中止になった文化芸術イベントのチケットの払い戻し請求をしないと税優遇があるの?
配信日: 2021.10.28
執筆者:杉浦詔子(すぎうらのりこ)
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として、働くことを考えている方からリタイアされた方を含めた働く人たちとその家族のためのファイナンシャルプランニングやカウンセリングを行っております。
2005年にCFP(R)資格を取得し、家計相談やセミナーなどのFP活動を開始しました。2012年に「みはまライフプランニング」を設立、2013年よりファイナンシャルカウンセラーとして活動しています。
払い戻しを受けないことを寄付とみなす制度
新型コロナウイルス感染症に関する政府の自粛要請を受けて、参加者の間に感染が広がる最悪の事態を避けるため、それまで全力で進めてきた準備を全て投げうち、苦渋の決断で開催を中止等した文化芸術・スポーツイベントが数多くあります。
中止等された文化芸術・スポーツイベントについて、チケットの払い戻しを受けない(放棄する)ことを選択された方は、その金額分を「寄付」とみなし、税優遇(寄附金控除)を受けられる新たな制度が創設されました。
【優遇内容のイメージ】
音楽コンサートに行くために1万円のチケットを購入したが、自粛要請により中止となり、その代金を払い戻さずに寄付した場合。
【還付される税額】
(対象チケット代金合計-2000円)×40%(+住民税分)の税額額控除となります。
チケット代が1万円で当該の音楽コンサートのみが当該年の寄附金控除の対象となる場合は3200円の減税となりますが、上記の「-2000円」は、今回の特例「寄付」以外の寄付も含めた年間寄付総額に対して1回のみの適用であるため、他にふるさと納税などで寄付をしていると最大で4000円の減税となります。
(注)具体的な減税額は、寄付された方の所得額や居住されている自治体により異なります。
寄附金控除までの具体的な流れ
【ステップ1】
イベント主催者からの申請に基づき、文化庁・スポーツ庁が対象イベントを指定します。
●現に中止等(中止・延期・規模縮小)されたイベントが幅広く対象となります
●対象イベントは、文化庁・スポーツ庁のホームページにアップされます
【ステップ2】
チケットの払い戻しを受けないことを選択された参加者がイベントの主催者に連絡し、指定行事証明書と払戻請求権放棄証明書を入手します。
【ステップ3】
参加者が確定申告の際に、上記2点の証明書(指定行事証明書・払戻請求権放棄証明書)と共に申告します。
チケット代を寄付金として確定申告することで税優遇の対象となります。なお、寄附金控除は年末調整することができませんので、給与所得者の方も確定申告が必要となります。
対象イベントの考え方
対象イベントの要件は以下の全てを満たすものです。
(1)文化芸術またはスポーツに関するものであること
●音楽コンサート、エンターテインメント、伝統芸能などの公演イベント
●映画、博物館など、個展、テーマパークなどの観覧イベント
●プロスポーツの試合、マラソン大会などの参加型スポーツイベント
(2)令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催された、または開催する予定であったものであること
(3)不特定かつ多数の者を対象とするものであること(広く一般にチケットなどが販売されており、数名以上の参加が想定されていたものを指します)
(4)日本国内で開催された、または開催する予定であったものであること
(5)新型コロナウイルス感染症およびそのまん延防止のための措置の影響により、現に中止・延期・規模縮小されたものであること
(6)(5)の場合に払い戻しがされた、もしくはされる予定であること
まとめ
政府の自粛要請により中止になったイベントで払い戻しを受けていないチケットがありましたら、本制度が利用できるか確認しましょう。
なお、全てのイベントが寄附金控除の対象となるものではないため、参加イベントが対象かどうかは文化庁・スポーツ庁のホームページあるいは主催者のオフィシャルサイトを確認ください。また、年間ごとに合計20万円までのチケット代金分が、この制度による優遇の対象となります。
出典
スポーツ庁 「チケットの払戻請求権の放棄を寄附金控除の対象とする税制改正」
執筆者:杉浦詔子
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント