年金を「繰下げ受給」するために待機中の69歳です。気が変わったので繰り下げをやめたいのですが、今からでも取り下げできませんか?

配信日: 2025.01.22

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年金を「繰下げ受給」するために待機中の69歳です。気が変わったので繰り下げをやめたいのですが、今からでも取り下げできませんか?
年金の受給を65歳以降に繰り下げて受給額を増やす選択をしたものの、いざ70歳に近づくと「このまま繰り下げるべきか」それとも「今からでも取り下げて、受給を開始すべきか」と迷う方も多いでしょう。
 
この記事では、70歳まで繰下げ受給を予定している方が、今からその選択を取り下げて年金受給を開始できるかどうか、解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の繰下げ受給とは?

日本では原則として、65歳から年金を受け取ることができます。一方で、受給開始の時期を65歳以降に遅らせることもできます。これが「年金の繰下げ受給」です。
 
年金の繰り下げは1ヶ月単位で行うことができ、1ヶ月繰り下げるごとに年金の受給額が0.7%ずつ増えます。例えば、65歳時点で月換算10万円の年金を受け取れる方が、70歳まで受給開始時期を繰り下げると、年金額は65歳時点と比べて42%増額され、月換算では14万2000円になります。
 
今回の相談者のように、将来受け取る年金額を増やすために、繰下げ受給を選択する方も多いでしょう。しかしこの選択が最適であるかどうかは、健康状態や生活費の必要性など個々の状況によります。
 
なぜなら、健康状態の悪化や病気・事故など予測できない事態に陥り、早期に亡くなった場合には、受け取れるはずだった年金が結果的に減ってしまうリスクがあるからです。
 
例えば、65歳から毎月10万円の年金を受け取っている方が80歳まで生きた場合、総額1800万円の年金を受け取れます。しかし、これを繰り下げて70歳から受け取っていた場合は約1700万円と、総受取額が100万円近く小さくなります。
 
このような状況から、「より早く年金を受け取りたい」と考え直す人も少なくありません。
 

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年金の繰下げ受給を今から取り下げるには

年金を繰り下げている期間中でも、本人が希望すれば、その時点で年金の受給をスタートすることができます。具体的には、最寄りの年金事務所へ「年金請求書」を提出することで、手続きを進めることができます。この際、添付書類となるマイナンバーが分かるものや本人確認書類も併せて用意し、提出します。
 
今回の事例では69歳時点で繰下げ受給の取り下げを検討されているようですが、請求手続きが完了すると、申請した翌月から65歳にさかのぼった年金額の受給が開始されます。
 
例えば年金月額10万円の方が69歳時点で繰下げ受給を取り下げると、その際には本来の額のとおり月額10万円を受給することとなり、加えて65歳から69歳までの経過分も一括で受け取れるというわけです。
 
なお、厚生労働省によると、「申出時点から5年以上前の月分の老齢年金については、老齢年金の支給を受ける権利が時効消滅」するため、70歳以上で繰下げ受給を取り下げる場合は注意しましょう。
 
また、一度年金を受け取ってしまった後(繰下げ受給により、増額された年金を受け取った後)は繰下げ受給を取り消せなくなる点にも注意が必要です。
 

繰下げ受給取り消し前の注意点

繰下げ受給を取り消す前には、十分な注意と検討が必要です。繰下げ受給を取り消して、さかのぼった額で受給を開始してしまうと「やっぱり繰り下げを……」と後から変更することはできなくなります。
 
70歳まで繰り下げることを予定していた方の場合、それなりに、42%という年金増加額を想定した人生設計を行っていることが考えられます。安易に取り下げると、当初の人生設計が大きく変わることにもなりかねません。
 

まとめ

年金を繰下げ受給するために待機していても、実際に受給が開始されていなければ、それを取り消し、さかのぼって年金受給を開始することが可能です。
 
しかし、70歳までの繰下げ受給を取り消すということは、年金支給額が最大42%減額されることと同義です。
 
安易な選択は後悔の素です。繰下げ受給するにせよ取り下げするにせよ、70歳という年齢を加味すると、今後を踏まえて十分に検討し、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家へ相談して決定することをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 年金制度の仕組みと考え方 第11 老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給(6ページ)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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