更新日: 2022.03.01 控除

別居している年金暮らしの母。扶養家族に入れることはできる?

執筆者 : 柘植輝

別居している年金暮らしの母。扶養家族に入れることはできる?
別居している年金暮らしの親を扶養家族に入れて、世帯全体の税金を安く抑えることができれば……と考えたことはありませんか?
 
こうしたケースで親が母親だと仮定し、自身の扶養家族に入れることができるのか、問題点はないのか考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

税制上の扶養と社会保険上の扶養

扶養には税制上の扶養と、社会保険上の扶養があります。
 
税制上の扶養とは、扶養される方(被扶養者)の年齢や人数によって扶養する方(扶養者)が控除を受けられることをいいます。控除を受けることで、扶養する方の所得税や住民税が安くなります。
 
参考までに、同居していない親を扶養することで受けられる控除の金額は、その年の12月31日時点で親の年齢が70歳以上であれば48万円、70歳未満であれば38万円となります。
 
一方、社会保険上の扶養は、扶養する方の健康保険に被扶養者が加入し、被扶養者本人の保険料の負担分がなくなることをいいます。
 
つまり、別居している親を上記2つの扶養に入れることで、扶養している方の所得税や住民税といった税金の負担が軽くなるほか、親の健康保険の保険料をゼロとすることも可能になります。
 
では、別居中の年金暮らしの母親を扶養家族へ入れることかできるか、という点についてですが、扶養されることになる母親の収入など一定の要件を満たしていれば可能です。
 
また、親に限らず、祖父母や兄弟など配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)も一定の条件の下、扶養に入れることができます。
 
扶養に入れるにはどのような条件が必要か、それぞれの扶養に分けてみていきます。
 

税制上の扶養に入れるには

別居している年金暮らしの母親を税制上の扶養に入れるには、子と生計を一にしており、かつ、母親の年金による年間の合計所得金額が下記の年齢区分に応じた計算で48万円以下であることが必要です。
 
例えば、親の年齢が65歳以上で年金収入(公的年金等の収入金額)が79万円程度しかないという場合、公的年金等に係る雑所得の金額は0円であるため、扶養に入れることができるということになります。
 

出典:国税庁 「高齢者と税(年金と税)」
 
生計を同一にすると認められることに同居の有無は関係ありません。具体的には、生活費や医療費などの送金が親に対して常に行われていることが必要です。
 
親が生計を同一にしており、収入要件も満たしている場合、年末調整を受けられる人であれば、年末調整の際に勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」に扶養する母親について必要事項を記入の上、提出することで扶養に入れることができます。
 
自営業者など確定申告をしなければならない方や、年末調整後に確定申告をする方は、確定申告または住民税申告で扶養する親の氏名など必要事項の記入が必要です。
 

社会保険上の扶養に入れるには

年金暮らしの母親を社会保険上の扶養に入れるには、扶養する方が勤務先で健康保険に加入していることが必要であるため、自営業者などで国民健康保険に加入している場合は扶養に入れることはできません。
 
健康保険の扶養に入れるには、下記の条件を満たすことが必要です(全国健康保険協会の例)。

●税制上の扶養のように生計を同一にしていること
●年間の収入が130万円未満(60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方の場合は180万円未満)であり、かつ、その収入が扶養者となる方の援助の金額より少ないこと

また、扶養に入れる際は勤務先を経由して、以下のような書類を提出することが一般的です。

●任意継続被保険者被扶養者(異動)届(勤務先や扶養する方が加入している健康保険組合のホームページなどから取得できます)
●戸籍謄本
●所得証明書など収入が証明できるもの
●仕送りの事実と金額が証明できるもの(預金通帳の写しや現金書留の控えなど)

詳細については勤務先、または扶養する方が加入している健康保険組合へご確認ください。
 

別居している親も扶養に入れることができる

親と別居していたとしても、所得や生計を同一にしているなど一定の要件を満たすことで、税制上の扶養と社会保険上における扶養の両方、あるいはどちらか一方に親を入れることができます。
 
年金収入のみの親の生活費を支援しているなど該当している場合は、扶養に入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
 
出典・参考
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1180 扶養控除
富里市 家族を税法上の扶養に入れたいです。どうしたらよいですか?
国税庁 高齢者と税(年金と税)
全国健康保険協会 被扶養者とは?
全国健康保険協会 任意継続健康保険へのご加入を検討されている皆さまへ
全国健康保険協会 任意継続被保険者被扶養者(異動)届
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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