更新日: 2022.05.02 その他税金

自宅や実家が「空き家」に… 問題点と対応策は?

自宅や実家が「空き家」に… 問題点と対応策は?
両親や家族が介護施設などに入居していて、自宅が誰も住んでいない状態になっているということはありませんか?
 
長年、自宅を空き家にしていると、売却をしても、不動産売却時の利益に対して課税される所得税の減税が受けられないなど、不利益を被る場合があります。
 
「自分は売却するつもりがない」という方にも影響があります。
 
土地にかかる固定資産税は、住宅が建っているだけで減税を受けられますが、空き家を放置していると、この減税が受けられなくなる恐れがあります。
 
ここでは空き家の扱いについて、注意すべき点を解説します。
八木友之

執筆者:八木友之(やぎ ともゆき)

宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

「空き家」とは

「空き家」について、行政が指定する「特定空家」を除いては、明確な定義はありません。
 
「特定空家」とは、国交省の定義では「倒壊などの恐れがある状態や、適切な管理が行われずに著しく景観を損なっているなど、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」としています。
 
つまり、一見して空き家だと分かるような、荒れている家屋のことを指していると考えてよいでしょう。このほかにも、人が住んでいない家や使用していない倉庫なども「空き家」と呼ばれます。
 
では、「特定空家」以外であっても、どのような場合に、空き家だと判断されるのでしょうか?
 
例えば、保険会社や税務署などは、家屋に生活の実態がないことを空き家だと捉えます。ライフラインが止まっていないかや、近隣の人に聞き取り調査をすることが多いです。
 
本稿における空き家は、住宅統計調査などで定められている空き家期間算定の基準にのっとり、おおよそ3ヶ月以上にわたりライフラインが止まって人が住んでいない家のことを指します。
 

空き家にした自宅の売却は所得税に注意

自宅の売却で利益が出た場合は、所得税が課税されます。
 
しかし、自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売却した場合には、3000万円の特別控除の特例が利用でき、所得税を減らせます。
 
なお、以前に住んでいた家屋や敷地などの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売らなければいけません。それを過ぎると、所得税の3000万円の特別控除が利用できなくなります。
 

空き家を放置すると、固定資産税の減税がなくなる?

空き家について、行政が「周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である」と判断した場合は、先述の「特定空家」に指定され、空き家の所有者へ空き家の状態を改善する助言・指導を行い、それでも改善しない場合、勧告がなされます。
 
こうした行政の指導などにも従わない場合、空き家対策特別措置法により、固定資産税の減税を受けられなくなっています。
 
住宅が建っている土地の固定資産税は通常、住宅の敷地に使われている土地の200平方メートルまでの部分の課税標準額が評価額の6分の1に、都市計画税は評価額の3分の1に軽減されます。
 
しかし、行政からの勧告を無視することによって、減税措置の対象外となりますので、固定資産税が最大で、本来支払うべきだった額の約6倍になることも考えられます。
 
空き家を管理せずに放置すると、固定資産税の軽減の特例の対象にならない可能性があるので、注意しましょう。
 

空き家を放置するとほかにもリスクが…どうすれば?

空き家を放置していると、減税措置の対象外となるほかにも、さまざまなリスクがあります。
 
侵入盗や放火などの犯罪、空き家およびブロックなどの構造物の倒壊、またそれによるけが人が発生するなどの恐れがあります。
 
さらに、人が住まなくなった家屋の火災保険の保険料は、一般的には値上がりします。人が住まなくなったことを保険会社に報告しないと、保険契約義務違反にも問われます。
 
自宅を空き家にして放置することは、税金以外でもデメリットが多くなります。きちんと誰かに管理してもらうか、賃貸物件として貸し出すなどの対策を取るとよいでしょう。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.3302 マイホームを売ったときの特例
国土交通省 空家等対策特別措置法について
三井住友トラスト不動産 不動産用語集 小規模宅地の特例
ソニー損保 火災保険のよくある質問より「住居として使用していないとはどのような場合ですか」
NPO法人空家・空地管理センター 空き家になると今までの火災保険は使えない?
 
執筆者:八木友之
宅地建物取引士、行政書士、不動産コンサルティングマスター

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