亡くなった人の所得を申告する準確定申告。必要な場合と不要な場合とは?
配信日: 2022.03.17
ただし、この準確定申告は誰もが行わなければならないわけではありません。
準確定申告とはどのようなものであり、どのような場合に必要なのか、どのように申告しなければならないものなのか、確認してみましょう。
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
準確定申告ってなに?
準確定申告とは何か、どのようなものなのか確認しましょう。
そもそも、所得を得たときには所得税を納める決まりになっています。
そのため、その年の1月1日から12月31日までに所得を得たときには、その合計金額を計算し、所得に対する所得税を翌年の2月16日から3月15日までに所得税を納める決まりになっています。これが、いわゆる確定申告ですよね。
とはいえ、すでに亡くなっているときには、確定申告をして所得税を納めることができません。
そこで、その年の途中で亡くなってしまったときには、相続人が1月1日から死亡した日までに得た所得を計算し税額を算出し、納税することになっています。これが準確定申告です。
ただし、申告期限は従来の確定申告とは異なっており、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をするルールとなっています。
このことから分かるように、準確定申告が必要な人は亡くなった人に所得がある場合です。申告するべき所得がない人が亡くなった場合には、準確定申告は不要です。
さらに細かくいうと、勤務先が1カ所のみで、すでに年末調整を行っているときや公的年金等による収入が400万円以下であり、公的年金等による雑所得以外の所得が20万円以下の場合などは不要です。
準確定申告の手続き方法とは?
準確定申告をする場合には、専用の用紙が特にあるわけではなく、所定の確定申告の用紙に記入して確定申告を行います。その際には、「準確定申告の付表」を添付する決まりになっています。
準確定申告の付表は、書き方も添付されていますので、確認しながら記入していくことができます。所轄の税務署から用紙をもらい提出するほか、オンライン上で行うe-Tax(※)で提出する方法があります。
相続人等が2人以上いるときには、準確定申告書については、それぞれの相続人等が連署をして提出しますが、別の相続人等の氏名を記す場合は、相続人のそれぞれが別々に提出してもOKです。
ただし、別々に提出するとき、該当の申告書を提出する相続人等は、ほかの相続人等に申告した内容を通知しなければならない決まりになっています。
また、通常の確定申告のように所得控除も受けることができます。社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除は、亡くなった本人が死亡の日までに支払った保険料等の額です。
医療費控除は、死亡の日までに亡くなった本人が支払った医療費のみです。本人が亡くなった後に相続人等が支払った医療費は、準確定申告の医療費控除の対象にはなりませんので、注意してください。
そのほかに配偶者控除、扶養控除等も受けることができます。これらの控除では月割計算等が行われないため、1年間の控除額が適用される仕組みになっています。
●確定申告書
●被相続人の源泉徴収票
●被相続人の控除証明書
●所得税および復興特別所得税の確定申告書付表
●被相続人の医療費の領収書
●委任状
※e-Taxで申告する場合と違いあり
相続でもめたらどう対処するべき?
準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に行う決まりがあります。
ただ、相続人同士でもめている場合には、4ヶ月以内に申告と納税を終えることは困難になることもあります。
このようなときには、兄弟姉妹の関係性もこじれている可能性が高くなります。
もっともやってはいけないことは、何もせずにそのままにしておくことです。何もせずにしておくと、ペナルティーが加算されたり、延滞税がかかってしまったりします。
税理士に相談してもよいのですが、申告期限までの期間が短いほど、料金が高額になる傾向にありますので、まずは亡くなった人の所轄の税務署に出向いて
(1)もめていて期限内に手続きできないかもしれない
(2)自分は一刻も早く納税したい
という旨を伝え、どのように対処すれば良いのか、アドバイスを受けてください。
税務署の担当者は、支払う意思にある人に対しては、親身に相談に乗ってくれます。困ったら、一度、相談に訪れると良いかもしれませんね。
出典
(※)国税庁 所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト