更新日: 2022.04.13 控除

地震や盗難などで資産に損害が生じたときに受けられる「雑損控除」。控除額の計算と対象物

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 高橋庸夫

地震や盗難などで資産に損害が生じたときに受けられる「雑損控除」。控除額の計算と対象物
住宅や家財などの資産が地震や盗難によって損害を受けた場合、所得控除の一種である雑損控除の適用が可能です。課税所得額は雑損控除の適用によって減らせるため、税負担を抑えることが可能です。この雑損控除は、さまざまな損害の原因を対象としています。
 
しかし「どんな損害の原因が対象になるのか?」「雑損控除の金額の計算方法は?」など疑問をもっている方もいるのではないでしょうか。
 
そこで本記事では、雑損控除の金額や対象者・対象物などについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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高橋庸夫

監修:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

雑損控除とは

雑損控除とは、本人または生計を一にする配偶者やその他親族が保有する資産が、地震などの災害や盗難で損害が出た場合に受けられる所得控除のことです。これは確定申告をすることで、雑損控除として総所得金額等(各所得金額を合算した課税標準)から控除できます。この雑損控除により課税所得額が減ることで、税負担を抑えることが可能です。
 
もし、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後に3年間を限度として繰り越すことができます。なお、雑損控除は他の所得控除より先に控除することとなっています。
 

雑損控除の金額・計算方法

雑損控除の金額は、以下2つのうち多いほうの金額となります。
 
・差引損失額-総所得金額等×10%
 
・差引損失額の災害関連支出の金額-5万円
 
※「災害関連支出の金額」とは災害で滅失した住宅、家財などを取り壊し・除去する際に支出した金額や、盗難や横領で損害を受けた資産の原状回復などに使った金額のことです。
 
なお、「差引損失額」は、次の計算方法で求められます。
 
・損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などで補てんされる金額
 
※「損害金額」は、資産が損害を受ける直前の時価をもとに計算した損害額
※「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」は、災害関連支出の金額に、資産が盗難や横領で受けた損害の原状回復に支出した金額を加えたもの
※「保険金などで補てんされる金額」は、災害に関して受け取った保険金など
 
このように、雑損控除の金額は2つの計算方法で算出し、いずれか多いほうの金額を申告します。
 

雑損控除の対象者・対象物

損害を受けたからといって、資産がすべて雑損控除の対象となるわけではありません。「資産の要件」や「損害の原因」に該当する場合のみ、雑損控除として申告し、所得控除を受けられます。どのような条件を満たせば、雑損控除の対象者・対象物となるのか知っておくことは大切です。
 
そこで、ここでは雑損控除の対象者・対象物となる条件についてみていきましょう。
 

資産の要件

損害を受けた資産が雑損控除の対象となるのは、次のいずれにも該当する場合です。

(1)資産の所有者が「納税者」または「納税者と生計を一にする配偶者またはその他の親族で総所得金額等が48万円以下の方」
(2)生活に通常必要な資産であること(住宅、家具、衣類など)

損害の原因

次の損害の原因に該当する場合に雑損控除の対象となります。

・自然現象の異変による災害(震災・落雷・風水害・雪害・冷害など)
・人為による異常な災害(火災・火薬類の爆発など)
・生物による異常な災害(害虫など)
・盗難
・横領

なお、詐欺や恐喝によって資産が損害を受けた場合は、雑損控除の対象にはなりません。
 

雑損控除を受けるには確定申告が必要

地震や盗難などで資産に損害が生じて雑損控除を受ける場合は、確定申告が必要になります。確定申告をする際は、次のような書類が必要となりますので、大切に保管しておきましょう。

・災害関連支出の金額が分かるもの(領収書、請求書など)
・損害を受けた住宅・家財の資産内容や取得価格、取得時期が分かるもの
・り災証明書(災害の場合)
・保険金などで補てんされる金額が分かるもの

なお、給与所得者の場合は、年末調整では雑損控除に対応できないため、自分で確定申告することになりますので注意してください。
 

雑損控除により税負担を軽減できる

住宅や家財が、震災・雪害・火災・盗難などで損害を受けた場合は、雑損控除により税負担を軽減することが可能です。資産の要件を満たし、損害の原因が自然現象による災害などであれば、所得控除を受けられます。
 
控除しきれなかった金額については最大3年間繰り越すことができます。
 
また、所得金額の合計が1000万円以下の場合は、災害減免法による所得税の軽減免除を選択することも可能です。災害減免法による所得税の軽減免除では、年間の所得金額合計額に応じて、所得税の4分の1~全額が軽減または免除されます。
 
地震や盗難などで資産が損害を受けた場合は、雑損控除または災害減免法による所得税の軽減免除、どちらの対象になり、どちらのほうがお得なのか確認したうえで利用しましょう。
 
出典
国税庁 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
国税庁 確定申告書等作成コーナーよくある質問 雑損控除とは
国税庁 災害を受けたときの所得税の取扱い
国税庁 災害減免法による所得税の軽減免除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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