更新日: 2023.12.18 その他年金

【年金受給の戦略】老後資金が心配なので、年金の繰上げ受給を検討しています。10年で「200万円」の損失って本当ですか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

【年金受給の戦略】老後資金が心配なので、年金の繰上げ受給を検討しています。10年で「200万円」の損失って本当ですか?
老後資金について、現役時代から安心できている人はさほど多くはないでしょう。貯蓄がある人でも、老後には何があるかわからないため、不安を抱えている人は少なくありません。貯蓄があまりない人の中には、年金の繰上げ受給を検討している人もいます。
 
今回は、年金の繰上げ受給を選択した場合、繰上げしなかった場合に受け取れた本来の金額とどれほどの差が出るのかについてみていきましょう。
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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年金の繰上げ受給を選択している人の割合

公益財団法人生命保険文化センターでは、年金の繰上げおよび繰下げ受給についてまとめています。令和2年度末時点での状況をまとめたものによると、繰上げ受給を選択した人の割合は、国民年金では26.1%、厚生年金では0.5%でした。厚生年金では男性の方が繰上げ受給を選択した人の割合が多く0.9%、それに対して女性は0.1%となっています。
 
ちなみに、繰下げ受給を選択した人は、国民年金では1.8%、厚生年金では1.0%となっており、繰上げ受給ほどの差はみられません。こうしたデータから、繰上げ受給を選択している人は少数派であることが分かります。
 

繰上げ受給した人の受給額

令和2年度末時点で年金を繰上げ受給した人の平均受給月額は、国民年金で4万2578円、厚生年金で8万8418円でした。繰上げ受給をしなかった人が本来受け取れた平均月額は、国民年金で5万5998円、厚生年金で11万1150円となっています。繰上げ受給した人としなかった人の差額は、国民年金では1万3420円、厚生年金では2万2732円です。
 
この差額を年間で計算すると、国民年金では16万1040円、厚生年金では27万2784円となります。さらに10年間で計算すると差額は、国民年金では161万0400円、厚生年金では272万7840円です。
 
令和2年度末時点での受給状況を参考に計算しているため、実際の金額とは異なります。また、個人差もあるでしょう。しかし、繰上げ受給をすると繰上げ受給しなかった場合と比べて、10年間で200万円以上の差が出る可能性があります。
 

繰上げ受給を検討した方がよい人とは

数字上では、繰上げ受給を選択した場合、選択しなかった場合と比べると受給額に大きな差が生じ、損をするようにみえるでしょう。しかし、それが実際に大きな損失となるかどうかは一概にはいえません。ここでは、繰上げ受給を検討した方がよい人の特徴や、損得について考えてみましょう。
 

・老後の生活費の蓄えが少ない

老後資金が心配な人は、年金の繰上げ受給を検討せざるをえません。お金がなければ生活ができないため、やむをえないでしょう。毎月数万円ほど受給額が減ってしまったとしても、早めに受け取れるだけで生活が安定したり精神面でも安心感が生まれたりする可能性があります。そういう意味では、必ずしも繰上げ受給で損ばかりをしてしまうとはいえません。
 

・健康面で不安がある

どれだけ長く生きられるかは、人によって大きく異なります。健康面で不安があるのであれば、早めに年金を受給しておいた方が、むしろ受給の合計額では得をするケースも出てくるでしょう。仮に70歳で亡くなってしまった場合、受給開始年齢が60歳の人は10年分年金を受け取れますが、受給開始年齢が65歳の人は5年分しか受け取れません。
 
もちろん、自分がいつ亡くなるかはわからないため、結果論といえます。ただ、年金の繰上げ受給を選択しなかったことを後悔する高齢者がいてもおかしくはないでしょう。一方で、健康面に不安を抱える人の中からは、早めの受給を選択したことが正しかったと感じる人が出てくる可能性も大いにあります。
 

年金の繰上げ受給の損得は金額だけでは判断できない

年金は繰上げ受給を選択すると、選択しなかった場合と比べて月額が減ります。差額は10年間で200万円以上となる可能性があるでしょう。
 
しかし、繰上げ受給は早めに年金を受け取れるため、亡くなる年齢によっては、むしろ年金受給額の合計は多くなるケースもあります。単純に金額の損得のみではなく、老後の生活費や健康面なども考慮しながら、繰上げ受給するかどうかを判断しましょう。
 

出典

公益財団法人生命保険文化センター 老齢年金を繰上げ・繰下げ受給している人の割合はどれくらい?

 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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