更新日: 2022.05.07 確定申告

年末調整をした会社員が、確定申告をしてさらにお金が戻るケースとは?

年末調整をした会社員が、確定申告をしてさらにお金が戻るケースとは?
通常、会社員の場合は年末調整を行うことで最終的な所得税額が調整されるため、確定申告の必要はありません。
 
しかし、年末調整を行った人でも、確定申告を行うことで、さらにお金が戻るケースもあります。それはいったいどのようなケースなのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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年末調整とは

まず、年末調整の仕組みについて理解しておきましょう。
 
通常、会社員の場合、給与から社会保険料や所得税、住民税が差し引かれて、指定の口座に振り込まれるのが一般的です。
 
社会保険料や住民税については確定した金額が差し引かれますが、所得税については概算額を差し引いているため、年の最後(12月)の給料支払時に正確な所得税額を把握し、概算額によって差し引いていた過不足分を精算するのが年末調整の仕組みです。
 
人によっては年末調整によってお金が戻ってくる場合もありますし、追加で徴収される場合もあります。
 

確定申告でお金が戻るケース

年末調整後、確定申告を行うことでお金が戻るケースには、以下のものがあります。
 

■医療費控除の利用

医療費控除とは、年間の医療費が10万円以上(年収200万円以下の人は年収の5%以上)掛かった場合に控除を受けることができる制度です。そして、これは年末調整で行うことはできず、必ず確定申告によって行う必要があります。
 
医療費の額については申告する人だけではなく、家族が支払った医療費も合算できます。
 
医療費控除は所得控除に該当するため、共働き世帯であれば、収入が多い方が確定申告することで、より多くの金額が還付されるケースが多いといえます。
 

■ふるさと納税を行った場合

ふるさと納税を行い、「ワンストップ特例」を利用していない場合は、確定申告にて寄付金控除を申請することで、ふるさと納税を行った額(自己負担分の2000円を除く)の一部を所得税から還付してもらえます。
 
「ワンストップ特例」を利用するためには条件があり、「確定申告が必要ではない」こともその条件に入っています。
 
したがって、「ワンストップ特例」を利用していても、ほかに医療費控除などで確定申告を行う場合は、ふるさと納税分についても確定申告で行わなければなりません。
 
ワンストップ特例は確定申告を行った時点で無効となりますので、それを知らずにワンストップ特例を利用しているからと確定申告を行わなかった場合、ふるさと納税(寄付金控除)による所得税および住民税からの還付を受けることはできない点に注意しておきましょう。
 

■マイホームを売却して損失が出ている場合

家を売却した譲渡所得にマイナスが出た場合、確定申告を行うことでほかの所得と損益通算をすることができます。
 
この損益通算は、譲渡の年の翌年以後3年以内に繰り返して利用できますので、ぜひ利用しておきたい制度です。
 
ただし、利用には一定の要件を満たす必要があり、その主な要件とは以下のとおりです。

●マイホームの売却であること
●住まなくなってから3年後の年の12月31日までに売却したものであること
●マイホームに住んでいた期間が5年超であること

 

■住宅ローン控除適用1年目の場合

住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、その後一定期間において住宅ローン控除の適用を受けることができます。しかし、この適用を受けるためには1年目は必ず確定申告を行う必要があります。
 
用意する書類などが多いため、早めに準備をしておき、確定申告を行うようにしましょう。
 
なお、住宅ローン控除は税額控除なので、戻ってくる金額も所得控除と比べると多くなる傾向にあります。忘れないように申告するようにしましょう。
 

■雑損控除の適用

災害にあった、もしくは盗難にあったなどで自身の財産に被害があった場合、確定申告を行うことで所得控除を受けることができます。
 
災害や盗難、横領などで被った被害額について、所定の計算式に基づいて算出した額を申告することで、所得税率に応じた額が還付されます。
 
ただし、詐欺や恐喝によって被った被害については、雑損控除は適用されない点に注意が必要です。
 
また、災害によって被害を被った場合については、「災害減免法による所得税の軽減免除」が用意されており、雑損控除とどちらかを選ぶことができます。
 
「災害減免法による所得税の軽減免除」を受けるには、被害を受けた年の所得が1000万円以下という要件があります。
 
しかし、どちらを利用した方が還付される金額が多いか必ず試算し、有利な方を選択するようにしてください。
 

■投資で損失が出た場合

上場株式などを、証券会社などを通して売買し、最終的に損失が発生した場合、その損失額をその年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額、および配当所得の金額と損益通算することができます。
 
これは「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」といい、損益通算しても控除しきれない額については、翌年以降3年間、確定申告することで繰越控除を行うことができます。
 
複数の口座で投資商品を購入し、運用しているならばぜひ活用しましょう。
 
ただ、翌年以降繰越控除を受けるためには、毎年確定申告を行わなければならない点には注意が必要です。
 

まとめ

年末調整を行った後に確定申告を行うことでお金が戻るケースは、上記に挙げたケース以外にも、年末調整で申告漏れがあったものも含まれます。
 
特に家族構成が変わった際の申告が漏れていた場合は、確定申告を行うことでお金が戻ってくる可能性がありますので、そのようなケースに当てはまる場合は確定申告を忘れずに行うようにしましょう。
 
なお、確定申告期間は2月中旬から3月中旬ですが、還付(お金が戻る)の場合は、納税した翌年の1月から受け付けています。
 
早く申告することでお金が戻ってくる時期も早くなるため、確定申告を行うことがあらかじめわかっている場合は早めに準備し、申告するようにしましょう。
 

出典

(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2662 年末調整のしかた
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
(※3)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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