【障害年金の疑問】友達から「社会的治癒で初診日が変わる!」と言われたけど、本当?

配信日: 2019.08.17 更新日: 2020.09.07

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【障害年金の疑問】友達から「社会的治癒で初診日が変わる!」と言われたけど、本当?
障害年金の請求を決めたものの、とっかかりとなる初診日の証明などで困っている場合に役立つ「初診日問題解決法シリーズ」。第4回は「社会的治癒で初診日が変わる!」です。
 
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「社会的治癒」、語感からして難しそうだが……

「社会的治癒」なんて、語感からして難しそうですね。でも、実際はそれほど難しい考え方ではありません。具体例で説明しましょう。
 
Aさんは、大学生だった22歳のときに就職に悩んで体調をこわし、うつ病と診断されました。治療が適切だったのか、1年後には回復、就職できました。それから5年間ほどは、再発防止の薬を飲みながらも普通の生活を送れていました。
 
ところが、1年半ほど前に職場内の人間関係のトラブルから、再び、うつ病を発症。症状が重いので退職し、障害年金を請求することにしました。Aさんのうつ病の初診日は、いつと考えればよいのでしょうか?
 

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「医学的治癒」とは別の考え方

こういうケースで医師に尋ねると、おそらく「22歳のとき」と教えてくれると思います。22歳のときにかかったうつ病が、完治していなかったとみるわけですね。「医学的治癒」はなかった、という意味です。
 
これに対して、就職後の5年間ほどは普通の生活が送れていたのだから、病気はいったん治ったとみて、1年半ほど前の再発のときを初診日としてもよいのではないか。それが「社会的治癒」という考え方なのです。社会保障制度の中で認められた考え方です。
 

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「一般的な社会生活を送ることができた」などの条件がある

ただし、次のような条件があります。
 
・就労、学業、家事などで一般的な社会生活を送ることができた。
・その期間は一定の年数だった。(この年数について、過去の裁決例ではさまざまですが、精神障害の場合で5年以上というのが一般的です。)

 
なお、その期間中に「通院や服薬がないこと」といった条件はありません。Aさんの事例で言えば、再発防止の薬を飲んでいてもかまわないということです。
 

一度はあきらめた人も、再挑戦が可能に

この「社会的治癒」の考え方を活用すると、納付要件が満たせないために一度は障害年金の裁定請求をあきらめた人も、再挑戦が可能になります。
 
Aさんの場合だとどうなるでしょうか? 22歳のときには、学生なので国民年金の納付要件が満たせていないかもしれません。しかし、再発のときは就業中なので、厚生年金保険に入っている可能性があります。
 
それならば、納付要件も満たしていることでしょう。また、厚生年金保険なら、障害等級が3級まで設けられているし、2級以上に認定された場合は報酬比例部分の支給もあるので、国民年金よりもずいぶん有利です。
 

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知恵を絞って、有力な資料を集めよう

「社会的治癒」の考え方を活用する方法ですが、普通の生活を送れていたことを主張するのですから、かなりの準備が必要です。
 
再発防止の薬をもらっていたときの医師の診断書だけでなく、例えば、しっかり就労できていたことを示す給与明細や昇格辞令の写し、勤務先の上司や同僚、社外の友人らの証言、あるいは、趣味のサークルでの活動を示す写真などが資料になります。
 
知恵を絞って、有力な資料を集めてみましょう。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
 

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