更新日: 2024.04.25 厚生年金

夫より私の方が、年収が高いです。現時点在で100万円ほど違うのですが、将来受け取れる年金はどれくらい変わりますか?

夫より私の方が、年収が高いです。現時点在で100万円ほど違うのですが、将来受け取れる年金はどれくらい変わりますか?
将来受け取ることができる老齢厚生年金の額は、在職中の平均年収と在職年数により、概算することができます。今回は、年収の差に伴う老齢厚生年金額の違いについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

老齢厚生年金の仕組み

厚生年金の額は、厚生年金に加入していたときの報酬額や加入期間などを基にして計算されます(※1)。
 

1.老齢厚生年金

老齢厚生年金として受給することのできる年金は、報酬比例部分に、経過的加算および加給年金額を合算した金額になります(※1)。
 
老齢厚生年金の年金額=報酬比例部分+(経過的加算+加給年金額)
 
このうち経過的加算は、年金制度改正に伴い年金額を補正するもので、その額はわずかであることがほとんどです。
 
また、加給年金額とは、老齢厚生年金において「扶養手当」に相当する制度で、一定の要件を満たす65歳未満の配偶者、または18歳到達年度の末日までの間の子(または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)がいるときに、一定額の年金が加算されるものです。
 
従って、年収の差に伴う年金額を比較するときには、報酬比例部分のみを分析すればよいことになります。
 

2.報酬比例部分

報酬比例部分は、厚生年金に加入していたときの報酬額と加入期間などをもとに、下式により計算される額で、老齢厚生年金の主要な金額となります(※2)。
 
報酬比例部分(注)=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数
注:平成15年3月以前の加入期間に関する計算方法は異なります。
 

3.平均標準報酬額

報酬比例部分の算定に使われる「平均標準報酬額」は、在職中に徴収される厚生年金保険料の算定に用いられた「標準報酬月額」と「標準賞与額」の合計額を、厚生年金の加入期間(在職期間)の月数で割った値となります。
 
平均標準報酬額=(標準報酬月額の合計額+標準賞与額の合計額)÷加入期間の月数
 

4.平均標準報酬額を年収で置き換えると

平均標準報酬額の計算に用いられる標準報酬月額は毎月の報酬額に、標準賞与額は実際の賞与額にほぼ等しくなることから、標準報酬月額と標準賞与額の合計額は、加入期間中の年収の合計額に近い値となります。従って、平均標準報酬額は、平均年収と在職期間を用いて、次のように置き換えることができます。
 
平均標準報酬額≒(平均年収×勤続年数)÷加入期間の月数
 
さらに、報酬比例部分の計算式は、平均標準報酬額の計算式と加入期間の月数が相殺されますので、平均年収と在職年数を用いて、次のように置き換えることができます。
 
報酬比例部分≒(平均年収×在職年数)×0.005481
 

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年収が100万円違うと、年金額はどのくらい変わるのか

年収の差100万円は、老齢厚生年金(報酬比例部分)の額に下式のとおり反映されます。
 
報酬比例部分≒(100万円×在職年数)×0.005481=在職年数×5481円
 
従って、年収が終始100万円違うと、下表のとおり在職年数に応じた年金額の違いが生じることになります。
 
図表

在職年数 1年 10年 20年 40年
年金額の差 5481円 5万4810円 10万9620円 21万9240円

(筆者作成)
 

年収が100万円違っても、年金額が同じ場合とは

老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算に用いられる、標準報酬月額と標準賞与額には、それぞれ上限が設定されています(※3)。
 
標準報酬月額の上限は65万円で、報酬月額が63万5000円(令和2年9月以前の上限額は異なります)を超える方が該当します。また、標準賞与額の上限は1月当たり150万円となっており、年3回までの賞与が該当します。
 
標準報酬月額と標準賞与額の上限以上の収入がある方の場合、報酬や賞与のうち上記の額以上となる部分は、老齢厚生年金に反映されません。
 
従って、年収に100万円の差があったとしても、上記の上限以上の収入がある場合は、年収がいくら違っても厚生年金額は同じとなります。
 

まとめ

老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、平均年収と在職年数によって、概算することができます。年収が100万円違うと、それに伴う年金額の差は、10年在職した場合に5万4810円、40年在職した場合に21万9240円となります。
 
年収を少しでも多く、在職年数を少しでも長くすることで、老齢厚生年金(報酬比例部分)の額を増やすことができます。
 

出典

(※1)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※2)日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
(※3)厚生労働省 標準報酬月額の上限
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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