薬剤師が企業に転職するために必要な豆知識と対策 |ファイナンシャルフィールド

薬剤師が企業に転職するために必要な豆知識と対策

横島孝之

執筆者: 横島孝之

人事マネージャー、2級FP技能士、キャリアコンサルタント
2児のパパ。   電機メーカーの人事として20年経過。研究~開発~営業と幅広いユニットの人事を担当し、多くの従業員のキャリアアドバイスを行ってきました。   座右の銘は「温故知新」   近年は、VUCA時代に突入し、デジタル化やAIの浸透等環境も大きく変わりつつあり、「キャリア」も会社中心の検討から、個人(価値観やライフプラン)を中心とした検討に変化する中、一人ひとりが大切にしている価値観やライフプランも認識した上でキャリアアドバイスすることを信条に活動しています。
「病院で勤務していたけれど、結婚するから調剤薬局で働きたい」「総合病院で働いていたけれど、研究職に就きたい」「とにかく今の職場から変わりたい」などさまざまな思いがあって、転職を志すことでしょう。

薬剤師は人手不足という問題もあり、比較的転職をしやすい業種であると言われています。しかし、薬剤師でも、働く職場によって業務内容が全く異なります。後々、後悔しないためにも自分のキャリアや適性を考えたうえで、希望の職種についてしっかりとリサーチをすることが大切です。

今回は薬剤師が企業に転職するうえで必要とされる知識とその対策について、解説していきます。ぜひ参考にしてくださいね。

企業薬剤師の職種と業務内容について

まず、企業に勤める薬剤師はいくつかの業種に分類されます。どんなに現在の職種で高いスキルを持っていても、業種が変わると全く異なるスキルが求められたり、今までのスキルが通用しなかったりします。中には薬剤師の資格が必要ないことも。それほど業種ごとに業務内容が異なることを理解しておく必要があります。順に解説していきます。


管理薬剤師

管理薬剤師とは、薬機法に基づいて、薬局、店舗、製薬企業などにおいて、各拠点に設置することが義務付けられている薬剤師のことです。立場的には、薬剤師としての調剤や服薬指導も行う傍ら、それと並行して医薬品の管理や従業員の監督・指導をすることになります。

そのほか、医薬品を適正に使用するための情報提供、副作用情報などの収集や報告なども課せられています。

また、適正に医薬品の管理を行うわけですから、薬機法以外にも医薬品医療機器等法や薬剤師法などの法律に関する知識も求められます。薬剤師資格以外の特別な資格は求められませんが、「実務経験3年以上」という条件がある場合が多いです。


開発職

企業の開発職とは、それぞれの疾患領域に関する医療用医薬品や化粧品・健康食品などの研究開発を行うことです。製品開発では顧客のニーズに合った商品や技術を的確に把握して、開発することが求められます。

具体的には臨床試験を行いながらデータを集め、その有効性や安全性を分析することによって医薬品などを製造していきます。開発職には薬剤師の資格を持たない、理学部・農学部・医学部などの出身者もいるため、薬剤師の資格は必須ではない場合も多いですが、明らかに差別化にはなります。


臨床研究コーディネーター(CRC)

臨床研究コーディネーターとは、医療機関で医師の指示に基づいて、患者に治験の内容を説明したり、不安を軽減させるためのサポートをしたりする存在です。

医学的診断を伴わないサポートやケア、服薬指導、チーム内の調整などが主な業務となります。治験コーディネーターと呼ばれることもあります。英語で「Clinical Research Coordinator」という名称であることから、略称CRCで表記されます。


研究職

企業の研究職とは、医薬品や健康食品などの有効性を検証し、研究するための業務に携わることです。主に、病気が治癒していくメカニズムに関する基礎研究、非臨床データを収集するための動物実験、薬を製造するための技術研究、新薬の開発に関する創薬研究や薬理研究などを行います。

ただし、博士課程を修了していることを条件に掲げられている場合が多いので、修士レベルでは難しいと考えてよいでしょう。非常にハイレベルかつ狭き門です。


MR(製薬会社の営業職)

MRとはMedical Representativeの略称。日本語では「医薬情報担当者」の意味です。自社の医薬品に関する情報を医師や薬剤師などの医療従事者に伝えたり、医療従事者から必要な情報を受けたりすることが主な業務です。

MRには薬剤師の資格を持つものは一部で、文系出身者も多いです。そのような中で薬学の知識を持っているのは大きな差別化となり、強みになるでしょう。


企業内診療所の薬剤師

企業内診療所とは、企業に働く人々の健康を守ることを目的としています。企業内薬剤師の主な業務は調剤、従業員の健康管理、服薬指導などの薬剤管理です。一般的に、企業内に診療所を設置できる企業はそれなりに経費がかかりますから、一部上場企業と考えてよいでしょう。

勤務時間は会社の就業時間内なので、よほどのことがない限り残業も少なく、年末年始など長期休暇も取りやすいのがメリットです。ただし、求人数が非常に少ないため、競争率が高いです。



企業薬剤師に転職するメリット

企業側も未来に向けて優秀な人材を求めているため、最近では大企業でもキャリア採用を実施していることが結構あります。薬剤師の中でも企業で働きたいと考える人は多く、大企業はもちろんのこと、中小企業も転職先として人気があります。薬剤師が企業で働くうえでのメリットについて、順に解説していきます。



土日休みの企業が多い

病院勤務の薬剤師の場合、交代勤務で土日の出勤が条件となっています。それに引き換え、製薬会社などは週休二日制の会社がほとんどです。なお、業務上の研修会や学会などは土日に開催されることが多いので、そのような理由での出金はありうるということは理解しておく必要があります。



福利厚生が充実している

福利厚生は大きく「法定福利厚生」「法定外福利厚生」に分類できます。一般的に、求人情報に記載されている福利厚生とは「法定福利厚生」に相当します。

具体的には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金など。一方、法定外福利厚生とは通勤手当、住宅手当、育児・介護支援関連、財産形成関連などです。企業の薬剤師として勤務する場合、こうした福利厚生が充実している企業が多い点がメリットです。



高収入を期待できる

企業薬剤師はキャリアにもよりますが、一般的な転職と比べても高収入が期待できます。特に、研究職や開発職などは修士課程や博士課程を卒業していることを条件として挙げられている場合があり、専門的な知識が求められる分、高収入です。



薬剤師が企業へ転職する際に注意すること

実際に、薬剤師が企業に転職するためには、注意しておきたいことがいくつかあります。順に解説していきます。



求人数が少ない
調剤薬局などの薬剤師に比べて、企業薬剤師はそもそも求人数が少ないという現状があります。そのため,業種によっては採用条件のハードルがかなり高いこともあります。気を引き締めて、臨むようにしましょう。


求人広告を出さない場合もある
転職者用の求人サイトに求人広告を出さない企業も数多くあります。特に、人気のある大企業だと求人広告を出せば、応募者が殺到してしまいかねません。的確に必要な人材を確保するために、紹介でしか試験を受けられなかったり、ホームページ内でしか募集していなかったりすることもあります。

少しでもチャンスを生かすために、企業のホームページ内の採用情報から「キャリア採用」を確認するようにしましょう。そのホームページを経由して問い合わせができるようになっていますので、希望する方はまめにチェックすることをおすすめします。


企業研究を行い、志望動機を明確にする
企業によって特色や求める人材が異なります。そのため、希望する転職先企業について社風をはじめ業績、歴史、経営方針、取り組んでいる計画などを研究しておくことが重要です。そして、自分自身のこれまでの職歴や今後仕事を通じて実現していきたいことを整理してみてください。それらを志望動機に踏まえて、明確にしていきましょう。


企業薬剤師への転職を成功させるために必要なこと

今回は薬剤師が企業への転職を成功させるために必要なコツを解説してきました。薬剤師というと、調剤や服薬指導をイメージしますが、実際に企業薬剤師にはさまざまな業種があることを理解できたことと思います。

企業薬剤師は一般の転職とは異なるため、事前にしっかりとリサーチをしたうえで、転職活動に取り組むようにしましょう。


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