更新日: 2019.08.05 厚生年金
知らないと損!?損しない為の在職老齢年金の仕組みについて
定年退職後に、仕事を続けながら受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」と言います。在職老齢年金は、稼ぎすぎてしまうとその額を減らされてしまうなどと聞いたことはないでしょうか?
今回は、再雇用制度の拡充によってぐっと身近になったものの、仕組みがイマイチ分からない方も多い在職老齢年金について説明をさせていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
在職老齢年金の概要
在職老齢年金は、60歳以降、在職(厚生年金保険に加入)しながら受ける老齢厚生年金のことを言います。在職老齢年金は収入が一定額を超えると、支給金額が調整されることがあります。もっとも、勤務していれば必ずしも支給調整の対象となるわけではありません。
個人事業主として契約している場合や、一定の勤務時間未満のパート・アルバイトである場合などは、厚生年金保険の被保険者とはならないため除外されます。また、70歳に達して厚生年金の被保険者ではなくなった場合も、支給調整の対象になってしまうので注意が必要です。
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支給調整の仕組みについて
在職老齢年金の、支給調整のトリガーとなる収入額は、65歳未満か否かによって大きく異なります。
支給調整の計算では、「基本月額」「総報酬月額相当額」「標準報酬月額」「標準賞与額」の4つが重要になります。在職老齢年金の仕組みを理解するうえで、これらを欠かすことはできません。まず、この4つについて簡単に説明させていただきます。
(1)基本月額
65歳未満の場合は、加給年金を除く特別支給の老齢厚生年金の金額×1/12
65歳以上の場合は、加給年金を除く老齢厚生年金(報酬比例部分)の金額×1/12
(2)総報酬相当額
その月の標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の合計×1/12
(3)標準報酬月額
給与などの報酬(基本給のほか、家族手当・通勤手当・住宅手当などの各種手当も含む)を 8万8000円~62万円で31等級に区分したもの
また、年4回以上支給される賞与(ボーナス)に関しても標準報酬月額に含まれます
(4)標準賞与額
労働の対価として受けるすべてのもののうち、3ヶ月を超える期間ごとに受けるもののことであり、その月に支払われた賞与額の1000円未満を切り捨てたもの
65歳未満の場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えるか否かが、支給停止の最初の判断基準になります。
この金額以下であれば支給調整は生じませんが、超えてしまった場合は、超えた金額の1/2に相当する厚生年金が支給停止されます。また、このとき総報酬相当額が47万円を超えた場合や、基本月額が28万円を超えた場合は、支給停止の金額の計算式が異なってきます。
65歳以上の場合は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超える場合、超えた金額の1/2が支給停止されることになります。
まとめ ~高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の関係~
再雇用の義務化に伴い、定年退職後も年金支給を受けながら働くということが、以前よりも身近になりつつあります。体が動く限りは働きたい、と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、あまり多くの報酬を得てしまうと、在職老齢年金の支給額を減らされてしまうといったデメリットがあります。
再雇用によって賃金が75%未満にまで減少した場合に、賃金額の最大15%が支給される高年齢雇用継続給付という制度も存在します。しかし、この給付金を受けながら働く場合は、賃金の低下率によって、さらに標準報酬月額の最大6%に相当する金額が支給停止されてしまいます。
労働による収入と年金の支給を両立させるには、少々コツが必要です。支給停止となる場合はその金額を見極め、老後の資金計画にズレが生じないようにしましょう。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表