更新日: 2019.01.11 控除
2020年1月から青色申告特別控除が65万円から55万円に減額 その対処法はこれ
Text:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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複雑な計算や仕分けは、会計ソフトにお任せ
個人事業主やフリーランスの方が、通常の申告(白色)から青色申告に移行することに躊躇している原因は、複数の帳票の提出だと思います。青色申告をするためには、日々の取引の状況を記帳することと、取引に伴って授受した書類を保管する必要があります。
でもこれは白色申告でも同様で、帳簿の数や保存期間が違うだけです。青色の記帳方法は原則複式簿記で、簡易帳簿で記帳した場合も青色申告控除を受けられますが、控除額は10万円です。この“複式簿記”がネックになっているのではないでしょうか。
複式簿記は、ひとつの取引で複数の記帳が必要です。例えばタクシー代を支払った場合、(1)交通費:タクシー代800円
(2)現金預金:現金800円です。
さらに<交通費> <通信費> <交際費> といった勘定科目を整理して計算し、決算の時に貸借対照表・損益計算表を作成します。これらは複雑で大変そうですが、会計ソフトに任せることが出来ます。日付・適用・金額などは入力が必要ですが、計算は勿論、決算書類も作成してくれます。ソフトは無料で使えるものもありますので、上手に利用することをお勧めします。
青色申告に関しての控除額の優遇は、電子申告のほか、法律にもとづいて税務上の書類を電子保存していれば10万円上乗せするという内容も盛り込まれています。詳細は明らかではありませんが、会計ソフトで記帳管理すれば条件をクリアできると思います。
青色申告の特典
「アクセサリーを作ってネットで販売しています」「家でお料理教室をしています」という働き方で、わざわざ会計ソフトで処理するほどでもないから~という方も、今後増えると考えられます。青色申告の主な特典は4つあります。
(1)青色申告特別控除
(2)青色事業専従者給与
(3)貸倒引当金
(4)純損失の繰越しと繰戻し
上記のような働き方をしている人にとって、注目すべきは(1)と(4)です。
「アクセサリーの材料を大量に仕入れ、販売促進用のホームページをプロに依頼しました」「お料理教室で使用するレンジや食器類を新調して、生徒募集のパンフレットを作成しました」このように起業する際には、それなりの設備投資などが必要になります。
起業してすぐに利益が出ることもありますが、時間がかかる場合もあり、初年度は赤字になることもあります。こうした場合に損失を繰り越せるのが(4)です。前年度の損失を次年度の収益から差し引くことで、節税になります。これは初年度に限らず適用出来ます。
また繰り戻して、納付した税金の還付を受けることも出来ます。サラリーマンの給与所得控除にあたる控除が青色申告特別控除(1)です。現在65万円で、前述のとおり青色申告でも簡易帳簿の場合は10万円、白色申告の場合はありません。控除額の65万円は大きいので、特典は利用したいところです。
青色申告をするためには、青色申告をしようとする年の3月15日までに(1月16日以降に事業を開始した場合は、開始等の日から2か月以内)、税務署宛に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。「オリジナルのアクセサリーがヒットした」「生徒さんがたくさん集まった」など利益が出てきたので控除を受けたいと思っても、途中で申請することは出来ません。
冒頭に戻りますが、2020年に青色申告特別控除額は55万円になります。電子申告をすれば、10万円の控除が上乗せになりますので、現在と同じ65万円控除となります。2020年から控除額が増えるわけではありませんので、ご注意ください。
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士