少々複雑な年末調整の事をどこまで知ってる?利用できる各種控除と注意点とは

配信日: 2018.11.29 更新日: 2019.01.10

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少々複雑な年末調整の事をどこまで知ってる?利用できる各種控除と注意点とは
日本では自分自身が1年間に得た収入に対し、納付すべき所得税額を確定申告により計算・納付する「申告納税制度」」が採用されています。
 
しかし、国民全員がこの確定申告を行うのは少々大変ですし、納税額の計算に間違いが生じる恐れもあります。
 
そこで、日本独自の制度として、主たる収入が給与所得である場合は、給与を支払っている企業などが納税に関する業務を代行し、従業員の納税に関する負担を軽減する「年末調整」」が実施されています。
 
今回は、サラリーマンにとって身近な制度である年末調整について掘り下げていきたいと思います。
 
菊原浩司

Text:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

年末調整制度の仕組み

企業などへお勤めの方は「源泉徴収」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?
 
これは給与の額に応じた所得税の概算金額を、給与支払い時にあらかじめ天引きし、個人の代わりに納税する制度のことです。
 
年末調整により各種控除を適用して、納付すべき所得税額が決定します。
 
年末調整後に所得税を多く天引きしていた場合は、従業員に還付されることになります。
 
年末調整において基礎控除の他に適用可能な控除は以下の5つとなります。
 
1 扶養控除
 
健康保険の扶養と混同されがちですが、対象となる範囲は大きく異なります。
 
所得税の扶養控除は、生計を1つにしている6親等以内の親族(または3親等以内の姻族)で、その年の給与収入が103万円以下の「扶養親族」を対象としています。
 
しかし、「扶養親族=扶養控除の対象」ではありません。
 
扶養控除を受けることができる扶養親族は以下の4つに分けられます。
 

(1)一般の控除対象扶養親族(控除額38万円):扶養親族のうち16歳以上の人

(2)特定扶養親族(控除額63万円):扶養親族のうち19歳以上23歳未満の人

(3)老人扶養親族(控除額48万円):扶養親族のうち70歳以上の人

(4)同居の老人扶養親族(控除額58万円):老人扶養親族のうち、本人や配偶者などの父母・祖父母で普段同居している人を指します。同居は病気などによる治療のため入院している場合は期間に関わらず同居となりますが、老人ホームなどの介護施設に入居している場合は同居とはみなされません。

 
2 障害者・寡婦・勤労学生の控除
 
本人・配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合も、控除を受けることが可能です。
 
「障害控除」は、一般の障害者(控除額27万円)、特別障害者(控除額40万円)、同居特別障害者(控除額75万円)の3種類に区分されています。
 
また、夫と死別・離婚した後に再婚をしていない場合は、「寡婦控除」を受けることができます。
 
「寡婦控除」は、扶養親族である子の有無や、所得額が一定額以下であるかなどによって、一般の寡婦(控除額27万円)または特別の寡婦(控除額35万円)の控除を受けることができます。
 
「勤労学生控除」(控除額27万円)は、国や地方公共団体、学校法人などに設置された各種学校のほか、職業訓練法人で認定職業訓練を履修する学校の学生で、その年のアルバイトなどの給与収入が65万円以下、それ以外の所得が10万円以下の場合に適用を受けることができます。
 
3 配偶者控除と配偶者特別控除
 
従来の年末調整では「扶養控除等(異動)申告書」と「保険料控除申告書」の提出で年末調整は完了していましたが、新たに「配偶者控除等申告書」が追加されました。
 
「配偶者控除(控除額38万円~13万円)」と「配偶者特別控除(控除額38~1万円)」を受ける場合には、2018年より本書類の提出が必要になります。
 
大きな変更点としては、配偶者の給与収入以外に、給与所得者の給与収入によって控除額が変化することです。
 
給与所得者の収入が1120万円以下の場合は影響がありませんが、その金額を超えると「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の控除額は段階的に減額され、1220万円を超えると適用を受けることができなくなります。
 
改善点として、去年までは配偶者の給与収入が103万円を超えると、「配偶者控除」から「配偶者特別控除」に切り替わり、控除額が目減りしてしまいました。
 
しかし、今回の改正により、「配偶者特別控除」の上限額が上がり、配偶者の給与収入が150万円まで増加しても38万円の控除を受けることができるようになりました。
 
4 各種保険料控除
 
「社会保険料控除」では、支払った健康保険などの社会保険に関する掛金全額を、控除することができます。
 
「小規模企業共済等掛金控除」は、近年は特にiDeCoをはじめとした確定拠出年金の普及により、サラリーマンでも対象となる人が増えています。
 
制度加入の大きなメリットですので、忘れないように控除を申請しましょう。
 
こちらも「社会保険料控除」と同じく掛金全額を控除することができます。
 
このほかには、「生命保険料控除(控除額は一般の生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料合計で最大12万円)」や「地震保険料控除(最高5万円)」の適用を受けることができます。
 
5 住宅借入金等特別控除
 
「住宅借入金等特別控除」(控除額最大50万円)は、いわゆる住宅ローン減税などの名称で有名です。
 
一定の住宅を取得するために借り入れを行った場合、借入金の年末残高の1%を、10年間にわたって「税額控除」する仕組みです。
 
「住宅借入金等特別控除」以外の控除は「所得控除」になります。
 
これは、所得税を課す収入から差し引く控除のことで、控除額の何割かしか実際には還付されません(何割還付されるかは給与所得額により異なります)。
 
しかし、税額控除は納付すべき所得税の額から直接差し引くことができるので減税効果が大きいことが特徴です。
 

まとめ

今回紹介した通り、年末調整はさまざまな控除を簡単に適用することができる、便利な制度です。
 
しかし、多額の医療費を支払った場合に適用される「医療費控除」や、盗難や災害などで被害が生じた場合に適用される「雑損控除」など、年末調整では対応することができない控除も存在します。
 
これらの控除は個別性が強く、繊細な内容も含むため、企業などが代理して行うのには馴染まないためです。
 
全ての控除を利用するには、確定申告を用いる必要があります。
 
すでに年末調整を行っている場合でも、確定申告を行うことは可能であり、その場合は確定申告の内容が優先されます。
 
控除の内容を理解し、申告漏れなどが起こらないよう注意しましょう。
 
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
 

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