更新日: 2023.12.01 その他年金

もうすぐ65歳ですが、年金額が増える「繰下げ受給」に魅力を感じています。どのタイミングで受け取るのがベストでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

もうすぐ65歳ですが、年金額が増える「繰下げ受給」に魅力を感じています。どのタイミングで受け取るのがベストでしょうか?
これから65歳になる人のなかには、「予定どおり65歳から年金を受け取るべきか」「繰下げ受給で年金額を増やすべきか」と検討する人もいることでしょう。
 
老後資金を確保するための方法はいくつかありますが、そのなかでも、繰下げ受給で年金額を増やすのは効率のよい方法です。繰下げ受給は、年金の受取開始時期を1ヶ月遅らせるごとに、0.7%の増額率が適用されます。
 
本記事では、年金の繰下げ受給を検討する人に向けて制度の概要をはじめ、お得になるタイミングを解説します。そのほかにも、年金の繰下げ受給をする際の注意点もまとめているので参考にしてください。
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年金の受給額を増やせる繰下げ受給とは?

年金の繰下げ受給とは、原則として65歳から受け取れる年金を66歳から75歳までの間に遅らせることで年金額を増やせる制度です。年金の受取開始時期を1ヶ月遅らせると0.7%、1年間で8.4%の増額率が適用されます。さらに、70歳0ヶ月で年金を受け取った場合は24.0%、最大の75歳0ヶ月になると84.0%にまで増やすことが可能です。
 
なお、繰下げ受給を希望する場合、65歳到達前に届く年金請求書を提出しなければ自動的に繰下げた状態になります。66歳0ヶ月以降、年金を受け取りたいタイミングになったら、年金の請求手続きを行いましょう。
 

年金の繰下げ受給がお得になるのはいつ?

年金の受取開始から生存期間が短ければ、繰下げ受給をしないで65歳から受け取ったほうがお得になるケースも十分に有り得るでしょう。繰下げ受給の損益分岐点は、65歳から受け取れる年金を100%として以下のように計算します。
 

●100%÷0.7%=142.85
●142.85%÷12ヶ月=11.904(年)

 
繰下げ受給を選択した場合、年金の受取期間が11年10ヶ月以上になるとお得になる計算です。
 

平均寿命は男性が81.05歳、女性は87.09歳

繰下げ受給は、年金額を効率よく増やせる制度ですが、自分の健康状態などを考慮したうえで、受取開始時期を決める必要があります。ゆとりある老後生活のために繰下げ受給を選択したものの、待機中に死亡した場合は制度の恩恵を受けられません。
 
厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」では、男性の平均寿命が81.05歳、女性は87.09歳と伝えています。また、75歳まで生存する高齢者の割合は男性が75.3%、女性が87.9%である旨も伝えています。
 
今は健康だけれど先のことは分からないという人は、平均寿命を参考にして年金の受取開始時期を検討するのも方法の一つです。
 

年金の繰下げ受給をする際の注意点

年金の繰下げ受給によって年金額を効率よく増やせますが、以下のように注意点があることもチェックしておきましょう。
 

●繰下げ損のリスクが高い
●税負担が増える場合がある
●加給年金は増額対象にならない

 
単に年金額を増やせるという点だけに注目するのではなく、注意点の内容を理解、納得したうえで繰下げ受給を選択してください。
 

繰下げ損のリスクが高い

繰下げ受給によって年金額を増やせたとしても、死亡した時点で受け取れなくなります。65歳で年金を受け取らないで、66歳0ヶ月以降75歳0ヶ月の間に受取開始時期を遅らせたにも関わらず、死亡した時期によっては繰下げ損につながる可能性も高いです。
 
人の寿命は事前に把握できるものではありませんが、持病があるなど健康状態に自信がない人に繰下げ受給は適した方法とは言い切れないでしょう。
 

税負担が増える場合がある

公的年金は、所得税法上における所得区分が雑所得に該当し、課税対象になります。年金額に応じて所得税や住民税、社会保険料などの負担が増える点に注意が必要です。
 
繰下げ受給によって年金の受給額そのものは増えたとしても、税負担が増えることで手取り額は思ったよりも多くないと感じる可能性も高いでしょう。
 

加給年金は増額対象にならない

加給年金は、繰下げ受給の増額対象にならない点に注意してください。加給年金とは、以下の要件を満たす場合に一定額が加算される制度で、老齢厚生年金の家族手当のような意味を持っています。
 

【受給要件】

●厚生年金の被保険者期間が20年以上ある
●厚生年金の被保険者が65歳到達後(定額部分の支給開始年齢に到達後)に一定の要件を満たす家族がいる

 

【加給年金を受け取れる家族の要件】

●65歳未満の配偶者
●18歳に到達した年度の末日までの間にある子、または20歳未満の障害等級1級・2級に該当する子

      

平均寿命や自分の健康状態などからベストな年金受取開始時期を判断しよう

年金の受取開始時期を遅らせれば遅らせるほど、年金額を増やせる繰下げ受給は魅力のある制度といえるでしょう。65歳で年金を受け取らなくても、不自由なく暮らせるだけの収入や貯蓄があれば活用したいところですが、注意点がいくつかあるのも事実です。
 
年金額を増やしたいがために繰下げ受給を選択したものの、損益分岐点よりも早く死亡すれば制度の恩恵は受けられませんし、年金額が増えることで税金や社会保険料の負担が増える場合もあります。
 
年金額を増やせるからという理由だけでなく、自分の健康状態などを考慮したうえでベストな年齢から年金を受け取ってください。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給

厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況

国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係

日本年金機構 加給年金額と振替加算

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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