確定申告書、押印手続きが見直し
配信日: 2021.04.12
現下のコロナ禍の状況も相まって、一気に注目を集めた「押印廃止」の動きについて確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
押印手続きの見直し方針
内閣府ホームページには、押印手続きの見直しについて下記の方針が示されています。
『「経済財政運営と改革の基本方針2020(令和2年7月17日閣議決定)」及び「規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)」に基づき、各府省は、所管する行政手続等のうち、法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して紙の書面の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、又は対面での手続を求めているものについては、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行うこととされています。』
そして、令和2年12月18日には、地方公共団体向けの「地方公共団体における押印見直しマニュアル」が作成されています。マニュアルでは「行政手続における国民の負担を軽減し、国民の利便性を図ること」が強調され、押印を求める合理性の有無についての考え方や見直しの判断基準などを示し、押印の見直しに積極的に取り組むことが求められています。
また、「押印を求める行政手続の見直し方針(根拠別集計)」によると、行政手続きの押印の全1万4992種類のうち、存続予定の手続きはわずか83種類とのことです。
税務関係書類の押印見直し
押印手続き見直しの具体的な事例として、税務関係書類の押印見直しが令和3年4月1日から適用開始されます。本件は、令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定されたものです。
提出者などの押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、令和3年4月1日以後に提出する場合、次に掲げる書類を除いて、押印を要しないこととされます。
(1) 担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類
(2) 相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類
これに伴い、全国の税務署窓口では、上記以外の税務関係書類について、押印がなくとも改めて求めないこととなっています。つまり、身近なところでは所得税の確定申告書や法人税申告書、消費税申告書などの税務申告書や各種申請書も押印不要となっています。
もちろん、もともと押印ではなく、マイナンバーカードを利用したe-Tax(電子申告)の普及も影響していますが、手続き上は極めて大きな変革となります。
税務関係書類の押印廃止により、業務の効率化は図れると思われますが、当事者の承認を得ないで税務関係書類が提出されるなどの危険性があることについては注意も必要となるでしょう。
宅配業者の押印、サイン省略
こちらは新型コロナウイルスの影響が大きいと思われますが、2020年から本格的に大手宅配業者が、ご自宅や業者の営業所で荷物を受け取る場合、対面または非対面にかかわらず、受領印またはサインを省略しています。
さらに、時間指定や置き配、オープン型宅配ロッカー(駅やコンビニなどの拠点に設置)の利用拡大の動きが見られます。
まとめ
令和3年以降、各自治体においても「地方公共団体における押印見直しマニュアル」に則した改革が進められています。また、前述のとおり、民間企業においても「押印廃止」の流れが推進されていくものと思われます。
「押印廃止」は、これまで当たり前とされてきた不必要な手続きを排除し、業務の効率化を図ることが目的です。変革の際にはリスクも発生することを念頭に、今後の改革の動向に注目していきましょう。
出典
内閣府 押印手続の見直し・電子署名の活用促進について
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー