薬剤師の定年は何歳?定年後の再就職は? |ファイナンシャルフィールド

薬剤師の定年は何歳?定年後の再就職は?

澤邉大樹

執筆者: 澤邉大樹

キャリアコンサルタント、社会調査士
親しみやすく安心してご自身のことを話すことができるキャリアコンサルタント。   IT企業勤務を経て独立。『キャリアとはひとりひとりが主役の物語』をモットーに、キャリアをテーマにした講座の企画運営やコラムの執筆、キャリアコンサルティング等を展開している。
これまで、企業で働く人の定年は60歳というのが常識でした。しかし、2013年に改正された高年齢者雇用安定法により、現在では定年年齢が65歳まで段階的に引き上げられつつあります。そして2020年の2月にはさらなる改正がなされ、その内容は企業に対して70歳までの雇用確保の努力義務を盛り込んだものとなっています。

このように一般企業の定年年齢が引き上げられる中、薬剤師という資格を持って働く人の定年はどのようになっているのでしょうか。薬剤師の定年と、その後の再就職について詳しく説明していきます。

薬剤師の定年は何歳?

薬剤師の定年には、特に決まりがあるわけではありません。しかし、ほとんどの薬剤師は企業や店舗などに勤務しているため、その勤務先でのルールに従って定年となることが多いようです。では薬剤師の定年は、勤め先によってどういった違いがあるのでしょうか?



病院や企業などに勤める薬剤師

病院や企業に勤める薬剤師は、その職場で働く他の人たちと同様に、勤務先が定めるルールに従って定年を迎えることがほとんどです。つまり、現在では60~65歳が定年年齢と言えるでしょう。そして、今後は法改正によって企業が定年年齢を引き上げるのに伴い、そこで働く薬剤師の定年年齢も上がっていくと考えられます。



規模の小さいドラッグストアや調剤薬局に勤める薬剤師

小規模のドラッグストアや調剤薬局で働く薬剤師の場合は、必ずしも企業で働く薬剤師のように、勤務先のルールに従って定年を迎えるとは限らないようです。と言うのも、小規模の店舗や薬局の場合は、その店舗運営についての決定権を持つオーナーとの話し合いで、定年を決める場合が少なくないからです。

そのため、一概に何歳が定年と言うことはできず、人によって異なると言えるでしょう。



独立経営している薬剤師

薬剤師の資格を持つ人の中には、独立開業している人やフランチャイズに加入して調剤薬局の店舗を経営している人、また医療コンサルタントとして独立している人などがいます。そのようなケースでは、いつまで経営を続けるのかは自分の意思によるため、定年は存在しないと言えるでしょう。



定年後の再就職はあるのか?

薬剤師が再就職しようとするとき、年齢制限がまったくないとは言えませんが、60歳以上であっても再就職はそこまで難しくないと考えて良いでしょう。最近は求人票に、「60歳以上歓迎」や「60歳以上の方も受入可」などの記載が見られることが多くなりました。そういった求人を見つけたら、自分の希望条件と合うかどうか、また自分が募集要項を満たしているのか確認しておくと良いですね。

ただし、企業や病院では、定年後の薬剤師を新規に採用しているところは非常に少ないのが現状です。経験や実績がある場合を除いて、企業や病院への再就職は狭き門と言わざるを得ません。しかし、それ以外の再就職先であれば薬剤師の需要が高まっていることもあり、比較的見つけやすいと言えるでしょう。



定年後でも無理なく働ける再就職先は?

薬剤師という資格は、現場で無理なく長く働き続けたいと考える人にとってベストな資格と言われています。資格が必要な職業の中でも、短時間労働が選択できる、ブランク期間後も容易に採用されるなど、恵まれた就業環境にあると言えるでしょう。次の章では薬剤師に最適な再就職先を考えていきます。



今の職場で65歳まで継続雇用

まずは、現在の職場で嘱託社員として再雇用してもらうという方法です。現在では60歳で定年となり、その後65歳まで再雇用というケースが主になります。

最大のメリットは、慣れ親しんだ職場環境で、これまでの経験をそのまま生かして働けることでしょう。一方デメリットとしては、正規雇用から嘱託社員への移行となるため、待遇や給与条件が下がってしまうことがほとんどです。



ドラッグストア(OTCメイン)で働く

2つ目は、ドラッグストアでOTCをメインとして働くという選択肢です。OTCとは、「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」を略したもので、カウンター越しに薬の販売を行うことから、このように呼ばれています。

OTCメインのドラッグストアは、現役時代に調剤未経験であった薬剤師でも求人があり、またシフト制であるため週3~4日で無理なく働けると人気があります。

ただし、勤務中は立ちっぱなしのことが多く品出しの作業もあるため、ある程度の体力が必要になります。また、一般のお客さまに向けて薬の販売をすることから、接客のスキルを身につける必要があります。



企業・卸(物流センター)の管理薬剤師として働く

医薬品メーカーなどで自社の倉庫に医薬品を保管する際、薬機法に基づき管理薬剤師を配置する必要があります。また、医療用医薬品以外にも、漢方薬や薬機法の規制を受ける健康食品、サプリメントを保管する倉庫にも管理薬剤師を配置しなければいけません。

管理薬剤師の主な業務は、倉庫で保管している医薬品の品質管理、在庫管理、物流管理ですが、発送前の商品の検品や、納品先業者からの問い合わせ対応、在庫データの管理や医薬品受発注などのPCを使った事務作業などがあり、業務は多岐に亘ります。

こういった業務は薬剤師の仕事としてはあまり知られていませんが、「調剤業務や服薬指導がない仕事に就きたい」と考える薬剤師には、最適な仕事と言えそうです。ただし、求人はかなり少ないため、管理薬剤師として働きたい場合は求人をこまめにチェックして、急な欠員募集などに対応できるようにしておきましょう。



調剤薬局で働く

近年薬剤師の求人でよく目にするのは調剤薬局での仕事です。ただし調剤薬局で採用されるためには、調剤経験が必要となります。

また、ドラッグストアの場合でも、最近では調剤薬局併設型の店舗が増えているため、調剤経験を問われる可能性があります。調剤経験があり、定年後もその経験を生かして働くことを考えている場合、再就職先探しはさほど難しくはないでしょう。

また現在の薬局は、医療品を提供する拠点としての役割に加え、地域で暮らす人たちの健康を守る情報の拠点としても非常に注目されています。今後は、在宅療養する人たちが今以上に増えることが予想されており、在宅医療を受ける患者さんたちは、自宅で医師や看護師の診察・アドバイスを受けながら日々を過ごします。

その際に、重要なサポートの役割を担うのが、薬の専門家である薬剤師です。患者さんの日常の薬やその効果について管理したり、患者さん本人やその家族が不安に感じていることはないか聞き取ったりするなど、信頼できるサポーターとして地域で暮らす人たちの療養を見守ります。

このように地域の薬局で働く薬剤師は、医療に携わり地域社会に貢献するという重要な使命を、今後さらに担っていくと言えるでしょう。



再就職での給与・待遇と、気をつけることとは?

具体的に再就職先を探すときに、気をつけたいことは何でしょうか。これは、薬剤師に限らず再就職希望者全般に言えることですが、再就職先に対して条件のつけすぎに気をつけましょうということです。

現役時代はこのくらいの待遇でこれだけの収入があったから、このような環境で働いていたから、と待遇や職場環境に対するこだわりが強い人は、再就職の間口がどうしても狭くなってしまうからです。また、転職の回数が多い人も、定年後の再就職が難しくなる場合があるようです。



再就職先での給与・待遇は?

定年退職後に再就職した場合、給与・待遇が新卒程度になってしまうケースが少なくありません。定年後は高齢となり、現役時代と同じように働くことが難しくなります。再就職で、水準の高い給与・待遇を見込むのは避けた方が良いでしょう。



再就職先で気をつけることは?

定年まで働いてきた薬剤師には、さまざまな経験を経て高度な知識を身につけてきた人がたくさんいます。しかし、再就職先ではいったんそれらのことを脇に置いて、新たな職場でのルールや仕事のやり方を一から学んでいこうという姿勢が大切になります。

また環境としては、自分より若い上司や同僚と共に働くことが多くなります。これまでの経験を生かしながらも、広い心を持って柔軟に対応できる薬剤師は、どんな再就職先でも頼りにされ必要とされることでしょう。



定年後の再就職では無理せず働こう

薬剤師は長く現役で働きたい人には最適の資格であり、就業環境は一般に比べて恵まれていると言えるでしょう。このメリットを最大に生かすためには、無理せず長く働くのがお勧めです。

今後は男女問わず産休や育休など取得する時代になっていくと思われますが、そうした子育て時期にも薬剤師という資格があれば、短時間勤務で働いたり、休職後に復帰したりすることが一般に比べて容易と言われています。

また、定年後に、自分のライフワークバランスを重要視したい人には、時短で働きながら自分の時間もしっかり確保するという理想が実現しやすい資格と言えるでしょう。


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