更新日: 2021.04.01 控除

大学生のアルバイトが原因で親の税金負担増に?知っておきたい税金の知識

執筆者 : 植田周司

大学生のアルバイトが原因で親の税金負担増に?知っておきたい税金の知識
大学生になるとアルバイトを始めるという人も多いと思いますが、アルバイトをすることで発生する税金について、その詳細を知る人は少ないかもしれません。どのような税金が発生するのか、どのようなことに注意すべきなのか(扶養控除など)紹介します。
植田周司

執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。

税金と控除

そもそも税金がなぜ必要なのでしょうか? 警察や消防署がないとどうなるでしょう? またゴミの収集がこないと、町の中はゴミだらけになってしまいます。人々は何らかの形で、このような公共サービスを利用しています。このようなサービスのために必要なお金を、私たちは税金として負担しています。
 
税金には消費税などいろいろな種類がありますが、今回はアルバイトとして稼いだお金にかかる、所得税と住民税について簡単に説明しましょう。
 
税金はできるだけ公平に負担するように考えられています。収入の少ない人はそれなりに、収入の多い人にはより多く負担してもらうようになっています。収入のまったくない人や、非常に少ない人からは税金を取らないということもあります。
 
税金は、収入から収入を得るために必要な費用をマイナス(以後、控除と表記)した残りを課税対象として、その税額を計算します。会社から給料をもらっている人は、スーツや靴、かばんなどの購入費用を個別に計算する代わりに、法律で決められたルールで算出した額を必要経費として控除します。これを給与所得控除といいます。
 
収入から控除するものとして、収入の非常に少ない(給料が年間で103万円以下、または収入がない)家族を養っている場合も、控除が認められています。これを扶養控除といいます。
 

アルバイト収入には税金がかかる

先に書きましたように、収入があるとそれに見合った税金を払う必要があります。収入に対する税金には所得税と住民税があります。それぞれ各種控除があり、控除後の収入が非課税限度内であれば税金を払う必要がありません。どのような控除があるのか具体的に見てみましょう。
 
アルバイト代を給料としてもらった場合、55万円の給与所得控除があり、基礎控除48万円と合わせて103万円までは所得税がかかりません。さらに専門学校や大学など勤労学生控除対象の学生(控除対象かは学校に確認してください)の場合は、追加で所得税27万円(住民税は26万円)が所得から控除されます、所得税は合計で130万円までが非課税です(図1左の所得税を参照)。
 
なお、勤労学生控除を使うということは、その時点で給与所得が103万円を超えていますので、後で説明する親の扶養から外れることに注意してください。
 

 
住民税は1月1日時点で未成年か20歳以上かによって、その上限額が異なります。20歳以上の場合は、図1の中央のように給与所得控除55万円と住民税の非課税限度額45万円(*注1)の合計100万円までは住民税がかかりません。100万円を超えた場合は、勤労学生控除の26万円を適用しても住民税の均等割(*注2)が発生します。
 
*注1:非課税限度額は市町村によって異なります。
*注2:住民税は全員が負担する均等割と、所得に応じて負担が増える所得割があります。
 
未成年(婚姻歴なし)の場合は、図1右側のように、給与が204万3999円まで住民税はかかりません。
 
所得税はその年の収入に対して支払いますが、住民税は前年の収入に対して支払います。前年アルバイトで働きすぎて、住民税を払うことになった場合、実際に住民税を払うのは今年です。そのため今年勉強に忙しくてアルバイトができず無収入だったとしても、住民税を払う必要がありますので注意してください。
*住民税の課税制度は複雑ですので、ここでは詳細な説明は省略します。
 

親の扶養家族にも注意

自分が払う所得税や住民税以外に忘れてはいけないのが、親が払う所得税と住民税です。
 

 
一般的に収入のない子どもは親の扶養家族になっていて、扶養控除の適用で所得税と住民税が軽減されています。しかし扶養家族には収入の制限があり、扶養される人の給与所得が、上限の103万円を超えると扶養家族から外れてしまいます。これは所得税、住民税共通です (収入が事業所得の場合は48万円) 。 
 
つまり、アルバイトでがんばって103万円以上稼ぐと、親の扶養家族から外れてしまい、以下の例では親の税金が約17万1000円増えることになります。103万円以上働くなら大幅に超えないと、家族全体では収入がマイナスになることに注意しましょう。
 
【参考】
扶養家族は年齢により、控除対象扶養親族と特定扶養親族のどちらかになります。対象の年齢と所得税、住民税の控除額は以下のとおりです。特定扶養親族は大学生や専門学校生でなくても対象となります。
 
・控除対象扶養親族:その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の方
(19歳~23歳未満を除く)
控除額 所得税38万円 / 住民税33万円
 
・特定扶養親族:その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の方
控除額 所得税63万円 / 住民税45万円
 
例えば特定扶養親族の場合、仮に親の所得税率が20%の場合、所得税が12万6000円、住民税は10%で4万5000円となり、年間で約17万1000円税金が安くなります。
(金額は概算です。正確には復興税や住民税の調整控除などの計算が必要です)
 

もし103万円を超えてしまった場合は?

アルバイトの収入が103万円を超える場合は、親に連絡しましょう。親のほうで扶養家族から外れる手続きが必要です。また130万円を超える場合は健康保険からも外れる手続きが必要になります(親が国民健康保険の場合を除く)。
 
自分自身では、バイト代を給料として受け取っている場合は、12月に所得税の清算を行います。これを年末調整といいます。勤労学生控除を利用する場合は、年末調整の時に忘れずに申請しましょう。
 
130万円を超え親の健康保険の扶養から外れる場合は、国民健康保険に加入する必要があります。もしアルバイト先の健康保険に加入できる場合は利用しましょう。
 

まとめ

アルバイトをする場合は、扶養家族から外れる上限の103万円を意識しながら働きましょう。後で「知らなかった」では済まされません。自分の税金だけでなく、親の税金も増えてしまいますので十分注意してください。
 
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)

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