円減ることになりますが、さらに総報酬月額相当額が58万円(年間696万円)まで増えると、年金は全額支給停止されてしまいます。
 
また、加給年金を受け取っている場合は、その支給の有無も年金の支給停止に連動する部分があります。年金が一部支給される場合には加給年金も全額支給されますが、年金が全額支給停止になると加給年金も全額支給停止となります。
 

在職老齢年金をもらわず、繰下げ受給した場合の年金額はどうなる?

在職老齢年金をもらわず、繰り下げたとしても、在職老齢年金で支給停止された金額は、繰下げ時の増額の対象外です。前述のとおり月の年金額が10万円の場合、繰下げ受給の対象になる金額は「10万円」ではなく、支給停止された後の金額「8万円」になってしまいます。
 
例えば70歳まで繰り下げ受給した場合、毎月の年金受給額は「10万円×142%=14万2000円」ではなく「8万円×142%=11万3600円」にしかならない点に注意しましょう。
 

年金を減らされない働き方

年金を減らされない働き方としては、主に、次のような方法が考えられます。
 
1 月の年金額と総報酬月額相当額の合計が48万円以下になるように働く
月の年金額は調整できないため、毎月の年金と総報酬月額相当額の両方を受け取る場合は、総報酬月額相当額を抑えるために、月収の上限を制限しながら働くことになります。
 
例えば、前述の月の年金額10万円の場合、総報酬月額相当額を38万円(年間456万円)以下に抑えられるよう、労働時間や賃金を制限しながら働くことになります。
 
2 厚生年金に加入せず働く
在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら受給する年金です。勤務先で厚生年金に加入しないのであれば、年金は減額されません。
 
しかし厚生保険に加入せずにすむ勤務となると、主に週の労働時間が20時間未満、月収が8万8000円未満などの条件のもと、アルバイトやパートなど短時間労働者として働く場合が多く、収入が少なくなることが多い点に注意しましょう。
 
その他の方法には、フリーランスや業務委託で働くというものもあります。この場合は個人事業主ということになり、厚生年金に加入する必要はありません。
 

厚生年金に加入して働くメリット

厚生年金に加入しない場合、年金額の調整はなくなります。しかし厚生年金に加入すれば、以下のようなメリットを受けられます。
 
例えば、厚生年金と同時に会社の健康保険に入れます。その際、社会保険料の半分は事業主負担です。
 
しかし、厚生年金に加入しない場合には国民健康保険に入らなければなりません。国民健康保険は扶養の制度がないため、収入や家族構成によっては、保険料が高くなる可能性があります。加えて、厚生年金に加入して働くと、老齢厚生年金が増やせます。
 
人それぞれではありますが、多くの場合長い目で見ると、厚生年金に加入して働いた方がトクとも考えられます。
 

まとめ

60歳以降に働くと、在職老齢年金を減らされることがあります。年金を減らされないためには、総報酬月額相当額を抑えながら働く方法と、厚生年金に加入せず働く方法があります。厚生年金に加入して働くメリットもあるため、年金の減額だけにとらわれず、総合的に考えましょう。
 

出典

日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
日本年金機構「在職老齢年金の支給停止の仕組み」
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
 
執筆者:水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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