「インボイス制度」って? 確定申告にも影響する?
配信日: 2022.04.19
フリーランスや自営業者の方にとって危機ともいわれるインボイス制度ですが、実際どのような制度で、確定申告にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
インボイス制度とは
2023年10月1日から始まるインボイス制度とは、商品や材料を仕入れたり、サービスの提供を受けたりした側(仕入れ側)が、その仕入れ額から消費税について控除(仕入税額控除)を受けるには、適格請求書発行事業者が発行した適格請求書(インボイス)の保存が必要になるという制度です。
これまで消費税については、基本的に物を売ったり、サービスを提供したりしたとき、代金を請求する側が最終的な売り上げにかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて、納税することで済んでいました。
インボイス制度導入後は、仕入れ先が適格請求書発行事業者ではなく、適格請求書を発行できない場合、仕入税額控除ができず、その消費税分を損してしまうことになります。
例えば、自営業者であるAが、B社から依頼を受けて10万円+消費税1万円の合計11万円で商品を売却。B社はその仕入れた商品を加工して、50万円+消費税5万円の55万円で顧客に販売し、44万円の利益を得たとします。
今までであれば、B社は50万円の売り上げに対する消費税5万円と、Aから商品を仕入れた額の10万円に対する消費税1万円とを控除し、最終的に4万円の消費税を納税していました。
しかしインボイス制度の導入後は、Aが適格請求書を発行できない場合、B社は50万円の売り上げに対する消費税5万円をそのまま納税することになり、仕入れにかかる消費税1万円が控除できず、その分、損をするということになるのです。
適格請求書を発行するにはどうすればいい?
適格請求書を発行するには、税務署に適格請求書発行事業者として登録する必要があります。登録の申請手続きは、e-Taxやスマートフォン(要マイナンバーカード)で行えるほか、管轄する地域のインボイス登録センターに申請書などを郵送することでも可能です。
なお、適格請求書発行事業者に登録されると課税事業者になるため、これまで売り上げが1000万円未満の免税事業者であり、国に消費税を納めていなかった自営業者やフリーランスの方は、売り上げから消費税を納めることになります。
インボイス制度が確定申告に与える影響
インボイス制度が導入されることで、一定数の自営業者など方の確定申告に影響が及ぶことが想定されます。その理由は消費税の申告にあります。
制度の導入によって課税事業者になることを選択すると、消費税を納めることになります。消費税を納めるためには、所得税に加えて消費税の確定申告も行う必要がありますが、これは単純に確定申告の手間が増えるだけではありません。
消費税の確定申告は、所得税に比べて複雑なものであり、自身で行う場合は消費税の申告と納税について相応の知識が必要となるため、おそらく多くの自営業者が税理士など専門家に頼むことになるでしょう。
また、売り上げが月数件、数万円というレベルならともかく、取引数などが多い自営業者の場合、仮に消費税の確定申告の知識があってもかなりの手間を要します。
このように、インボイス制度が自営業者の確定申告に与える影響は決して小さくなく、自営業者はインボイス制度について、こうした負担が発生することも今から考えておかなければなりません。
まとめ
インボイス制度により、これまで消費税の納税が免除されていたフリーランスや自営業者の方は、利益の減少を覚悟して適格請求書を発行できる課税事業者となって国に消費税を納めるか、取引先数や売り上げが減っても免税事業者でいるか、どちらかの選択を強いられることになります。
仮にインボイス制度に適応して課税事業者となり、取引先との関係性が保たれたとしても、消費税相当分の利益の減少のほか、確定申告での負担も増加します。
インボイス制度の開始までにはまだ時間がありますが、今後の対応について今から考えていく必要があるでしょう。
出典
国税庁 インボイス制度の概要
執筆者:柘植輝
行政書士