更新日: 2023.12.12 その他年金

60歳から繰上げ受給しても働かずに暮らせる年金額って、どのくらいの額なのでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

60歳から繰上げ受給しても働かずに暮らせる年金額って、どのくらいの額なのでしょうか?
60歳で定年退職したら、さっさと年金を繰上げ受給して、働かずに年金収入で暮らしたいという理想を抱く人は多いのではないでしょうか。しかし、年金を繰上げ受給すると支給額が減額されるため、生活費をまかなえるだけの年金がもらえなくなる可能性があります。
 
本記事では、繰上げた年金で平均的な老後の生活費をまかなうには、本来の年金額がいくら必要で、現役時代の年収がどれくらいあればよいのかを試算します。ぜひ参考にして、「繰上げ受給でのんびり年金暮らし」が可能かどうかイメージしてみてください。
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定年退職後の平均的な生活費は夫婦で約24万円

総務省「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の生活費(消費支出)の平均額は、約23万7000円です。単身世帯の場合は約14万3000円です。
 
60歳から年金を繰上げ受給して働かずに暮らしていけるかどうかは、平均的な生活費の金額を、繰上げ受給によって減額された年金額が上回っているか否かが一つの目安となるでしょう。
 

60歳で年金を繰上げ受給すると年金は最大24%カットされる

年金の繰上げ受給を選択すると、次の式で計算した減額率に応じて、65歳から受給する場合の年金額から減額分が差し引かれます。
 
減額率(最大24%)=0.4%×繰上げ受給を始める月から65歳の誕生日前日の前月までの月数
 
60歳で年金を繰上げ受給すると、減額率は誕生日からの経過月数に応じて19.6~24.0%です。以上の前提を踏まえて、60歳で繰上げ受給しても働かずに暮らせる本来の年金額を考えてみましょう。
 

本来の年金額がいくらなら繰上げ受給しても働かずに暮らせる?

高齢者夫婦が繰上げ受給の年金で生活するには、24%を差し引いた残りの76%の年金で、夫婦の生活費約23万7000円をまかなえる必要があります。そのために必要な本来の年金額は、月額約31万円です。
 
妻が基礎年金のみの夫婦の場合、妻の年金は満額で月額約6万5000円です。夫の年金は月額24万5000円必要となります。
 
一方、単身者の場合は、24%を差し引いた残りが月額約14万3000円必要です。本来の年金額に換算すると月額約18万8000円となります。
 

年金を24万5000円もらえる現役時代の年収は?

平成15年4月以後に40年間厚生年金に加入し、年収は一貫して同額の条件で、年金が月額24万5000円になる年収を逆算してみましょう。
 
満額の老齢基礎年金月額6万5000円を差し引くと、老齢厚生年金は月額18万円必要です。老齢厚生年金の金額は、「平均標準報酬額×5.769/1000×加入月数」で計算するため、次の式が成り立つ平均標準報酬額を計算すればよいことになります。
 

平均標準報酬額×5.769/1000×加入月数480月=18万円×12ヶ月
 
平均標準報酬額=216万円÷(5.769/1000×加入月数480月)≒78万円

 
平均標準報酬額を年額に直すと78万円×12ヶ月=936万円となります。
 
ただし、ボーナスなしで年収936万円だと、毎月の給与が標準報酬月額の最高額65万円を超えるため(つまり、同等級の月収63万5000円~と同じ扱いになるため)、年金額は18万円に届きません。
 
1回あたり150万円以下のボーナス×2~3回を含めて年収936万円を超えると、老齢厚生年金の月額が18万円を超え、夫婦で60歳から繰上げ受給をしても24万5000円の年金を受給できる計算です。
 

年金を18万8000円もらえる現役時代の年収は?

同じ条件で、年金が18万8000円になるにはどのくらいの年収が必要でしょうか。このケースでは、満額の老齢基礎年金月額6万5000円を差し引いた、月額12万3000円の老齢厚生年金が必要です。必要な年収を以下で計算してみましょう。
 

平均標準報酬額×5.769/1000×加入月数480月=12万3000円×12ヶ月
 
平均標準報酬額=147万6000円÷(5.769/1000×加入月数480月)≒53万3000円

 
つまり、53万3000円×12ヶ月=639万6000円の年収があれば、60歳から年金を繰上げ受給しても、働かずに平均的な生活はできることになります。
 

繰上げ受給の年金だけで生活できるのは現役時代高収入だった人に限られる

60歳から年金を繰上げ受給すると、年金額が約4分の3まで減ってしまいます。減額後の年金だけで生活するにはもともとの年金額が高額でなければならず、現役時代の年収も夫婦世帯なら平均900万円超、単身世帯でも平均600万円超と、高い年収が必要です。
 
年金の繰上げ受給の仕組みをチェックして、選択しても後悔しないかどうか、十分に検討しましょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要

日本年金機構 年金の繰上げ受給

日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について

日本年金機構 は行 報酬比例部分

日本年金機構 厚生年金保険の保険料

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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