更新日: 2021.12.07 年末調整

毎年恒例だけど良くわからない。年末調整って何をしているの?

執筆者 : 田久保誠

毎年恒例だけど良くわからない。年末調整って何をしているの?
会社員の方の場合、12月または1月の給与がいつもの月より多いなと感じる方がいらっしゃるかもしれません。それが年末調整であり、会社に出してといわれる書類を出しているけど、いったいどういう仕組みで行われているのか、イマイチよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
今回は、会社が行っている年末調整で会社員の方にどう影響しているのかを見ていきましょう。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

そもそも年末調整ってなに?

そもそも、年末調整とは、会社員や公務員のような給与所得者が毎月の給料から支払っている源泉所得税を再計算して年間の納税額を調整する制度です。
 
令和2年分の国税庁が行った民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者5245万人で、うち4854万人(92.6%)が年末調整を行っています。
 
これは、一般的に給料から引かれている源泉所得税の額は、社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除等のさまざまな控除があります。そのため本来納めるべき税金の納付額と異なっているからです。
 
例えば、社会保険料控除であれば年の途中で健康保険料や厚生年金保険料が変わることがありますし、生命保険料控除や地震保険料控除では、生命保険や地震保険等の保険に加入していても、毎月の給料支払時には考慮されていません。
 
そのため1年間に支払われた給料の総額が確定する12月に、その年に納めるべき税金の過不足を計算し直し、納付金またか還付金を給料で調整する手続きです。
 

年末調整は義務なの? どのような人が対象となるの?

年末調整は基本的に事業者の義務です。対象になるのは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出し、12月31日時点でその会社等に勤務している方であれば正社員やパート、アルバイト等の雇用形態にかかわらず年末調整の対象となります。
 
もし、年末調整を希望しない従業員等がいた場合でも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されていれば、事業主は年末調整を行わなければなりません。ただし、後述しますが、すべての従業員が年末調整の対象になるわけではありません。
 

どのような費用が年末調整の対象となるの?

年末調整には下記の表の所得控除が適用されます。所得控除とは、所得からいくらか差し引ける費用と考えて結構です。所得税は所得に対して課されるため、課税所得金額が低くなればその分所得税額も低くなります。
 
その際に必要な申告書は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書等があります。特に最近では、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用している方もいらっしゃるかもしれません。
 
その場合、掛け金が「小規模企業共済等掛金控除」となりますので、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送られてきます。それも忘れずに提出しましょう。
 

確定申告が必要な場合もある

上記で述べたように、すべての従業員が年末調整の対象になるわけではありません。次の場合は年末調整の対象となりませんので、ご自身で確定申告をする必要があります。


1.給与収入が2000万円を超える場合
2.中途退職後、年末時点で再就職していない場合
3.2ヶ所以上から給与を受け取っている場合

また、確定申告時には下記の表の所得控除が適用されます。これらの控除は収入や支出額、被害の程度などによって控除額が決まります。年末調整時の適用と比較してみましょう。
 
さらに、所得控除ではありませんが、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)も、初年度は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で適用できます。家の購入や増改築の予定がある方は確認しておきましょう。
 


 

もし提出し忘れたら確定申告で

年末調整は毎年恒例の行事です。保険会社等から送られてくる控除証明書は忘れずに会社等に提出しましょう。もし、年末調整の時に提出し忘れたとしても、確定申告で申告ができますので諦めないでくださいね。
 
出典
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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