再就職しました。在職老齢年金の「50万円基準」は知っているのですが、実際にカットされるのは何月分の年金ですか? (3)
配信日: 2024.06.14
しかし、実際のところ、前職を退職してすぐに再就職するケースもあり、その場合は前回までのルールとは若干異なります。今回は、「退職して間隔を空けずに再就職した場合はどの月が在職老齢年金の対象になるか」について取り上げます。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
退職してすぐ再就職すると
就職して厚生年金の被保険者となった月の翌月分から在職老齢年金の対象になることは1回目で、退職した月の翌月分からはその対象にならないことは2回目でそれぞれ取り上げたとおりです。しかし、一度退職してその直後に再就職した場合は、再就職した月、つまり再び厚生年金の被保険者になった月についても対象になります。
5月31日に退職して、翌6月1日に再就職して厚生年金に再び加入すると、まず、前月(4月)から引き続いて厚生年金被保険者であったことから5月分は在職老齢年金の対象です。
そして、5月分だけでなく、再就職した月(厚生年金に再加入した月)である6月分についても同様の理由から在職老齢年金制度の対象となり、支給停止基準額(2024年度:50万円)を超えると停止されます(【図表1】)。再就職した月も対象となることから、数ヶ月の厚生年金未加入期間を経て再就職した場合とここが異なっています。
また、5月31日に退職して、再就職(厚生年金再加入)が6月16日など6月の途中になったとしても、同様に6月分は在職老齢年金の対象となります(【図表2】)。
こちらは、6月1日から6月15日までの半月間は在職していないものの、5月31日の退職による厚生年金被保険者資格喪失(退職日の翌日に喪失)から1ヶ月経過する前の6月16日に再び当該被保険者となったことがその理由となっています。この場合は、5月の標準報酬月額を用いて、6月分の在職老齢年金の計算を行います。
なお、月の途中に再就職してもその月は厚生年金の被保険者期間1ヶ月分として計算されますので、【図表2】の場合、6月分の厚生年金保険料は発生します。
前職から1ヶ月も開けずに再就職する場合は、退職前後の月について、50万円基準を超えて停止額が発生するか、超える場合は停止額がいくらになるかを確認しておきましょう。
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少なくとも当分は続く在職老齢年金制度
在職老齢年金制度は、高齢期の就労意欲をそぐことを理由に、将来的に廃止・見直しがされる可能性があります。ただし、法改正が実現したとしても、それはまだ数年先のことになると考えられ、同制度は少なくとも当分は続くことになるでしょう。
年金を受けられるようになってからも引き続き働くことも多いかと考えられますが、その場合は在職老齢年金制度についても把握しておきましょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー