更新日: 2022.02.05 控除

10万円を超えていなくても医療費控除の対象になるケースって?

10万円を超えていなくても医療費控除の対象になるケースって?
「医療費控除は医療費が10万円を超えないと受けることができない」と思い、控除を受けることを諦めてはいませんか。確かに、医療費控除は医療費が少なくとも10万円を超えていないと、計算上、控除の対象となる金額には達しません。
 
しかし、医療費控除には特例があります。この特例の適用を受ければ、医療費が10万円を超えていなくても医療費控除を受けることができます。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

医療費控除の特例の概要

医療費控除の特例は、「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例」といい、通称「セルフメディケーション税制」といいます。公益社団法人日本薬剤師会によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です。
 
セルフメディケーション税制を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

●自己がその年中に健康の保持増進および疾病の予防への取り組みとして一定の健康診査や予防接種などを行っている
●自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った

このとき、その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などにより補てんされる金額を除く)のうち1万2000円を超える部分について、8万8000円を限度に控除を受けることができます。
 
この特例は通常の医療費控除との選択制であり、いずれかの控除しか受けることができません。期間は令和8年12月31日までとなります。
 

対象となる医薬品

セルフメディケーション税制の対象となるのは、「特定一般用医薬品等購入費」です。「特定一般用医薬品等」とは、以下のものを指します。

(1)平成29年1月1日から令和3年12月31日までに購入したもの

一般用医薬品等のうち、医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高いもの(その使用による医療保険療養給付費の適正化の効果が低いと認められる医薬品を除く)として厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めるものの購入の対価をいいます。
(1)その製造販売の承認の申請に際して既に承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品
(2)その製造販売の承認の申請に際して(1)の医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品

※国税庁 「No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費」より
 

(2)令和4年1月1日から令和8年12月31日までに購入したもの

一般用医薬品等のうち、医療用薬剤との代替性が特に高いものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めるものの購入の対価をいいます。
(1)その製造販売の承認の申請に際して既に承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品
(2)その製造販売の承認の申請に際して(1)の医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品 その製造販売の承認の申請に際して(1)および(2)の医薬品と同種の効能または効果を有すると認められる医薬品のうち、その使用による医療保険療養給付費の適正化の効果が著しく高いと認められる医薬品

※国税庁 「No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費」より
 
どの医薬品がセルフメディケーション税制の対象となるかは、厚生労働省のホームページにある「セルフメディケーション税制対象品目一覧」から調べることができます。また、一部の医薬品には「セルフメディケーション」「税控除対象」のマークが付いていますので、そちらで識別することもできます。医薬品を購入する際、直接聞いてみるのもよいでしょう。
 

まとめ

セルフメディケーション税制を利用すれば、医療費が10万円を超えていなくても医療費控除を受けることができます。ただし、この制度を利用するためには、対象の医薬品を1万2000円以上購入していることと、予防接種や健康診断の受診など健康のための一定の取り組みを行っている必要があります。
 
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例のため、通常の医療費控除との併用はできません。従って、医療費が10万円を超えなかった場合は、セルフメディケーション税制を利用したいものです。
 
医療費控除を行うためには、確定申告をする必要があります。セルフメディケーション税制を利用する場合、医薬品を購入したときの領収書や健康診断の結果通知表などを確定申告書に添付する必要がありますので、この点には注意しておきましょう。
 
本記事を通して、セルフメディケーション税制という医療費控除の特例についてご理解いただけたのではないかと思います。ぜひ参考にしてみてください。
 
出典
国税庁 「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
国税庁 「No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費」
日本薬剤師会 「『セルフメディケーション』について」
厚生労働省 「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集