更新日: 2024.01.26 その他年金

50歳で年収700万円です。貯蓄も「2000万円」に達したので、早期退職しても大丈夫ですか? 将来の年金が減っても、早くからゆっくりできるなら良いでしょうか?

執筆者 : 小林裕

50歳で年収700万円です。貯蓄も「2000万円」に達したので、早期退職しても大丈夫ですか? 将来の年金が減っても、早くからゆっくりできるなら良いでしょうか?
50代は、子どもが独立してホッとしたり、仕事の責任が増加して負担に感じたり、それらが重なったりして、仕事を続けるモチベーションが低下してしまう人もいるでしょう。そんなときに会社から退職金の割り増しなどがある早期退職優遇制度の利用を促されると、早期退職に気持ちが傾くかもしれません。
 
しかし、早期退職すると定年退職をした場合と比較し、将来受け取る年金額は少なくなることをご存じですか?
 
本記事では、50歳年収700万円の人が早期退職した場合と定年退職した場合とを比べて、年金額がいくら違ってくるのかを解説します。
小林裕

執筆者:小林裕(こばやし ゆう)

FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート

老齢厚生年金の支給額に差が生じることに

定年退職まで働く場合、厚生年金保険に加入し続けた状態のため、早期退職より老齢厚生年金を多く受け取れます。しかし早期退職をして、その後に再就職などしない場合は厚生年金保険には加入できず国民年金のみの加入となるため、年金額に差が出ます。
 
老齢厚生年金とは、老齢基礎年金の受け取り対象者が厚生年金保険に加入している場合に上乗せして受け取れる年金です。報酬比例部分、経過的加算、加給年金に分かれていますが、本記事では簡易的に報酬比例部分についてのみ計算します。
 

報酬比例部分の計算方法

報酬比例部分については平成15年3月以前と、同年4月以降の加入期間によって算出方法が異なります。今回は加入期間をすべて平成15年4月以降だと仮定して計算します。
 
「平均標準報酬額×5.481÷1000×平成15年4月以降の厚生年金保険加入期間」
 

年金額のシミュレーション

以下の計算結果はそれぞれ、原則通り65歳からの受給開始であり、年収が一定であると仮定し、簡易的に計算しています。
 
平均年収700万円で厚生保険の加入期間が22歳から60歳の場合、平均標準報酬額約58万3330円×5.481÷1000×456月=145万7937円です。月額は12万1494円となります。
 
次に平均年収700万円で厚生年金保険の加入期間が22歳から50歳の場合は平均標準報酬額約58万3330円×5.481÷1000×336月=107万4269円です。月額は8万9522円となります。
 
年額で38万3664円、月額で3万1972円の差が生まれます。つまり10年間では383万6640円、20年間では767万3280円も受け取る年金額が減少してしまいます。
 

早期退職の場合、年金受給までの生活も難しい?

50歳にて早期退職した場合でも、すぐに年金が受け取れるわけではないため、貯蓄を取り崩す、あるいは株といった運用資産の配当金の受け取りなどが安定的に実現できる人でなければ、年金受給までの生活が困窮してしまうかもしれません。
 
参考までに、総務省の家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要によると、65歳以上の単身無職世帯の支出平均額は15万5495円です。
 
もちろん必要な生活費は人それぞれですが、原則65歳からとなる年金受給までの15年間も多額の支出があることは理解しておきましょう。貯蓄などでまかなえないのなら、再就職やパート・アルバイトなどをする必要がありそうです。
 

早期退職はローン残高や必要生活費などと併せて検討を

本記事では50歳にて早期退職した際に、どれくらい年金が減ってしまうのか計算しました。早期退職をしてから年金受給までの間の生活費、年金受給を開始してからも受給額の範囲内で生活していけるのかをまず確認しましょう。その上で問題がなければ、早期退職を一つの選択肢としてもよいかもしれません。
 

出典

日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
 
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート

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