執筆者: 澤邉大樹
薬剤師の夜勤のある職場
夜勤のある職場は、主として入院患者のいる大病院と24時間営業のドラッグストアです。それぞれの仕事内容について解説します。
入院患者のいる大病院
救急医療に対応している場合は特に夜勤が多く、また1次救急、2次救急、3次救急と段階によって夜勤の薬剤師の負担が異なります。一方、入院患者が多い大病院でも慢性期の患者を中心にしており、救急を受け入れていなければ薬剤師が夜勤で働く必要がない病院もありますから、病院のベッド数だけでは判断ができません。
ところで夜間に病院に滞在し働く制度には、夜勤の他に当直という制度があります。夜勤は夕方出勤し翌朝まで働きますが、当直は朝出勤してそのまま夜間も病院に泊まり昼までの拘束時間が長い制度です。それぞれの違いを説明します。
労働基準法では当直の場合は、ほとんど仕事をする必要はなく夜勤手当の対象ではないと決められています。労働時間にも含まれず、週40時間の規制には適用されません。宿日直手当の場合は基本賃金の1/3 以上、睡眠時間を十分に取れる設備が必要です。もし、何らかのトラブルが起きて急きょ仕事をする必要があれば、時間外手当を請求できます。
つまり当直というのは実質通常の業務をしないことが前提となっているため、夜間手当が付かないのです。
一方夜勤の場合は、夜間も本来の業務をすることが義務付けられており、労働時間も日勤と合わせて週40時間以内にしなくてはいけません。原則22時から翌朝の5時までの間に労働をした場合は、25%以上上乗せした賃金を支払うことが労働基準法第37条で決められています。
さらに労働時間が月60時間を超えると、50%以上をプラスした支払いを受ける権利があります。
24時間運営のドラッグストア
薬剤師として夜勤をする必要のある職場には、24時間運営のドラッグストアがあります。24時間運営のドラッグストアは都市の中心に点在しており、薬剤師の需要が多い傾向です。
夜間は勤務者が少ないため、薬剤師も接客やレジ打ちなどの業務を行う必要があります。日中に比べると薬剤師としての仕事より、店員としての仕事が多く接客が不得手な人には少々負担が多いかもしれません。
しかし病院勤務の場合と同様に賃金の上乗せがあるためドラッグストアでの夜勤を希望する薬剤師も存在します。
夜勤のためのスキル
夜勤が必要な病院は救急患者を受ける場合が多いため、かなり高いスキルを必要とします。
まず薬についての高度な知識が必要です。夜勤での仕事は少人数での対応となるため相談する相手がいない場合も考えられます。大きな救急病院なら2〜3人体制の場合が増えてきましたが、病院の規模によっては1人で判断しなくてはいけません。
大病院よりさらに経験を必要とします。特に救急患者の対応には迅速な判断をしなくてはいけません。それには知識だけではなく、十分な経験に裏打ちされたスキルが必要です。
また医師や看護師と協力していかなくてはならないため、コミュニケーション能力も必要ですが、夜勤を続けていくうちにだんだんと成長していくことでしょう。夜勤のためのスキルは必要ですが、同時に少しずつ学んでいくことでスキルアップしていくことも可能です。
夜勤のメリット
夜勤を務めるためには1人でも決断できるだけのスキルが必要です。また少人数で仕事をすることでスキルアップにもつながるでしょう。しかし夜勤のメリットはそれだけではありません。
やはり最大の魅力は夜勤手当でしょう。前述したように労働基準法で22時から翌朝5時までは25%増し、休日の夜勤ならばさらに35%が上乗せになります。夜勤の場合は時給3000円として計算すると一回の夜勤で約6000円以上の割り増しです。
夜勤で働きたいという薬剤師が少ないために、夜勤をする場合に給料を高く設定している病院もあります。募集を見ると夜勤は月に1〜4回ですが、中には夜勤専門での募集もあります。ご自身の体調などを考えて選ぶと良いでしょう。
昼間にしかできないこと、例えば市役所に行く用事など普段できない用事がこなせることがメリットです。また習い事をしたい場合は夜勤をする曜日を決めて通えます。スキルアップしたい方におすすめです。その他、人気の美術展など土日や夕方以降に混む場所も平日の日中ならすいていることが多く、利用しやすいのもメリットになると思われます。
夜勤ならば朝や帰宅時間のラッシュアワーを避けることができ、通勤がラクです。都心で働いている場合は特に、通常の生活ではラッシュアワーはかなり負担になっているケースがあります。通勤で疲れていた人には、大きなメリットになるかと思われます。
夜勤のデメリット
夜勤で働くことは魅力的ですが、夜勤のデメリットも考えて仕事を始める必要があります。
夜勤で配置される薬剤師の人数は、ほとんどの場合最少に抑えられています。薬剤師が1人だけという状況もあり、難しい状況であっても1人で解決しなくてはいけません。日勤の場合とは異なり、責任が重く高度なスキルが必要です。そのため、緊張する場面が多くストレスの原因にもなります。
またドラッグストアの場合も薬剤師の数は限られており、夜間は薬剤師の仕事よりも店員としての仕事が多く忙しく働く必要があります。
夜勤がどのくらいの頻度で入るかにもよりますが、生活リズムが崩れてしまい体調管理が難しくなります。また昼間に比べると薬剤師の数が少なく、場合によっては1人ですべてを決定しないといけないため、ストレスが大きいことから体調を崩すケースも多いです。
夜勤後になかなか疲れが取れず、常に疲れを感じるという人も一定数います。仕事に就く前に、夜勤の頻度や夜勤の状況(何人の薬剤師がいるのかなど)を確認しておきましょう。
夜型の人なら夜勤専門にした方が生活のリズムを取りやすいという意見もあります。ご自身に合う勤務時間帯を選んでください。
夜勤のない職場を選ぶには
夜勤をしたくない薬剤師も多いのではないでしょうか。自宅に小さいお子さんがいる方や体力に自信がない、または朝型で夜はつらいという方です。夜勤のない職場は主に次の通りです。
●24時間営業ではないドラッグストア
●製薬会社
●SMO(治験施設支援機関)
SMOは、治験業務をサポートする民間企業です。SMOや大学病院などに所属してCRC(治験コーディネーター)として働くと、被験者が通院できる時間帯のみの勤務となるため、基本的に夜勤がありません。
夜勤のない職場を希望する場合は、転職紹介サイトで「夜勤なし」を入力して検索をかけると夜勤のない薬剤師の職場を見つけられます。
しかし薬剤師のかかりつけ制度やオンラインでの服薬指導が可能になったことから、24時間体制で働く必要がある職場が増えています。職場に行く必要はありませんが、自宅での作業が必要です。夜間に勤務をしたくない場合は、夜勤の有無だけではなく仕事内容をきちんと確認することが必要です。
薬剤師の夜勤はスキルアップのチャンス
薬剤師の夜勤はかなりハードです。しかし、手当が25%プラスになる他にも、昼間の時間を自由に使える、習い事やスキルアップのための講座に通えるなどのメリットがあります。また少人数体制での仕事のため、責任が重く、経験も積むことができます。
一般的な病院では夜勤は最大月4回ですが、夜勤専門薬剤師として働くケースもあります。一生夜勤で働くことは難しいですが、短期間でのスキルアップ等、何らかの目標のために夜勤専門を選んでも良いかもしれません。夜勤の経験があるとスキルの高さを買われて、転職がスムーズになる可能性がアップします。じっくり将来を見据えて、どのように働くかを決断してください。
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