扶養内と扶養外、お得なのはどっち? 社会保険適用範囲が2022年秋から拡大
配信日: 2022.04.14
今回は、改正後の社会保険の適用範囲について解説するとともに、扶養内そして扶養外のどちらで働く方がよいのかについての、判断ポイントも併せてご紹介します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com
社会保険適用範囲拡大の概要
2020年に公布された年金制度改正法(※1)に基づき、2022年10月より、社会保険の適用範囲が拡大されることとなりました。
この範囲拡大は2024年10月にも施行されることとなっていますが、その施行に合わせ、できるだけ多くの人が社会保険へ加入できるようにするとして、2022年10月に最初の拡大が行われます。
■企業規模
短時間労働者を適用範囲に含めることとし、現在の要件である500人超の事業規模が100人超までに拡大されます。この拡大によって新たに45万人の人が適用対象となり、医療および介護保険の国費への負担が310億円削減されると予想されています。
また、企業規模の要件となる「従業員の数」については、改正前の従業員要件を引き継ぐものとし、これまでの短期間労働者は含まないこととなっています。つまり、対象となるのはフルタイムの従業員に加え、週の労働時間が通常の社員の4分の3以上の短時間労働者に限られる点は覚えておきましょう。
ただし、判定については月ごととなり、直近12ヶ月のうち6ヶ月以上の期間において基準を上回ると、対象となります。そして、一度適用となった場合は、その後基準を下回ったとしても適用対象外とはなりません。ただし、被保険者の4分の3の合意があった場合は、対象外とできるとされています。
上記の判定は、法人であれば全事業所、個人事業主の場合は個々の事務所単位になる点も注意しておきたいところです。
■勤務期間
これまでは勤務期間1年以上の短期労働者が対象でしたが、2022年10月からは2ヶ月以上の勤務期間がある短期労働者も対象です。細かくいえば、雇用契約に更新がある旨の記載がある場合や、1年以上同じ事業所で働いている実績があれば、対象となります。
ただし、契約期間が1年未満で更新の可能性がない場合は対象外です。
■法律・会計事務を取り扱う士業
これまで対象外となっていた業種のうち、弁護士や税理士、さらには社会保険料労務士などの士業については、適用業種に追加されることになります。
■健康保険
社会保険(厚生年金)だけでなく、健康保険についても被用者保険として一体化されます。
■そのほか
ただし、改正後もこれまでと変わらない部分があります。それは以下の3点です。
・賃金要件:月の賃金が8万8000円以下という要件は変わりません。
・労働時間:労働時間が週20時間以上という要件も変化なしです。
・学生:学生はこれまでどおり適用対象外です。
改正後に適用対象となる要件
では、2022年10月に社会保険適用対象となる要件とは、どのようなものなのでしょうか?
具体的には、以下のすべての要件を満たすと社会保険適用対象です。
1.事業所の従業員数が100人超
2.勤務期間が2ヶ月以上
3.月の賃金が8万8000円以上
4.週の労働時間が20時間以上
5.学生ではない
扶養内で働く場合の年収の壁
これまで社会保険の扶養範囲内で働く場合の年収の壁は、130万円(企業規模100人超500人以下の場合)でした。
しかし、改正後、勤め先の規模や自身の勤務状態が、上記に示した要件すべてに当てはまる場合は、扶養の対象から外れてしまいます。
したがって、改正後も被扶養者として働きたいならば、106万円を意識する必要があります。
ボーダーラインは年収約126万円以上
130万円よりも1万円低い年収129万円に該当する社会保険料(協会けんぽ・東京都の場合)は、年額約18万6000円(1000円以下四捨五入)です(※2)。
そして、所得税および住民税は約1万7000円となることから、129万円の収入に対して、手取り額が約109万円に下がることになります。
つまり、約20万円の社会保険料および税金負担が発生するため、106万円+20万円=126万円以上が、改正後に扶養対象外となって働く際のボーダーラインです。
まとめ
扶養範囲内で働く場合は、社会保険料の負担が発生しませんが、その分年収を抑えた働き方を考える必要があります。
ただ、年間126万円以上の収入が見込めるならば、社会保険料を負担しても減収とはならず、社会保障が充実するというメリットがあります。
また、2024年10月には企業規模が50人超までに拡大されますので、自分が働いている事業所の規模なども考えながら、今後どのように働いていくかを考えるようにしましょう。
出典
(※1)厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
(※2)全国健康保険協会 令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 7等級参照(40歳以下)
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員