更新日: 2024.07.10 厚生年金

65歳まで働く予定でしたが退職を2年早めました。年金を早く受け取りたいのですが、基礎年金と厚生年金を別々に繰下げできますか?

65歳まで働く予定でしたが退職を2年早めました。年金を早く受け取りたいのですが、基礎年金と厚生年金を別々に繰下げできますか?
人生には想定外のことがおこります。老後資金の計画をしていても、途中で計画が違ってくることも。そんな時、軌道修正は迅速に行うことが肝要です。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

老後は長期計画、予定変更もスムーズに

65歳まで働く予定だったAさんですが、諸事情から63歳で退職することになりました。夫婦で100歳まで生きることを目指して老後の資金計画をたててきましたが、ここに来て予定が違ってきました。そこで、年金受給の繰下げを検討しているとのことです。
 
Aさんは本来ならあと2年間働いて、その間は厚生年金に加入する前提で計画を立てていました。2年間退職を早めたことで、予定していた年金受給額は減ってしまいます。そこで年金を繰下げ受給することで、金額を調整しようと考えているとのことでした。
 
話を聞いて、2つのアドバイスをさせていただきました。
 
<アドバイス1> 国民年金の任意加入
 
国民年金に加入するのは20歳から60歳までですが、学生時代は支払いを猶予されて払っていない期間があることが多いです。その間の不足分を退職されてから65歳までの間に任意加入ができます。あくまで任意なので必須ではありませんが、将来受け取る基礎年金部分を満額に近づけることができます。このままだと20~60歳まで480ヶ月加入して満額のところ、おそらく2~3年分は欠けています。
 
国民年金を払っている期間はiDeCoに加入することもできます。またiDeCoではなく、月額400円の付加保険料を払うこともできます。こちらは、例えば18ヶ月払うと、200円×18ヶ月=3600円 年金の受取金額を年額3600円増やすことができます。このような方法で受取額を増やしておくと、生涯に渡り恩恵を受けることができます。
 

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時にはライフプランを微修正することも大事

公的年金は受給時期を繰下げることで、受給額を増やすことができます。この制度はねんきん定期便などでも案内されていますので、ご存じの方も多いはずです。Aさんも1年の繰下げを検討されています。繰下げによる受給額の増加率は下図のとおりです。
 
(図表)

図表

*昭和27年4月1日以前生まれの人は、繰下げの上限年齢が70歳までとなります。
 
このように、受給時期を繰下げることで得られる効果は大きいと考えられます。65歳以降も何らかの形で働く方が増えています。また長寿社会を考えると、今後繰下げ制度を利用する人は増えるのではないでしょうか。
 
<アドバイス2> 老齢基礎年金だけを繰下げる
 
繰下げ受給にはいくつか注意点がありますが、その1つが加給年金額や振替加算額は増額の対象にならないことです。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません。
 
Aさんには3歳年下の妻がいて、加給年金の受給要件を満たしています。加給年金額は令和6年4月時点で年額40万8100円です。厚生老齢年金を繰下げると、この金額を受給できなくなることは、金額が大きいだけに残念です。
 
そこで老齢基礎年金と老齢厚生年金は、それぞれに繰下げ時期を選択できます。老齢基礎年金だけを繰下げて、老齢厚生年金は65歳から受給するというのも一案です。実はFP仲間にも、この方法をとっている人はいます。
 
Aさんは63歳で、年金受給までにはまだ時間があります。「年金の任意加入をすることで、会社を辞めてもiDeCoができる」と、前向きな返事をもらいました。まずはハローワークに行くそうですので、再就職の可能性も大きいと思います。今後の働き方で、将来のライフプランおよびキャッシュプランは、またまた想定外の方向に進むかもしれません。その時々に軌道修正することで、将来はより明るくなるように感じました。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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