更新日: 2023.11.28 国民年金

年金を受けている父親が亡くなりました。手続きはどうしたらいいの?

執筆者 : 田久保誠

年金を受けている父親が亡くなりました。手続きはどうしたらいいの?
年金を受給している方が死亡したら、遺族はどのような手続きをすればよいのでしょうか?
 
年金を受給している人が亡くなった際、年金を停止するための手続き、未支給年金・遺族年金の申請等、遺族が行う年金手続きの種類や方法について見ていきます。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

まずは、年金停止の手続き

年金受給者が亡くなったら、まずは「受給権者死亡届」を年金事務所に提出します。ただしこの届出書は、日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば省略することができます。この手続きで年金の支給が停止しますので、もし手続きを怠って年金の受給を続けると、「不正受給」とみなされる可能性があるので注意が必要です。
 
死亡届が必要な場合の提出期限は、国民年金が14日以内、厚生年金が10日以内で、

■死亡した年月日
■年金証書に記載の基礎年金番号・年金コード
■生年月日

などを記入します。そして、亡くなった方の年金証書、死亡を明らかにできる書類(戸籍抄本または住民票の除票など)を添えて、年金事務所または年金相談センターで手続きをします。
 
また、障害基礎年金、遺族基礎年金のみを受けていた方の場合は、市・区役所または町村役場に提出します。
 

未支給年金の申請もある

年金は、偶数月にその前月、前々月の年金が振込されますので、年金受給者が死亡時点ではまだ受け取っていない年金あるいは、亡くなった月の分までの未払いの年金(未支給年金)が発生します。
 
例えば、10月10日に年金受給者が亡くなったと仮定します。この場合、年金の受給権利は10月分までですが、その2ヶ月後の12月に振り込まれることになるので、受給者本人は受け取ることができません。この部分を「未支給年金」といい、相続人等遺族が請求することによって受け取ることが可能となります。
 
受け取ることができる遺族の範囲は、年金を受給している人が亡くなった当時、その方と生計を同じくしていた親族で、その受給できる順位は、配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹→それ以外の三親等内の親族の順になります。
 
また、亡くなった方に一定の条件が当てはまる遺族がいる場合、遺族年金等を受け取ることがあります。この未支給年金の請求には5年の時効がありますので、あまり遅くならないよう死亡届と一緒に請求するとよいでしょう。
 

未支給年金を受け取った場合の税金は? 企業年金や個人年金があった場合の税金は?

未支給年金は相続財産とはみなされませんので、遺産分割の対象になりません。よって、相続税もかかりません。しかし、未支給年金を受け取った遺族は所得税の課税対象(一時所得)となりますので注意が必要です。
 
また、年金受給者が過去に勤務していた企業によっては企業年金に加入している場合があります。企業年金は、公的年金に上乗せされる形で、それぞれの会社が独自に設計している年金制度で、たとえば企業型確定拠出年金、確定給付企業年金などがあります。
 
それ以外にも民間の個人年金に加入していた方もいるかと思います。これらの年金からも遺族に対する給付がある場合もありますので、年金証書等を確認して受給できる可能性があるようでしたら、該当する管理機関や保険会社等に連絡をして手続きを取るようにしましょう。その結果、受給できた場合には、基本的に相続財産とみなされることになり、相続税の課税対象となります。
 
また、場合によっては贈与税がかかるケースも出てきますので、年金に関する税金について不明点があれば、税務署や税理士に相談するとよいでしょう。
 

相続放棄したら未支給年金はどうなるの?

結論から申し上げますと、相続放棄をしても未支給年金は受け取ることが可能です。相続放棄をしても受け取れる財産か否かは、その財産が「固有財産」か「相続財産」によって異なります。
 
「固有財産」は、遺族固有の権利に基づいて取得する財産で、未支給年金は判例により遺族の「固有財産」となっていますので相続放棄をしても受給が可能です。
 

一般的な相続と考え方が異なる部分がある!

これまで見てきたように、年金制度は一般の相続の考え方と異なる場合がありますので注意が必要です。
 
不明点があれば年金事務所や社労士、税務署や税理士に相談するとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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