更新日: 2022.03.20 その他税金
専業主婦(夫)が保険金を受け取ると税金はどうなる?
Y子さんが独身の頃からコツコツと保険料を支払ってきた養老保険が、間もなく満期になります。独身の頃に加入したものですが、結婚後も続けて支払ってきました。とても楽しみであるものの、税金のことが心配になってきました。
専業主婦の自分が満期などで保険金を受け取ることになった場合、配偶者控除等はどのようになるのでしょうか? 確認してみましょう。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
Y子さんの一時所得に
満期や解約により保険金を受け取った場合、「保険料を負担していた者」と「保険金を受け取る者」が同じか否かで税金が異なります。
(1) 「保険料を負担していた者=保険金を受け取る者」の場合は所得税
(2) 「保険料を負担していた者≠保険金を受け取る者」の場合は贈与税
がかけられます。
Y子さんは、自分で保険料を支払った保険金を受け取るので、(1) に該当します。そして、(1) の場合はさらに保険金の受け取り方により一時所得、雑所得として課税されます。
Y子さんは、満期保険金を一括で受け取ることを考えています。この場合は一時所得とされます。一時所得は以下の計算式で計算されます。
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
計算された一時所得の1/2と他の所得を合算して課税所得を求め、税額が計算されます。
Y子さんは満期保険金の他に一時所得がありません。よって、「満期保険金-(支払った保険料-剰余金)-特別控除額(最高50万円)」が一時所得となり、その金額の1/2が課税の対象です。
扶養から外れるのは?
Y子さんは配偶者に扶養されています。Y子さんの夫は、年末調整で所得から配偶者控除38万円を差し引いています。Y子さんが満期保険金を受け取ることで、何か影響があるのでしょうか。
Y子さんが満期保険金500万円、支払保険料総額400万円の場合を考えます。
Y子さんに一時所得以外の収入がない場合、一時所得の1/2が基礎控除の48万円以下であれば、Y子さんに課税されませんし配偶者控除38万円の対象のままです。
課税所得は
(満期保険金-(支払った保険料-剰余金)-50万円)1/2≦48万円
より、
(満期保険金-(支払った保険料-剰余金)≦146万円
であれば配偶者控除の対象です。
500万円-400万円=100万円<146万円なので、配偶者控除の対象です。
これを超えても配偶者の合計所得が95万以下までは、配偶者特別控除38万円をY子さんの夫の収入から差し引くことができます。
ところで、Y子さんにパート収入が年間90万円ある場合はどうでしょうか。
一時所得=500万円-400万円-50万円=50万円 → 50万円/2=25万円
が課税対象です。
給与所得90万円-給与所得控除55万円=35万円(給与所得)、一時所得25万円を加算して合計60万円。ここから基礎控除48万円引いて12万円<95万円のため配偶者特別控除の対象です。その他の各種控除を引いて残額があれば、所得税率を掛けて所得税額を出します。
社会保険については、収入がこの年限りの一時金であれば扶養の判定に含まないとされる場合もありますが、保険者により判定基準が異なります。必ずご加入の健康組合・協会けんぽに確認してください。
年金で受け取るとどうなの?
保険によっては受け取りを年金形式にできるものもあります。
満期保険金を年金で受け取る場合は、公的年金以外の雑所得になります。雑所得は、年間で受け取った年金の額から、それに対応する保険料を差し引いた額です。
年金を受け取る際に年金の額から対応する保険料または掛け金の額を控除した額に10.21%源泉徴収されます。年金の年額から保険料を引いた額が25万円未満の場合は源泉徴収されません。
無収入のY子さんが5年間で受け取る場合を考えます。満期保険金と支払保険料の1年分の差額は20万円<25万円なので、源泉の対象になりません。配偶者控除にも影響しません。社会保険についても、収入が100万円<130万円なので問題ありません。
Y子さんにパート収入90万円がある場合、給与所得の他の雑所得が20万円のため、確定申告の必要がありません(住民税の申告は必要です)。
ところが、社会保険の場合は、収入合計が190万円>30万円となり、扶養から外れます。収入から控除できるものは各種健康組合や協会けんぽにより異なります。必ず、保険金を受け取る前に確認しておきましょう。
出典
国税庁「No.1191 配偶者控除」
国税庁「No.1755 生命保険に係る満期保険金を受け取ったとき」
国税庁「No.1490 一時所得」
国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払いを受ける個人年金」
全国健康保険協会「被扶養者資格の再確認と提出のお願い」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者