75歳までなんて待てません。年金の受給額は60歳・65歳・70歳でどのくらいの違いがありますか?
配信日: 2023.12.26
本記事では、年金を75歳に繰下げる際のリスクや、年金受給を60歳に繰上げた場合、70歳に繰下げた場合の年金額の違いを解説します。年金受給の時期で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
年金繰下げ受給の損益分岐点の壁は意外と高い
年金の受給スタートを待った分だけ受給額が増える繰下げ受給は、一見すると得をする制度に見えます。しかし、年金の受給総額が65歳から受給した場合に追い付くには、損益分岐点に到達しなければならない点に注意が必要です。
現行の繰下げ受給制度は、受給開始から11年目で受給総額が65歳受給開始時を上回るようにできています。つまり、年金受給を75歳に繰り下げると、86歳という高い壁を超えなければ、トータルでは得をしないのです。
厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」によると、令和4年の平均寿命は男性81.5歳、女性87.09歳です。75歳まで年金受給を待っていると、損益分岐点を超える前に亡くなってしまうリスクは、決して低くありません。
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60歳からの繰上げ受給で年金は最大24%減る
本来の65歳まで年金受給を待たずに60歳で受給をスタートすると、年金額はどうなるでしょうか。年金を繰上げ受給すると、次の計算式で算出した減額率(最大24%)の分だけ、受給額が減額されます。
減額率=0.4%×繰上げ請求月から65歳の誕生日前日の前月までの月数
60歳0ヶ月まで受給を繰上げると、65歳の誕生日前日の前月までの月数は60月となるため、減額率は最大の24%です。繰上げ請求月が60歳11ヶ月ならば、減額率は49ヶ月分の19.6%となります。
65歳からの年金額が15万円の人の場合、60歳から繰下げ受給したときの年金額は、請求タイミングによって、15万円×(100%-24%)=11万4000円から、15万円×(100%-19.6%)=12万600円の間となります。本来の15万円との差額は、マイナス2万9400円~3万6000円です。
70歳からの繰下げ受給で年金は最大42~49.7%増える
75歳までは待てないけれど、70歳までは待ってもよいという場合、年金額はどのくらい増えるのでしょうか。年金を繰下げ受給すると、次の計算式で算出した増額率(最大84%)の分だけ、受給額が増額されます。
増額率=0.7%×65歳の誕生日前日から繰下げ申出月の前月までの月数
70歳0ヶ月まで受給を繰下げると、65歳の誕生日前日からの月数は60月となるため、増額率は42%です。繰下げ請求月が70歳11ヶ月ならば、増額率は71ヶ月分の49.7%となります。
65歳からの年金額が15万円の人の場合、70歳で繰下げ受給したときの年金額は、請求タイミングによって、15万円×(100%+42%)=21万3000円から、15万円×(100%+49.7%)=22万4550円の間です。本来の15万円との差額はプラス6万3000円~7万4550円と、大幅な増額となります。
ただし、65歳との損益分岐点は11年目なので、81~82歳にならなければトータルでは得になりません。また、年金額が増えることで医療保険・介護保険の保険料や税金などが増え、手取りがあまり増えないケースもあるため注意が必要です。
繰上げ・繰下げによる増減幅と自身の心身の状態を見て年金受給の良いタイミングを決めよう
年金を60歳から繰上げ受給をすると、年金収入を早期に得られる反面、1回の受給額は大きく減ります。70歳や75歳に繰下げると、年金額は大幅に増えるものの、損益分岐点を超える前に健康状態が著しく悪くなったり、亡くなったりするリスクがあります。
自身の心身の状態や繰上げ、繰下げによる年金額の変化をあわせて、自分にとって年金をどのタイミングで受給するのがベストか、よく検討しましょう。
出典
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー