更新日: 2024.03.22 厚生年金

親が「貯金が2000万円あるから」と、60歳から年金を受給するそうです。年金額が減らないか心配なのですが大丈夫なのでしょうか? 暮らしていけるか心配です…

親が「貯金が2000万円あるから」と、60歳から年金を受給するそうです。年金額が減らないか心配なのですが大丈夫なのでしょうか? 暮らしていけるか心配です…
悠々自適な老後生活を送っている人がいる一方で、「年金だけでは生活ができない」という報道を耳にすることもあります。自分の親が高齢になったときに、年金だけで暮らしていくことができるのか不安に感じる人も多いのではないでしょうか。年金は原則65歳からの受給となりますが、60歳の定年退職後、再就職をしない場合、年金の繰上げ受給を検討する人もいるでしょう。
 
本記事では60歳から年金を繰上げ受給した場合、平均的な生活費で年金生活を送ることができるのかを検証していきます。

60歳まで繰上げ受給した年金受給額はおよそ17万円

厚生労働省が発表している令和6年度の夫婦2人の標準的な厚生年金額(老齢基礎年金を含む)は、およそ23万円です。
 
年金は通常65歳から受給開始となりますが、繰上げ受給する場合、「繰上げた月数×0.4%」だけ年金額が減額されます。したがって、平均的な年金受給額の夫婦が60歳0ヶ月から年金受給を開始すると、およそ17万5000円まで年金が減ることになります。なお、この減額率(受給額)は生涯変わりません。
 
<60歳まで繰り上げ受給したケース>
 
65歳から受給開始した場合の年金額を23万円とします。
 
減額率=0.4%×60ヶ月(5年間)=24%
 
年金額=23万円×76%≒17万5000円
 

年金受給額17万円では20年後には破産するリスクが高い

次に支出を見ていきましょう。総務省統計局が公表している2022年の家計調査年報を見ると、65歳以上で夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の支出合計は、図表1のとおり約27万円です。
 
図表1

図表1

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)
 
左側にある非消費支出とは、税金や社会保険料などを指しています。一定金額以上の年金を受給していれば、所得税や住民税を納める必要があります。また、介護保険や後期高齢者医療保険も生涯にわたって支払う必要があります。
 
仮に60歳からの年金額が17万5000円だとすると、毎月の不足額はおよそ9万5000円となり、年間では114万円が不足します。20年間では2280万円不足する計算となるので、老後の蓄えが2000万円あっても20年後には尽きてしまいます。
 

安易に繰上げ受給を選ばずにできるだけ長く働く検討を

いつまで生きられるか分からないなら、もらえるものはもらっておいたほうが良いと考える人もいるかもしれません。しかし、年金の繰上げ受給(繰下げ受給も同様)をした年金額は、生涯続くことになり、受給を開始すると変更はできません。よく検討してから決めるようにしましょう。
 
図表2は年金のベースを23万円、毎月の支出を27万円、受給開始まで貯蓄2000万円を残していると仮定した場合に、年金受給開始タイミングによって貯蓄がいつまで持つかを簡易計算した表です。
 
図表2

図表2

日本年金機構 年金の繰上げ受給 年金の繰下げ受給より筆者作成
 
図表2を見ると、65歳から年金受給を開始した場合は、100歳を超えてから貯蓄がなくなる(65歳の42年後)計算ですので、比較的安心できる結果といえそうです。年金の繰上げ受給時期が早くなるほど、貯蓄が底をつくリスクが高まっていく傾向にあるといえます。
 
したがって、働く気力・体力が続くのであればできるだけ長く働くことをおすすめします。現役世代よりも年収が落ちたとしても、安定した収入が見込めるので、年金受給開始までの期間の貯蓄の減少スピードを抑えることができます。繰下げ受給ができればさらに資金面での不安が解消されます。
 

まとめ

実際には家のリフォームが必要になったり、高齢になったために施設へ入居したりするなど、想定よりもお金が必要になることもあります。そのため、老後の生活を検討する際には、余裕をもった計画を立てるようにしたほうが良いでしょう。とくに年金受給は一度開始すれば変更ができませんので、十分検討することが重要です。
 
また、収入に見合った支出で生活することも大切です。本記事では27万円の支出でシミュレーションしましたが、繰上げ後の受給額である17万5000円に合わせて支出を減らせば不足額も小さくなり、破産リスクも減少します。将来の年金受給やライフプランを自分だけで考えることが難しい場合には、専門家に相談するとよいでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和6年度の年金額改定について
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)
 
執筆者:御手洗康之
CFP

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