更新日: 2024.02.20 その他年金

「いつ死ぬか分からんし!」といって、「最短」で年金を受給しようとする父。繰上げを選択する人はどれだけいるのでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

「いつ死ぬか分からんし!」といって、「最短」で年金を受給しようとする父。繰上げを選択する人はどれだけいるのでしょうか?
日本では年金制度が整えられており、一定以上の年齢になると、年金が受給できるようになります。受給開始年齢も、年金額を決定する要素の一つです。
 
なかには「いつ死ぬか分からないから」という理由で、年金の受給年齢を早めようとする人もいるでしょう。今回は、年金の繰上げ受給を選択する人の割合などについて紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

年金を繰上げ受給している人の割合

厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の繰上げ受給を選択した人は、約15万6000人でした。割合にすると、受給権者の0.6%です。国民年金の繰上げ受給を選択した人は、約174万人となっています。割合は、受給権者の27.0%でした。
 
※老齢厚生年金の繰上げは老齢基礎年金の繰上げと同時に行う必要があります。
 
ちなみに、厚生年金の繰下げ受給を選択した人は約32万2000人(受給権者の1.2%)、国民年金の繰下げ受給を選択した人は約11万8000人(受給権者の1.8%)となっています。
 
厚生年金の繰上げ受給率は、平成29年度は0.2%でしたが、毎年1ポイント程度ずつ上昇しています。一方で、国民年金の繰上げ受給率は減少傾向です。平成29〜30年度は30%を超えていましたが、令和元年度に29.5%となり、令和3年度ではさらに低下しました。
 

年金の繰上げ受給のメリットは?

年金は、原則として65歳から受給できます。しかし、繰上げ受給を選択すると、最短で60歳から受給可能です。ここでは、年金の繰上げ受給の選択によるメリットをまとめてみましょう。
 

・早めに受給を始められる

「いつ死ぬか分からないから」という理由で年金の受給を早めるのは、選択肢の一つとなるでしょう。支払い続けた保険料を早めに受給し始められる点は、繰上げ受給のメリットです。
 
仮に65〜70歳ほどで亡くなってしまうとすれば、早めに受給を開始しておく方がよいでしょう。もちろん、何歳で亡くなるのかは分からないため、実際に得をするかどうかは結果次第です。
 

・貯蓄の切り崩しを遅らせられる

老後の生活のために貯蓄をしている人は少なくありません。60代前半で、まだ働きながら年金を受給すれば、人それぞれではありますが、貯蓄の切り崩しを遅らせられるでしょう。特に、自営業者や非正規労働者で、収入が十分でなかったり不安定であったりする人にとってメリットとなりえます。
 

年金の繰上げ受給のデメリット

年金の繰上げ請求を一度すると、取り消しや修正は行えません。それ以外にも注意点がいくつかあります。ここでは、年金の繰上げ受給のデメリットをまとめます。
 

・一定の減額率が続いてしまう

年金の繰上げ受給を選択すると、本来受け取れるはずの年金から減額されます。受給開始のタイミングにより減額率は異なりますが、この減額率が一生涯適用されてしまう点には注意が必要です。亡くなる年齢によっては、受け取れる年金の総額が減ってしまいかねません。
 

・障害年金を受け取れなくなる

繰上げ受給をしたあとに障害状態になったとしても、原則、障害年金は受け取れません。
 
障害年金は、老齢年金の支給開始前、つまり65歳以前に障害を負ってしまった人(その原因となる病気などの初診日が65歳未満の人)に対する社会保障制度です。年金の繰上げ受給をすると65歳に達したとみなされるため、事後請求ができなくなります。
 

・国民年金への任意加入や保険料の追納ができない

年金の繰上げ請求後には、国民年金に任意加入ができず、追納もできなくなります。年金受給額を増やせる手段がなくなってしまう点にも注意しつつ、繰上げ受給をするかどうかを決めなければいけません。
 

老後のことを考慮したうえで繰上げ受給を決断しよう

年金の繰上げ受給を選択する人は、厚生年金では1%以下、国民年金では30%弱でした。ただ、厚生年金の繰上げ受給率が増加傾向にあるのに対して、国民年金の繰上げ受給率は減少傾向にあります。
 
年金の繰上げ受給は早くに年金が受け取れる一方で、毎月の受給額は本来よりも減ってしまう点はデメリットでしょう。メリットとデメリットを丁寧に比較したうえで、繰上げ受給を選択するかどうかを判断しなければいけません。
 

出典

厚生労働省年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

ライターさん募集