確定申告で節税できるひとり親控除。具体的にいくら戻ってくる?

配信日: 2022.03.03

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確定申告で節税できるひとり親控除。具体的にいくら戻ってくる?
2020年の所得税から適用が開始された「ひとり親控除」ですが、具体的にはどのくらいの節税効果があるのでしょうか。
 
今回はひとり親控除の概要と、具体的な節税額について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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ひとり親控除

「ひとり親控除」とは、納税者がひとり親に該当する場合に適用されるもので、2020年から所得税控除が始まっています。
 

■ひとり親の範囲

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日時点で、「婚姻をしていない」「配偶者の生死が明らかでない」人で、次の3つの要件の全てに当てはまる人を指します。

●その人と事実上の婚姻関係もしくは同様の関係があると認められる人がいないこと
●生計を一にする子どもがいること
●その人の合計所得金額が500万円以下であること

ここでいう「生計を一にする子ども」とは、その年の合計所得金額が48万円以下で、かつ、ほかの人の扶養親族や配偶者になっていないことが条件です。
 

具体的な控除額はいくら?

では、年収が300万円の人で、ひとり親控除の適用がある場合の具体的な控除額についてみていきましょう。試算するにあたり、条件を次のように設定します

<試算条件>

年収300万円
35歳
子どもの年齢12歳
所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ

給与収入が300万円の場合、給与所得は給与所得控除額を差し引いた金額です。
 
給与収入が300万円の給与所得控除額は「収入金額×30%+8万円」ですので、300万円×30%+8万円=98万円です。そして、300万円から98万円を引いた額(202万円)が給与所得金額となります。
 
そして、ここから社会保険料控除や基礎控除額が差し引かれ、最終的な課税所得金額が決まるわけですが、ひとり親控除が適用されることにより、さらに35万円の所得控除を受けることができます。
 
給与収入が300万円であれば、標準報酬月額は25万円(ここでは賞与額も全て標準報酬月額に入れることとします)となり、その場合の社会保険料負担額は、月額1万2792円、年間約15万円です(東京居住の場合)。
 
課税所得金額は、給与所得から社会保険料控除と基礎控除を差し引いた額ですので、202万円-15万円-48万円の139万円です。課税所得金額が139万円の場合に適用される所得税額は5%です。
 
したがって、さらに35万円のひとり親控除が適用されるとすると、35万円×5%=1万7500円の減税効果が見込まれることになります。
 

年収500万円の場合の節税効果は?

前述の試算条件で年収が500万円の場合、どのくらいの節税効果になるのでしょうか。
 
年収500万円の給与所得控除額は「収入金額×20%+44万円」で計算されます。したがって、給与所得控除額は144万円となり、給与所得額は500万円-144万円の356万円です。
 
年収500万円の場合の標準報酬月額は41万6666円ですので、それに該当する社会保険料額は月額2万172円、年額約24万円です。
 
課税所得金額は、給与所得金額(356万円)から社会保険料控除と基礎控除の合計(約72万円)を引いた額となり、284万円です。
 
284万円に適用される所得税率は10%ですので、ひとり親控除が適用された場合、35万円×10%の3万5000円の節税効果が見込まれることになります。
 

寡婦控除との関連性

ひとり親控除が適用されなくても、合計所得金額が500万円以下の女性であれば、これまでどおり寡婦控除が適用されます。ただし、適用されるためには以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

●夫と離婚後、再婚しておらず、その年の合計所得金額が500万円以下であること
●夫と死別した人で、その後再婚しておらず、その年の合計所得金額が500万円以下であること
●夫の生死が分からない人で、その年の合計所得金額が500万円以下であること

この要件のどれかに当てはまれば、ひとり親控除が適用されなくても寡婦控除(27万円)の適用を受けることができます。
 

まとめ

ひとり親控除は、これまでの寡婦控除と異なり、婚姻歴の有無を問わず適用されるものです。
 
適用されるためには、生計を一にする子どもがいることと、合計所得金額が500万円以下であることが要件ですが、これまで寡婦控除の適用とならなかった「未婚のひとり親」もひとり親控除の対象となったことから、公平な税制優遇が適用されることとなりました。
 
さらに、ひとり親として認められることで児童扶養手当の対象となるなど、税制における平等さが浸透されつつあるといえるでしょう。
 
ひとり親控除は年末調整で受けることができますが、制度改正によって対象となる方や、対象から外れる人もいる可能性があります。
 
年末調整の際には、自身が要件に該当しているかどうかを確認し、正確な情報を申告するようにしましょう。
 
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1171 ひとり親控除
(※2)全国健康保険協会
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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