復興特別所得税の税収額はどのくらい? どんなふうに活用されているの?
配信日: 2022.05.14
給与所得や事業所得、不動産所得に課せられる所得税。実は、東日本大震災が発生して、この復興を支援するためにこの所得税に復興特別所得税がプラスして課せられています。
2022年3月11日に東日本大震災から11年が経過し、復興に思いをはせられた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。平成23年の東日本大震災の同年末に、震災からの復興のための財源確保を目的に復興特別所得税の導入が決まり、その2年後の平成25年から令和19年までの25年間が課税期間となっています。
復興特別所得税は「所得税額の2.1%」で、税率が10%の場合は10%×2.1%=0.21%となるため、合わせて10.21%となります。東日本大震災の復興のための施策に必要な財源を確保するために実施された特別税で、平成23年12月に公布されました。
復興特別所得税が交付されるとともに、復興特別法人税も公布されています。徴収時期は平成27年3月30日までの予定でしたが、平成26年4月の消費税率引き上げの影響を考慮して1年早く廃止されました。しかし、復興特別所得税は予定どおり、平成25年から令和19年までの25年間が課税期間となっています。
この復興特別所得税はどれくらいの金額なのか、令和4年度の収入概算(※)をみると、所得税合計20兆3820億円から復興特別所得税を計算すると、4192億円となります。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
復興特別会計
税収は先に述べたとおりですが、この「復興特別所得税」はどのように活用されているのでしょうか?
国の支出に関する会計は予算を組み、それに従って予算の執行が行われます。毎回の会計年度において国の施策の網羅・通観が行えるように、単一の会計(一般会計)で一体として経理することが、財政における健全性を確保するという見地には望ましいとされています。
しかし、国の行政活動が広範になり複雑化してくると、ケースによって、単一の会計で国における各個の事業状況、そして資金の運営実績等が不明確となり、その事業や資金の運営に関わる適切な経理が難しくなる可能性が出てきます。
このような場合、一般会計とは別の会計を行い(これを特別会計といいます)、特定の歳入・歳出を一般会計と分けて経理を行うことによって、特定の事業、そして資金運用の状況を明確にすることが望ましいと考えられます。
そこで、一般会計とは別の特別会計として「東日本大震災復興特別会計」が設定されています。
「東日本大震災復興特別会計」予算
予算および実施については復興庁が主体となって行っているため、復興庁のホームページで確認ができます。
先に計算した4192億円の税収に対して、復興庁のホームページでの支出予算は5790億円となっており、主な支出内容は以下のとおりです。原子力災害からの復興・再生が予算の大部分を占める予算となっています。
(1)原子力災害からの復興・再生: 4452 億円
原子力災害からの福島の復興・再生のため、避難指示が解除された区域での生活再開に必要な帰還環境の整備や移住等の促進、帰還困難区域の特定復興再生拠点の整備等。中間貯蔵施設の整備および管理運営等・放射性汚染廃棄物の処理・除去土壌等搬出完了後の仮置場の原状回復等の推進など
(2)住宅再建・復興まちづくり:508 億円
災害公営住宅に関する支援継続のほか、災害復旧事業等について支援
(3)産業・生業(なりわい)の再生:347 億円
福島県農林水産業の再生、原子力災害で被災した12市町村への事業再開支援、避難指示解除区域における工場等の新増設支援等の取組。ALPS処理水を処分するにあたりそれに伴う対策として、福島県をはじめとした被災県に対しての水産に関わる加工・流通・消費対策や福島県における漁業者に対する人材育成の支援などの生産体制の強化の実施
(4)被災者支援:278 億円
避難生活の長期化や恒久住宅への移転に伴う被災者の心や身体の健康維持、住宅や生活の再建に向けた相談支援、コミュニティの形成、生きがいづくり等の「心の復興」など、生活再建のステージに応じた支援
(5)創造的復興:157 億円
国際教育研究拠点の構築、福島イノベーション・コースト構想の推進、移住等の促進、高付加価値産地の形成等に係る取組を実施
このように私たちが所得税にプラスして納付している「復興特別所得税」が復興のために活用されているのです。
出典
(※)財務省 税収に関する資料
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者