フリーターは将来「年金が少ない」と聞きました。「厚生年金」に加入できないのでしょうか?
配信日: 2024.02.20
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
フリーターでも厚生年金に加入できる
よくある勘違いとして「フリーターは厚生年金に加入できないから、将来受け取れる年金が少ない」というものがあります。しかし、実際にはそうではありません。フリーターでも所定の要件を満たす場合は、厚生年金に強制加入することになります。
勤務先でいわゆるフルタイム、あるいはフルタイムの4分の3以上の労働時間および日数で働く場合は、厚生年金に加入することが原則となっているようです。
確かに昔は「フリーターは厚生年金に加入させない」ということもあったようですが、現在では社会保険の適用について厳格に運用されているため、フリーターであることのみをもって厚生年金に加入できないということはありません。
ただし、従業員数5人未満の個人事業主に雇われているなど、ごく一部の条件を満たした場合は、その限りではありません。
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「フリーターは将来年金が少なくなる」といわれるのは、収入が少ない傾向にあるから
では、なぜ厚生年金に加入することのできるフリーターが「将来年金が少ない」といわれるのでしょうか。その理由が、厚生年金の支給額の決まり方にあります。
厚生年金の支給額の大部分は「報酬比例部分」と呼ばれるものになります。報酬比例部分には上限額がありますが、おおむね、加入期間が長く、そして期間内の収入が高いほど厚生年金の支給額も高くなります。
そのため、一般的な正社員と比べて収入が低い傾向にあるといわれるフリーターは、厚生年金の支給額が低くなりやすく、将来年金が少ないといわれるのです。
参考までに、下記条件で「公的年金シミュレーター」を利用して試算してみます。
・1980年10月1日生まれ
・20歳から59歳まで厚生年金に加入
・上記期間中は、e-Stat「令和4年賃金構造基本統計調査」から推計される、企業規模計10人以上の企業における平均年収として、正社員はおよそ530万円で就労、フリーターはおよそ306万円で就労したものとして計算(1万円未満は切り捨て)。
すると、正社員の場合、65歳から年間で189万円の年金を受け取ることができます。それに対してフリーターの場合は143万円となり、年間で46万円の差がつきます。
たった46万円と思う方もいるかもしれませんが、現実にはこれ以上の差がつく可能性もあります。上記の計算の基礎となった「令和4年賃金構造基本統計調査」では、正社員以外も収入が300万円を超えていますが、これは賞与などが支給されているためです。
仮に、街中で募集がかかっている時給制のアルバイトを想定して、賞与はなく、収入は月に20万円のみの年収240万円として、先ほどと同条件で計算してみましょう。すると、年金額は128万円にまで下がります。
上記より、年収によっては将来の年金が少なくなる可能性が高いといえます。
年金額を殖やすには?
将来受け取る年金額を殖やす方法としては、転職して正社員になり収入を上げるほか、老後に年金の受給開始時期を繰り下げることや、就労期間を延ばすことが有効です。それ以外にも、年金額が殖えるわけではありませんが、iDeCoやNISAなど資産運用によって老後資金を確保するのも有効です。
特に就労は有効であり、例えば前述した年収240万円の方が就労期間を69歳まで延ばすと、年間128万円だった年金額は、65歳からは145万円、70歳からは161万円も受け取れるようになります。
まとめ
正社員ならば必ずフリーターより多く年金を得られるとは限りませんが、フリーターは平均的に年収が正社員よりも少なく、年収におおむね比例する厚生年金も、正社員より低くなりやすいです。そのため、フリーターだと将来は年金が少ないといわれています。
もし、現在フリーターで将来の年金が不安だという場合、正社員になることを検討するほか、繰下げ受給や就労の延長なども検討してみてください。そうすることで、特に対策することなくフリーターとして過ごすよりも、将来受け取る年金額を殖やすことができるかもしれません。
出典
令和4年賃金構造基本統計調査 表番号1(正社員・正職員計、正社員・正職員以外計)
厚生労働省 公的年金シミュレーター
執筆者:柘植輝
行政書士