更新日: 2022.01.22 控除
大学生の子どもが稼ぎ過ぎた…。「特定扶養親族」から外れると親はいくら損をする?
扶養している子どもが稼ぎ過ぎると親の税金の負担が増えて損をすると、よく言われます。実際に大学生の子どもが特定扶養親族から外れた場合、親の税金がどれくらい発生してしまうのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
特定扶養親族とは
納税者に扶養している対象の親族がいる場合、一定の金額が所得から控除され、所得税や住民税が安くなる仕組みを扶養控除といいます。扶養控除の対象となる親族は、その年の12月31日時点で次の4つの要件に該当することが必要です。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)であるか、都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から養護を委託された老人である
・納税者と生計を一にしている(別居していても金銭的に支援していれば認められる場合あり)
・年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)である(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていない。または白色申告者の事業専従者ではないこと。
上記の扶養親族の中でも、19歳以上23歳未満の方を「特定扶養親族」といい、特定扶養親族は1人につき、通常の扶養親族の控除(38万円)よりも多い63万円の控除を受けられるようになっています。
出典:国税庁 「No.1180 扶養控除」
また、住民税においては、特定扶養親族1人当たり45万円の控除を受けることができます。
特定扶養親族から外れると親の税負担はどれくらい増える?
では、大学生の子どもの収入が増え過ぎて特定扶養親族から外れてしまう場合、どれくらい税金の負担が増えるのか簡単に考えてみましょう。
年収500万円で所得税、住民税ともに10%と仮定します。特定扶養親族から控除される金額は所得税で63万円、住民税で45万円です。その控除がないということは、所得税は63万円分、住民税は45万円分多くなります。
子どもが特定扶養親族の場合は払う必要がなかった税金が、所得税では63万円の10%で6万3000円、住民税では45万円の10%で4万5000円となり、合計で11万円近く負担が増えてしまうのです。
子ども本人の負担も増える
子どものアルバイト収入が多くなり過ぎると、所得税や住民税が発生するほか、子ども本人の負担が増えた分を親が代わりに支払うことで、間接的に負担がさらに増加することもあります。
例えば20歳以上の学生は、学生納付特例制度によって国民年金保険料の納付の猶予を受けられますが、対象となるのは本人の所得が一定(128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)以下の場合です。
この基準を超える収入があるため猶予の適用を受けられず、年金保険料を親が代わって支払うことになると、1ヶ月当たり1万6610円(令和3年度)の負担が増えます。
また、扶養から外れて子どもが自身で健康保加に入することになった場合、その保険料も親が支払うとなれば、さらに負担は重くなります。
大学生のアルバイトは特定扶養親族から外れない範囲が吉
大学生の子どもが特定扶養親族から外れてしまうと、親の税負担が11万円近く増えてしまうことが分かりました。本人の所得税や住民税、国民年金保険料や健康保険料も親が負担するケースもあるでしょう。
大学生の子どもがアルバイトを始めるという場合、その収入が家計に影響を与えることを理解させるため、働き方について十分に話し合っておくことが必要かもしれません。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
多摩市 所得控除等
国税庁 No.2260 所得税の税率
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
執筆者:柘植輝
行政書士