更新日: 2022.02.24 確定申告
【確定申告相談】専業主婦です。フリマサイトなどでハンドメイド商品を売っています。確定申告をしなければなりませんか?
フリマサイトやネットオークションで、趣味で作ったハンドメイド商品を販売しています。自分の商品を気に入って買ってもらえるとうれしくて、制作にも熱が入ります。
ある日、ハンドメイド仲間が確定申告をしていることを知りました。その人は多くの作品を販売していて、個人事業主として申告しているとのこと。しかし、A子さんは趣味でやっています。
この程度の場合も確定申告をしなければならないのでしょうか。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
納める所得税があれば申告が必要
A子さんのように、仮に“趣味程度”であっても、納める所得税がある場合は申告が必要です。所得税は、各種所得の合計から所得控除を差し引き、所得税率を掛けて税額を出します。
もし、税額控除するものがあれば、そこから差し引きます。所得すべての合計が所得控除を超えなければ、確定申告の必要はありません。所得の種類には、利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時、雑の10種類あります。
ハンドメイドの販売を制作販売する場合、事業所得か雑所得に該当し、所得は「収入-必要経費」で算出します。必要経費には、材料費等のハンドメイドの収入を得るために掛かった直接の費用だけでなく、収入を得るために行った業務上の費用(通信費や電気代等)も含みます。
差し引ける経費が大きいほど所得は小さくなります。売り上げが大きいから所得税が多いとは限りません。また、所得控除は、租特税額を計算するときに各個人の事情を加味するもので、一人ひとり差し引けるものは異なります。
所得控除には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除があり、該当する場合に、所得控除の合計から差し引くことができます(国税庁「No.1100所得控除のあらまし」より引用)。
ハンドメイド以外に収入がない場合
所得の合計が、該当する所得控除の合計額までなら、確定申告の必要はありません。
A子さんの場合、専業主婦であり、ハンドメイド商品の製造・販売以外には収入がありません。差し引ける所得控除は基礎控除のみです。基礎控除は誰でも必ず差し引けるもので、48万円(本人の合計所得が2400万円以下の場合)を控除できます。
よって、A子さんは所得の合計が48万円までは所得税の確定申告の必要がありません。もし、ハンドメイドの販売以外に趣味を生かした収入が増えた場合も、所得を合算した金額が48万円までは申告が不要です。
ただし、講師料など報酬から源泉徴収されているものがある場合は、申告の必要がなくても確定申告をすることで源泉分が還付されます。ところで、もし、A子さんがパート収入もある場合はどうなるのでしょう。
A子さんにパート収入がある場合
パート収入があり、副業でハンドメイドの販売を行っている場合を考えます。給与所得(給与所得控除後の金額)や副業収入による所得の合計額から所得控除を差し引いて課税所得を求めます。
ここで、「所得合計額-所得控除合計額≦0」であれば申告の必要はありません。課税所得額があっても、税率を掛けた後に税額控除(配当控除や住宅借入金等控除)を差し引いて税額がなくなれば、申告の必要はありません。
もし、税額がある場合でも、
・給与所得以外の所得が20万円以下
・給与を2カ所以上から受けている場合は、年末調整が未調整の収入金額と給与以外の所得の合計が20万円以下
であれば、確定申告の必要はありません(国税庁「確定申告が必要な方」より要約引用)。
給与所得者は、年末調整で給与についての課税関係を清算します。年末調整を受ける給与所得以外の所得(年末調整を受けない給与は給与額)の合計が20万円以下の場合は、わざわざ確定申告をする必要がありません。
住民税の申告
ただし、これは所得税の申告の場合です。所得税の確定申告をしなくてもよい場合でも、住民税は収入の多少に関わらず申告の必要があります(所得税の確定申告をする場合は確定申告のデータから、給与所得者は会社からの給与支払い調書により、住民税の計算がされます)。
所得税の確定申告をしなくてもよい場合(合計所得が48万円以下、48万以上の場合で給与所得以外の所得が20万円以下)でも、住民税の申告を忘れないようにしましょう。
普段から売り上げや経費を数字で残しておくと、申告の時期に慌てなくてすみます。趣味程度でも売り上げや経費をきちんと付け、領収書は保管しておきましょう。
(出典)
国税庁 確定申告が必要な方
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1100 所得控除のあらまし
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1300 所得区分のあらまし」
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1500雑所得」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者