更新日: 2024.01.22 その他年金

「年収1200万円」と「年収800万円」でも、将来の年金額は変わらない!? 高収入でも安心できないのはなぜ? 理由を解説

執筆者 : 御手洗康之

「年収1200万円」と「年収800万円」でも、将来の年金額は変わらない!? 高収入でも安心できないのはなぜ? 理由を解説
高給取りと呼ばれるような会社員は、年金も十分にもらえると思われがちで将来の経済的な不安はないと考えているかもしれません。確かに年収が多いほうが将来的な年金受給額は増えますが、年金額には上限が存在します。そのため、現在高収入で支出も多い家庭は注意が必要です。
 
この記事では年金は最大でどれくらい受給できるのか、現役世代に高年収だった場合の注意点や対策を紹介します。
 
※年金額は過去の状況や家族構成などによっても変わるため、ご自身の具体的な金額はお近くの年金事務所やねんきんネットなどでご確認ください。

厚生年金は月平均65万円以上の給与で頭打ち

厚生年金保険料額は原則として給与が多いほど段階的に増えていきます。ここでは標準報酬月額の決定方法などは割愛しますが、月の給与が約65万円以上で標準報酬月額は最大の32等級となり、保険料額はおよそ6万円です(図表1参照)。
 
図表1
 

 
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
 
各種手当(通勤手当や住宅手当など)も関係しますが、単純に計算すると32等級の年収は65万円×12カ月=780万円となり、この780万円が年金受給額の変わらなくなる一つの目安の年収になります。そのため、年収1200万円(月収100万円)と年収800万円では、年金受給額にほとんど違いはなくなります。
 

年金受給額の最大額は36~37万円程度

現実的にはこのような人はほとんどいないかもしれませんが、厚生年金の加入期間を最大(70歳まで)にして、先ほどの給与(厳密には賞与も影響します)をもらい続けると、厚生年金の受給額はおよそ30万円程度になるそうです。国民年金(老齢基礎年金)を含めた年金受給額の最大受給額は36万~37万円です。
 
逆に言えば、それだけ長期間高収入だったとしても年金受給は40万円にも届かないことになります。収入が多いにもかかわらず貯蓄が増えていない場合は要注意で、年金生活になると収入が減少するため、貯蓄も急速に減少するリスクが増えることになります。
 

重要なのは支出のコントロール

年収の多寡に関係なく、支出をコントロールすることは非常に重要です。快適な生活を体験すると以前の生活に戻ることが難しくなるように、ある時点から支出を急に小さくすることはできないと考えておきましょう。
 
年収が多くても少なくても、その収入に見合った支出にすることが重要ですが、その意味では収入が多かった人が支出を減らすのは、難しいことが多いのかもしれません。
 
とはいえ、支出の見直しは非常に重要なことなので、年金生活が始まる前から無理のない範囲で出費を見極めることをおすすめします。
 

対策が早ければ選択肢が増える

年金の繰下げ受給ができれば、安全かつ効率よく年金を増やすことができるので、収入増の手段としておすすめです。年金受給は最大75歳まで繰り下げることができるようになりました。繰り下げ月数×0.7%を増額して受け取ることができるので、5年なら42%、10年なら84%増額した金額となります。
 

例)65歳受給開始で年金受給額30万円(年間360万円)の場合

(1)70歳まで繰り下げ
0.7%×12ヶ月×5年=42%
30万円×1.42=42万6000円(年間511万2000円)
 
(2)75歳まで繰り下げ
0.7%×12ヶ月×10年=84%
30万円×1.84=55万2000円(年間662万4000円)

 
2024年から新NISA(少額投資非課税制度)も始まりました。例えば、年金の繰下げ受給をするために必要な貯蓄額を試算し、新NISAを貯蓄の手段として利用することも考えられます。あるいは、できるだけ長く働くためにリスキリングに取り組むのもよいでしょう。早い段階から実際に行動を起こすことが重要で、収入増と支出減のどちらも選択肢が広がります。
 
年の初めは現在の状況や将来のライフプランを見直すいいタイミングです。高収入だからと安心せずに、まずはチェックしてみることをおすすめします。ご自身だけで検討するのが難しければ、専門家に相談するのもよいかもしれません。
 

出典

日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)

日本年金機構 年金の繰下げ受給

 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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