更新日: 2022.06.29 控除

社会保険の被保険者適用範囲が拡大。あなたは加入する? 加入のメリット・デメリットは?

執筆者 : 北山茂治

社会保険の被保険者適用範囲が拡大。あなたは加入する? 加入のメリット・デメリットは?
給与明細をよく見たことはありますか? 給料から控除されているものがありますね。多くの人の場合、税金と社会保険料です。そのうち社会保険料には、大きく分けて厚生年金保険料と健康保険料があります。
 
さらに40歳を超えると、介護保険料が加わります(広義の社会保険には雇用保険もありますが今回は触れません)。パートタイマーやアルバイトとして働いている人には、この社会保険料が控除されている人と控除されていない人がいます。
 
中には、手取りが減るので社会保険料は控除されない方がよい、と思っている人もいらっしゃるかもしれません。しかし、2022年10月から、社会保険料が控除される範囲が拡大されます。その内容をじっくりみてみましょう。
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

適用範囲の拡大

社会保険料が控除されるパートタイマー・アルバイトは、週労働時間がフルタイムの従業員の4分の3以上の従業員です。一般の会社は週の所定労働時間は40時間ですから、30時間以上働いているパートタイマー・アルバイトの人が対象です。
 
それが、平成28年(2016年)10月1日から、従業員数が501人以上の会社は、下記4点に該当する場合に社会保険料が引かれることとなり、社会保険料が控除される労働者が拡大しました。


・所定労働時間が週20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・勤務期間1年以上の見込み
・学生でないこと

この「従業員数が501人以上の会社」という部分が、令和4年(2022年)10月1日から「従業員数101人以上」と変わります。さらに、「勤務期間1年以上の見込み」の部分も「勤務期間2ヶ月以上の見込み」と変わります。
 
この改正により、新たに多くの人が社会保険料の控除対象になる可能性があります。また、令和6年(2024年)10月1日から「従業員数51人以上」と変わります。この改正により、社会保険料の控除対象者がまた増える可能性があります。
 

適用された場合のデメリット

最も大きなデメリットは、今まで控除されていなかった社会保険料が控除されることによる、手取り給与のダウンです。年間130万円くらいもらっている人ですと、年間20万円弱が社会保険料として引かれます。あてにしていた金額がもらえなくなることで、生活は大変になるかもしれません。
 
2つ目のデメリットは、これまで健康保険の被扶養者だった方は保険料を払わずに健康保険を受けていましたが、それができなくなることです。
 
3つ目のデメリットは、これまで公的年金の第3号被保険者だった方は、国民年金保険料を払うことなく老齢基礎年金の額が増えていましたが、それもなくなってしまいます。
 

適用された場合のメリット

もちろん、メリットもあります。それは、厚生年金保険に加入することになるので、将来の年金受給額が増えることです。加えて、病気やけがで障害状態になった場合、障害厚生年金が給付されますし、万が一、亡くなった場合は、遺族に遺族厚生年金が支給されます。
 
健康保険では、被扶養者のときにはなかった「傷病手当金」や「出産手当金」が受け取れます。さらに、社会保険料は会社との折半になるので、現在、国民年金や国民健康保険に加入している人の場合は、保険料が安くなることにもなります。
 

適用を受けたくない場合は?

社会保険料を控除されたくない人の場合、次のような対策が考えられます。副業・兼業ができるのであれば、複数の勤務先から分散して賃金をもらい、加入条件に該当しないようにします。
 
ただし、どの会社でも106万円(8.8万円の12ヶ月分)以上の年収にならないように調整することが必要です。1カ所の会社で働きたい場合は、前述の適用条件を1つでも満たさなければ、社会保険の加入対象から外れます。


・従業員数が500名以下の会社で働く(2022年10月1日以降は100人以下の会社で働く、2024年10月1日以降は50人以下の会社で働く)
・月8.8万円未満の賃金で働く
・週の労働時間を20時間未満にする
・1年未満で違う会社に移る(2022年10月1日以降は1つの会社で2ヶ月未満)

(※短期のアルバイト等が考えられますが、2ヶ月未満の場合はこの方法は難しいかもしれません)

収入を調整するのではなく、社会保険にはしっかり加入して労働時間を増やし、「106万円の壁」や「130万円の壁」を20万円以上超えて収入を増やすという方法もあります。
 
大切なことは、社会保険に加入するメリット・デメリットをよく知ったうえで、自分自身の働き方を考えてみることです。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント

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