【FP解説】障害年金5つの誤解 「障害年金を併せて受給する…?」
配信日: 2019.04.18 更新日: 2020.09.07
今回は、「障害年金を併せて受給する…?」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
65歳前は、老齢年金と障害年金を両方もらうことはできない
よくあるのが、こんなケースです。
Aさんは1957年生まれの女性。今年、62歳になります。
60歳から老齢厚生年金の報酬比例部分を受給しています。最近、持病が重症化したので障害年金も受給しようと、初診日を証明する「受診状況等証明書」などの必要書類を集め始めました。
ところが、それを知った友人から「老齢年金と障害年金を両方もらうのは無理よ」と言われ、びっくり。年金事務所に問い合わせたところ、友人の言うとおりでした。
Aさんはがっかりです。
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障害者特例という制度もある
老齢年金をもらい続けたうえで、さらに障害年金も受給できたら、助かりますよね。
しかし、65歳以前の年金の受給には「1人1年金」という原則があります。老齢年金と障害年金の両方の受給権があっても、どちらかを選択して受給しなければならないのです。
遺族年金と障害年金についても同様です。ただし、65歳以上になれば、2つの年金を部分的に組み合わせて受給できるようになります。
また、老齢厚生年金の受給権がある方で、障害年金の3級以上に該当するような障害がある場合は、「被保険者でないこと」などの条件はありますが、65歳以前でも障害者特例という加算の付いた老齢厚生年金を受給することができます。
ですから、Aさんが障害年金を請求してみる価値は十分にあります。障害年金を請求するときに障害者特例の請求も同時に行うのが、診断書代の節約につながる賢いやり方です。
請求前に「併給調整」を知っておこう
このように、他の年金や他の制度との間で調整が行われることを「併給調整」と言います。
障害年金の請求を検討するときには、前もって「併給調整」について理解しておくことが大切です。そうしないと、とんだ当て外れとなったり、場合によっては、徒労に終わる場合もあります。
注意しなければならないものをいくつか紹介します。
傷病手当金や児童扶養手当をすでに受給している人はご注意
【併給調整があるもの】
▽傷病手当金と障害厚生年金 = 傷病手当金は健康保険から支給されます。併給調整があるのは、同一傷病での支給の場合です。
障害厚生年金の支給が優先され、傷病手当金の1日分のほうが障害厚生年金の額の「360分の1」より多い場合は、その差額分の傷病手当金が併給されます。
▽労災給付と障害厚生年金 = 職務上での事故や病気で障害になった場合です。
労災給付の一部が減額されます。よく似た制度ですが、労働基準法の規定による障害補償の場合は、障害厚生年金の支給が6年間停止されます。
▽児童扶養手当と障害年金 = 児童扶養手当は、一人親世帯などを対象としたものです。
障害年金が受給できるようになると、児童扶養手当が減額または停止されます。よく似た名称ですが、特別児童扶養手当は併給調整の対象外です。
▽生活保護と障害年金 = 障害年金がもらえるようになると、給付額が収入として認定されるので、保護費が減額されます。
ただし、障害等級が2級以上の場合は、「障害者加算」という上乗せがあります。
失業給付と障害年金は併給が可能
【併給調整がないもの】
▽失業給付と障害年金 = 失業給付は雇用保険から支給されます。
障害があっても、働く意欲や能力があれば失業給付を受給することができます。ただし、求職活動をすることが必要です。
これらのほかにも、障害年金と併給調整があるものはたくさんあります。その仕組みや関係は複雑で、しかも年々、変更されています。
すでに受給している年金や手当などがある場合は、それらを支給している役所や年金事務所などにお問い合わせください。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士