更新日: 2022.04.28 その他税金

被災したときに税金はどうする? 災害遭遇時の税金の扱いや補助金について

執筆者 : 荒木和音

被災したときに税金はどうする? 災害遭遇時の税金の扱いや補助金について
地震や火災、洪水などに被災して、生活が苦しくなってしまうケースは多いでしょう。税金面での優遇措置はあるのでしょうか?
 
この記事では、被災してしまった場合の税金の取り扱いや、被災時に活用できる補助金や融資制度について解説します。
荒木和音

執筆者:荒木和音(あらき かずね)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

被災時には所得税の軽減を受けられる

被災時には「所得税法」に基づく雑損控除、または「災害減免法」に基づく所得税の軽減免除、いずれかの方法によって所得税の全部、または一部について軽減措置が受けられます。どちらか1つ、より税負担が軽減される有利な方法を選ぶことが可能です。
 

所得税法に基づく雑損控除

所得税は、各種控除後の課税される所得金額に対して、一定の税率を掛けることで求められます。
 
雑損控除は次の1と2のうち、いずれか多い方の金額が所得から控除されるため、所得税の負担が減る仕組みです。

1.損失額-所得金額の10分の1
2.損失額のうちの災害関連支出の金額(災害により滅失した住宅や家財などの取り壊し、除去、原状回復費用など災害に関連して支出したやむを得ない費用)-5万円

雑損控除が適用される要件は図表1の通りです。
 
図表1

損失の発生原因 災害、盗難、横領による損失
対象となる資産の範囲 住宅や家財を含む、生活に通常必要な資産

 

災害減免法に基づく所得税の軽減免除

所得税の軽減免除が適用される要件は図表2の通りです。
 
図表2

損失の発生原因 災害による損失
対象となる資産の範囲 住宅または家財の損失額が、その価額の2分の1以上である場合

 
軽減免除を受ける場合の軽減額は図表3の通りです。
 
図表3

その年分の所得金額 所得税および復興特別所得税の軽減額
500万円以下 全額免除
500万円超 750万円以下 2分の1の軽減
750万円超 1,000万円以下 4分の1の軽減

出典:国税庁 災害等にあったとき
 

被災したときに使える補助金や融資制度とは?

被災時の経済的な負担を和らげる方法として、税金の軽減措置以外に国による補助金や融資の制度があります。主な補助金や融資制度について解説します。
 

生活再建支援金

被災者生活再建支援法に基づいて給付されるのが「生活再建支援金」です。
 
住宅の被害程度に応じて支給される基礎支援金と、住宅の再建方法によって支給される加算支援金があります。世帯の人数によっても異なりますが、支給される金額は最大で300万円です。
 

災害弔慰金

災害で家族が亡くなった場合には「災害弔慰金」が支給されます。
 
受け取れる金額は、生計維持者が死亡した場合は500万円、それ以外の方が死亡した場合は250万円です。
 

災害障害見舞金

災害により重度の障害を負った場合には、「災害障害見舞金」が支給されます。
 
受け取れる金額は、生計維持者が重度障害となった場合は250万円、それ以外の方が重度障害となった場合は125万円です。
 

災害援護資金

「災害援護資金」は災害によって負傷した方や、住居・家財に被害を受けた方がお金を借りられる制度です。
 
災害による被害の程度に応じて、貸し付けを受けられる上限金額は変わります。最大で350万円の融資を受けることが可能です。
 

万が一被災した場合には各種制度や民間保険を活用しましょう

税金の軽減措置や補助金制度以外にも、被災した場合には国民年金や国民健康保険、医療費の自己負担額や公共料金などについて、減額や免除といった特別措置が受けられるケースもあります。
 
しかし、被災して住居が全壊した場合には、公助や共助で受け取れる金額を考慮しても、住宅再建に必要な費用が不足する可能性があります。
 
内閣府によると、実際に東日本大震災のケースでは、約2100万円不足したというデータもあるため、各個人においても万が一に対する備えをしておく必要があるでしょう。
 
公的制度をうまく活用しつつ、民間の火災保険や地震保険、生命保険なども準備しておくことが大切です。
 
なお、多くの場合、制度利用の申請には災害ごとに期限が設けられているため注意しましょう。
 

出典

国税庁 災害等にあったとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2260 所得税の税率
福島県 被災者生活再建支援制度について
内閣府 災害弔慰金の支給等に関する法律 災害弔慰金、災害障害見舞金の概要
内閣府 災害弔慰金の支給等に関する法律 災害援護資金の概要
内閣府 住宅・生活再建にはこんなにお金がかかる
日本年金機構 被災された被保険者の皆さまへ、国民年金保険料の免除についてのお知らせ
相模原市 東日本大震災で被災された人の国民健康保険の免除について
経済産業省 令和3年7月1日からの大雨による災害に関して電気料金の災害特別措置の認可を行いました
 
執筆者:荒木和音
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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