更新日: 2022.04.25 その他税金
満期がきた保険金の受取方法。「一時金」と「年金」どっちが税金上お得?
今回は、満期保険金の受取方法によって税金上にどのような違いがあるのか解説していきます。
執筆者:上山由紀子(うえやま ゆきこ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者 鹿児島県出身 現在は宮崎県に在住 独立系ファイナンシャル・プランナーです。
企業理念は「地域密着型、宮崎の人の役にたつ活動を行い、宮崎の人を支援すること」 着物も着れるFPです。
満期保険金を受け取るときの税金の種類は?
満期保険金を受け取るときにかかる税金は、保険料を誰が払ったか、また、満期保険金を誰が受け取るのかで種類が変わります。
保険料を負担する方(契約者)が満期保険金の受取人となっている場合、税金は所得税となります。一方、保険料の負担者と満期保険金の受取人が異なる場合は、課税の対象となるのは贈与税です(※1)。
出典:国税庁 「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」
満期保険金の場合、贈与税より所得税の方が税金上では有利となります。なぜなら、贈与税の方が所得税より税率が高く設定されているからです。
例えば、贈与税(一般贈与)では基礎控除後の課税価格が1000万円の場合は40%(※2)、所得税では課税所得が1000万円の場合で33%(※3)です。そのため、保険料の負担者と満期保険金の受取人は同一にしておくといいでしょう。
また、一時払養老保険などで保険期間が5年以下のものや、保険期間が5年を超えるもので5年以内に解約して差益が出た場合は、一律20.315%の税率で税金が差し引かれ、税金関係(源泉分離課税)は終了となります(※4)。
満期保険金の受取方法は?
前述したように、保険料の負担者と保険金の受取人が同じであれば、満期保険金には所得税が課税されます。
所得税の対象となるケースでは満期保険金の受取方法として、一時金で受け取った場合は一時所得、年金で受け取った場合は雑所得となります。
一時所得も雑所得も総合課税の1つで、通常は他の所得と合算して税額を計算します。
満期保険金を一時金として受け取った場合は?
満期保険金を一時金として受け取ると一時所得となり、満期保険金以外に他の所得がない場合の計算方法は以下のとおりです(※5)。
(1)一時所得の金額
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
(注)特別控除額は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引いた残額により変わります。
(2)課税の対象となる金額
一時所得の金額×1/2
例えば、養老保険の満期保険金額を500万円、総支払保険料を400万円、特別控除額は上限の50万円で計算してみます。
(1)一時所得の金額=500万円-400万円-50万円=50万円
(2)課税対象となる金額=50万円×1/2=25万円(1000円未満切り捨て)
課税される所得金額が195万円未満の場合、所得税の税率は5%です。
(1)基準所得税額=25万円×5%=1万2500円
(2)復興特別所得税額=1万2500円×2.1%=262円
(3)納める所得税額=(1)+(2)=1万2700円(100円未満切り捨て)
一時金として受け取った場合は大金となるので、税制的には有利です。
満期保険金を年金として受け取った場合は?
満期保険金を年金で受け取ると、公的年金等以外の雑所得になります(※6)。
(1)雑所得の金額
その年に受け取った年金合計金額-必要経費(その年の年金額に対応する払込保険料)
(2)所得税の金額
雑所得の金額×10.21%
年金が支払われるときには所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。雑所得の金額が25万円未満の場合は源泉徴収されません。
例えば、養老保険の満期保険金額を500万円、総支払保険料を400万円として、満期保険金を10年間、年金(年額50万円)で受け取った場合で計算してみます(実際は保険契約などで計算方法は変わってくると思いますが、今回は年金額および必要経費は毎年同額で計算します)。
必要経費=50万円(年金額/年)×400万円(総支払保険料)÷(50万円×10年)=40万円
(1)雑所得の金額=50万円-40万円=10万円
(2)所得税の金額=10万円×10.21%=1万200円(100円未満切り捨て)
満期保険金を年金で受け取った場合は、毎年税金を支払うことになります。他の所得と合算して支払うことになると、税額や社会保険料などが増えることもあり得ます。
しかし、一時金に比べると受取保険金総額は多く、定期的に入ってくるので家計のやりくりはしやすくなるでしょう。
まとめ
今回は、満期保険金が所得税の対象となるケースで、一時金と年金で受け取った場合での税金の違いを確認してみました。単純に正解とはなりませんが、今回の例の場合、一時金と年金での受け取りでは、一時金の方がお得なことが分かります。
しかし実際は総合課税ですので、例えば、給与所得や事業所得など他の所得があれば合算して計算する必要があるほか、住民税の課税対象にもなるため、それらによって納める税額も変わってきます。
保険会社でそれぞれの受け取りのシミュレーションをしてもらい、そのときの状況に合わせ臨機応変に対応してください。
また、中には満期保険金を受け取らずに据え置くことで、保険会社が運用してくれる保険もあるので、加入している保険の内容をしっかりと確認しましょう。
出典
(※1)国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき
(※2)国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
(※3)国税庁 No.2260 所得税の税率
(※4)国税庁 No.1520 金融類似商品と税金
(※5)国税庁 No.1490 一時所得
(※6)国税庁 No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
執筆者:上山由紀子
1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP®認定者