更新日: 2024.02.17 国民年金
在学中の年金保険料が年20万円!? 特例制度を使って追納もしなかったら、将来の年金はどのくらい減りますか?
これは、収入がない学生には、支払いが厳しいでしょう。こういった経済的に余裕のない学生のために、就職してから保険料を支払うことができる制度として「学生納付特例制度」というものがあります。
本記事では、この制度の内容を確認し、先送りした保険料を支払わなかった場合に、将来の年金はどれくらい減るかを解説していきます。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
学生納付特例制度とは?
学生納付金特例制度とは、一定要件を満たす学生が、申請をすることによって在学中の保険料の納付が10年間猶予される制度です。
(1) 対象者
1. 前年の所得が一定以下
学生納付特例を受けようとする申請者本人の年度の前年の所得が、128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等以下であることが必要です。なお、家族の所得の多寡は問いません。
2. 学生であること
学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校等に在学する方で夜間・定時制課程や通信課程などの方も含まれます。つまり、ほとんどの学生が対象となります。
具体的に学生納付特例制度の対象となる学校は、日本年金機構のホームページ内の「学生納付特例対象校一覧」で確認できます。
(2) 申請先
申請先は、以下3ヶ所となります。
1. 住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口
2. お近くの年金事務所
3. 在学中の学校等
ただし、在学している学校等が学生納付特例の代行事務を行うことの許認可を受けているケースに限りますので、詳細は学校に確認しましょう。
(3)老齢基礎年金との関係
老齢基礎年金を受け取るためには、原則、保険料の納付済期間等が10年以上必要となりますが、学生納付特例制度が承認された期間は、この10年以上という老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。
しかしながら、老齢基礎年金額の計算の対象となる期間には含まれないので、猶予を受けている10年間のうちに保険料を納めないと、将来受け取る年金が減額されます。
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国民年金はいくら減らされるか?
(1) 国民年金の受給額はどうやって決まる?
国民年金の受給額は、収入の多寡に関係なく、納めた保険料の月数によってのみ決定します。
具体的には、国民年金の受給額は、毎年改定される老齢基礎年金(満額)をもとに計算します。なお、2023年(令和5年度)の老齢基礎年金の満額は、79万5000円※ですので、受給額は以下の計算式で算出されます。
老齢基礎年金=79万5000円(※)×保険料納付月数÷480ヶ月
(2) 学生納付特例制度を利用した人の受給額
前述のように、学生納付特例制度は、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。したがって、満額を受給するためには、猶予を受けている10年間のうちに保険料を追納する必要があります。
ちなみに、学生納付特例制度で4年間保険料の納付を猶予してもらったが、その後追納しなかった場合には、その4年間分の年金額が減らされることとなります。具体的には、
減らされる年金額=79万5000円(※)×(4年×12ヶ月)÷480ヶ月
=7万9500円
したがって、学生納付特例制度を使った人は、将来の年金が減らされないように、10年の猶予期間内に保険料の追納を行うようにしたいものです。
(※)令和5年4月分からの67歳以下の年金額。68歳以上は79万2600円
出典
日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 学生納付特例対象校一覧
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー